【ひな形あり】「ハラスメント防止のための指針」の作成例について解説

ひな形
更新情報(令和6年1月18日)
  1. 令和3年度介護報酬改定の取組確認表※居宅介護支援事業所用」を作成しました。
    ※無料ダウンロード可能。

こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。

ケアマネさん
ケアマネさん

「ハラスメント防止のための指針」をどのように作成すれば良いのか、わかりません。

令和 3 年度介護報酬改定では、介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の 1 つとして、全ての介護事業者にハラスメント防止のための必要な措置の実施が義務づけられました。

そのため、多くの介護事業者ではハラスメント防止のための指針を既に整備していることと思いますが、その内容に関して不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、運営基準の解釈通知及び介護現場におけるハラスメント対策マニュアル等の内容を踏まえた、実効性のあるハラスメント防止のための指針の作成例について解説します。

ヒトケア
ヒトケア

記事の最後では、ひな形(※Wordでの編集可能)のダウンロードもできます。

ハラスメント防止のための指針(サンプル)ダウンロード

ハラスメント防止のための指針の作成でお悩みの方は今回の記事をご覧ください。

令和6年3月31日で経過措置が終了した「BCP(業務継続計画)」「高齢者虐待防止の推進」「感染症対策の強化」については、以下の記事で解説しています。

令和3年度介護報酬改定の取組確認表※居宅介護支援事業所用 ダウンロード

ケアマネさん
ケアマネさん

ハラスメントについて詳しく知りたいです。

ここではハラスメントの種類について、

  1. 職場におけるハラスメント
    • パワーハラスメント
    • セクシュアルハラスメント
  2. 介護現場におけるハラスメント

に整理して解説します。

厚生労働省による「明るい職場応援団」では、パワーハラスメントセクシュアルハラスメントについて、以下のように定義されています。

パワーハラスメントの定義

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
引用:明るい職場応援団

セクシュアルハラスメントの定義

「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。
引用:明るい職場応援団

介護現場におけるハラスメントについて「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」では、

  1. 身体的暴力:身体的な力を使って危害を及ぼす行為
    例:コップを投げつける/蹴られる/唾を吐く
  2. 精神的暴力:個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為
    例:大声を発する/怒鳴る/特定の職員にいやがらせをする/「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する
  3. セクシュアルハラスメント:意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為
    例:必要もなく手や腕を触る/抱きしめる/入浴介助中、あからさまに性的な話をする

の3つを、介護現場におけるハラスメントとしています。

また、カスタマーハラスメントの対策についても、解釈通知において講じることが望ましい措置とされています。

カスタマーハラスメントの定義

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの。
「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例
・企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
・要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合
「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例
〇要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃 (脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的 (繰り返し)、執拗な(しつこい)言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃・要求
〇要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの
・商品交換の要求
・金銭補償の要求
・謝罪の要求(土下座を除く)
引用:カスタマーハラスメント対策マニュアル

職場・介護現場におけるハラスメント防止のための対策について、居宅介護支援における

には、以下のように記載されています。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(運営基準

(勤務体制の確保)
第十九条 指定居宅介護支援事業者は、利用者に対し適切な指定居宅介護支援を提供できるよう、指定居宅介護支援事業所ごとに介護支援専門員その他の従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。
1~3(略)
 指定居宅介護支援事業者は、適切な指定居宅介護支援の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより介護支援専門員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。
引用:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知

(13)勤務体制の確保
基準第19条は、利用者に対する適切な指定居宅介護支援の提供を確保するため、職員の勤務体制等を規定したものであるが、次の点に留意する必要がある。
①~③ (略)
④ 同条第4項は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第11条第1項及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第30条の2第1項の規定に基づき、事業主には、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント(以下「職場におけるハラスメント」という。)の防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられていることを踏まえ、規定したものである。
 事業主が講ずべき措置の具体的内容及び事業主が講じることが望ましい取組については、次のとおりとする。なお、セクシュアルハラスメントについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれることに留意すること。

イ 事業主が講ずべき措置の具体的内容
 事業主が講ずべき措置の具体的な内容は、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)及び事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワーハラスメント指針」という。)において規定されているとおりであるが、特に留意されたい内容は以下のとおりである。
a 事業者の方針等の明確化及びその周知・啓発
 職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者に周知・啓発すること。
b 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること等により、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。

 なお、パワーハラスメント防止のための事業主の方針の明確化等の措置義務については、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号)附則第3条の規定により読み替えられた労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項の規定により、中小企業(資本金が3億円以下又は常時使用する従業員の数が300人以下の企業)は、令和4年4月1日から義務化となり、それまでの間は努力義務とされているが、適切な勤務体制の確保等の観点から、必要な措置を講じるよう努められたい。

ロ 事業主が講じることが望ましい取組について
 パワーハラスメント指針においては、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組の例として、①相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、②被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して1人で対応させない等)及び③被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)が規定されている。介護現場では特に、利用者又はその家族等からのカスタマーハラスメントの防止が求められていることから、イの必要な措置を講じるにあたっては、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」、「(管理職・職員向け)研修のための手引き」等を参考にした取組を行うことが望ましい。この際、上記マニュアルや手引きについては、以下の厚生労働省ホームページに掲載しているので参考にされたい。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html
 加えて、都道府県において、地域医療介護総合確保基金を活用した介護職員に対する悩み相談窓口設置事業や介護事業所におけるハラスメント対策推進事業を実施している場合、事業者が行う各種研修の費用等について助成等を行っていることから、事業主はこれからの活用も含め、介護事業所におけるハラスメント対策を推進することが望ましい。
引用:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について

ハラスメント防止のための対策に関する解釈通知のポイントは、以下のとおりです。

ハラスメント防止のための対策に関する解釈通知のポイント
  1. 事業主の義務
    • 事業主は職場のセクシュアルハラスメントおよびパワーハラスメントを防ぐための措置を講じる義務がある
  2. 事業主が講ずべき措置
    • 方針の明確化及び周知・啓発
      • ハラスメントの内容と職場でハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、従業者に周知・啓発すること
    • 相談体制の整備
      • 相談に対応する担当者をあらかじめ定め、相談窓口を労働者に周知すること
  3. 事業主が講じることが望ましい措置
    • 利用者・家族等からのカスタマーハラスメント防止
      • 事業主は、カスタマーハラスメントの防止のための取り組みを行うことが望ましい
    • 取り組みの具体例
      • ①相談体制の整備
      • ②被害者への配慮(メンタルヘルス不調への対応、行為者に対して1人で対応させないなど)
      • ③防止のための取組(マニュアル作成、研修実施など)

ここからは、「ハラスメント防止のための指針」の作成例について解説します。

解釈通知及び介護現場におけるハラスメント対策マニュアルの内容を踏まえ、以下の項目を盛り込みました。

ハラスメント防止に関する基本的考え方の項目と作成例は、以下のとおりです。

事業所における虐待の防止に関する基本的考え方の項目
目的の作成例

[事業所名]は、職場及び介護現場におけるハラスメントを防止し、全職員に安全で尊厳ある労働環境を提供することを目的とする。ハラスメントの原因となり得る要因を十分に理解し、効果的な予防措置を講じ、発生時には迅速かつ公正な対応を行う。また、被害者支援と加害者への適切な対処を実施する。これにより、職員が安心して働ける環境を確立し、質の高い介護サービスの提供に寄与することを目指す。

ハラスメントの種類の作成例
  • ①職場におけるハラスメント
    • (ア)パワーハラスメント
      職場で行われる、以下の要素全てを満たす行為をいう。
      • 優越的な関係を背景とした言動
      • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
      • 職員の就業環境が害されるもの
        例:相手に物を投げつける。人格を否定するような言動を行う。気に入らない職員に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
    • (イ)セクシュアルハラスメント
      職場で行われる職員の意に反する性的な言動により、職員が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること。
      例:性的な冗談やからかい。食事への執拗な誘い。必要なく身体へ接触すること。
  • 介護現場におけるハラスメント
    • (ア)身体的暴力
      身体的な力を使って危害を及ぼす行為。
      例:コップを投げつける/蹴られる/唾を吐く
    • (イ) 精神的暴力
      個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為
      例:大声を発する/怒鳴る/特定の職員にいやがらせをする/「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する
    • (ウ)セクシュアルハラスメント
      意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為
      例:必要もなく手や腕を触る/抱きしめる/入浴介助中、あからさまに性的な話をする
    • (エ)カスタマーハラスメント
      利用者・家族等が職員・事業所に対して理不尽なクレームや言動をすること。
      例:威圧的な言動/介護サービスの範囲を超える過剰な要求

ハラスメント防止に関する職員研修についての項目と作成例は、以下のとおりです。

作成例

本指針に基づいたハラスメント防止のための研修プログラムを組織的に作成し、職員教育の徹底を図る。この研修は、ハラスメントの各種形態、その兆候の認識、適切な対応方法に関する内容を含む。

作成例

年に1回、全職員を対象にハラスメント防止研修を実施する。定期的な研修は、職員の知識とスキルを更新し、ハラスメント防止に関する意識を高めるために重要である。

作成例

新規採用される職員には、入職時にハラスメント防止研修を実施する。これにより、新たな職員も事業所のハラスメント防止方針を理解し、実践する能力を身に付ける。

ハラスメントが発生した場合の対応についての項目と作成例は、以下のとおりです。

作成例

ハラスメントが発生した際には、まず職員の安全を確保することが重要である。管理者は、状況を迅速に把握し、職員を安全な状態に保つための措置を取る。これには、安全な場所への移動や緊急時の対応が含まれる。

作成例

職員の安全が確保された後、管理者はハラスメントの具体的な状況を確認し、被害者と加害者双方への適切な対応を指示する。状況に応じて、外部の関係者との連絡や通報も行う。

作成例

ハラスメントが発生した場合、迅速な対応が求められる。関係する利用者やその家族への情報提供と説明も行い、事態の早期解決に努める。

作成例

ハラスメントの原因を正確に把握し、その根本原因を分析して明らかにすることが重要である。介護現場の特性を考慮し、事実関係の確認と詳細な分析を行う。

作成例

ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が、一人で抱え込まないようハラスメントに関する相談窓口を設置する。相談窓口の存在は全ての職員に周知していく。

作成例

相談者が内容を正確に伝えるため、相談シートを用意する。このシートは、職員が事前に記入できるようにし、いつでも手に取りやすい場所に置くことで、相談しやすい環境を整える。相談シートは相談を受け付ける際の補助的なツールであり、記入や提出がなくても相談は受け付けられる。

厚生労働省にて作成された介護現場におけるハラスメント対策のための「相談シート」のダウンロードは、以下からどうぞ。

相談シート ダウンロード

作成例

相談窓口では、管理者が担当者として配置される。管理者は、ハラスメントに関する継続的な研修を受け、相談者に対して適切な支援とアドバイスを提供できるよう努める。

職員・利用者等に対する当該指針の閲覧についての作成例は、以下のとおりです。

作成例

本指針を事業所内に掲示することで、職員及び利用者等がいつでも閲覧できるようにする。

今回はハラスメント防止のための指針の作成例について解説しました。介護現場におけるハラスメントは、職員の安全と健康に悪影響を及ぼすだけでなく、利用者へのサービス提供にも支障をきたす可能性があります。そのため、ハラスメントのない労働環境を構築するために実効性のある指針を整備していくことが重要です。今回の記事が皆様の事業所におけるハラスメント防止指針の整備に役立てば幸いです。

ケアマネさん
ケアマネさん

今回の作成例を参考に、私の事業所でもハラスメント防止のための指針を見直します。

令和5年度末で経過措置が終了した令和3年度介護報酬改定の改定事項は、以下の記事で解説しています。

全ての介護サービス事業所で使用できる「ハラスメント防止のための指針」のひな形(Word)を作成しました。
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