【ひな形あり】居宅介護支援事業所BCPの作成例について解説(自然災害、感染症共通)

BCP
更新情報(令和6年1月18日)
  1. BCPひな形を更新(ver.5)しました。※「平常の対応」「緊急時の対応」追記
    関連記事:【自然災害BCP】日常生活から無理なくできる防災対策(平常時の対応)
  2. 令和3年度介護報酬改定の取組確認表※居宅介護支援事業所用」を作成しました。
    ※無料ダウンロード可能。

こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。

ケアマネさん
ケアマネさん

居宅介護支援事業所のBCPを策定しましたが、内容に不安があります。

令和6年4月1日より、BCP(業務継続計画)の策定が完全義務化されました。

BCPの策定はしたものの「この内容で感染症や自然災害が発生した時に対応できるのだろうか?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、新型コロナウイルス感染症自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPの作成例を解説します。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

BCPは「新型コロナウイルス感染症」と「自然災害」でそれぞれ作成する必要があるんじゃないですか!?

厚生労働省による「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、
感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない
とされています。

② 業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。
なお、各項目の記載内容については、「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。
また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。
(後略)

引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

「感染症」「自然災害」を1つにまとめた方がシンプルで実用的なBCPが作成できそうですね。

ヒトケア
ヒトケア

今回の記事を読んで、BCP作成に悩むケアマネさんの参考になれば幸いです。

Wordでの編集可能な居宅介護支援事業所BCP(自然災害・感染症)ひな形は、当記事の最後から有料にて販売しています。
note銀行振込ゆうちょ銀行でも購入可能です。

居宅介護支援事業所版BCPひな形(サンプル)ダウンロード

令和3年度介護報酬改定で義務化された「高齢者虐待防止の推進」「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」「ハラスメント対策の強化」については、以下の記事で解説しています。

令和3年度介護報酬改定の取組確認表※居宅介護支援事業所用 ダウンロード

BCP(業務継続計画)とは?

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

すみません、今更ですけどBCPとはそもそも何ですか?

それでは、はじめにBCP(事業継続計画)の定義について説明します。

内閣府の「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)」では、BCPについて以下のように定義されています。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン
(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な
事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方
針、体制、手順等を示した計画のこと。

引用:内閣府 事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)

BCPの定義を分かりやすく整理をすると以下のようになります。

ヒトケア
ヒトケア

介護サービスは利用者さんやご家族の生活を支える上で欠かせない存在のため、自然災害や感染症等が発生した場合でも継続的なサービスの提供が求められます。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

そのために介護事業所にもBCP作成が必要なんですね。

居宅介護支援事業所BCPの作成方法

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

ヒトケアさんはどのようにしてBCPを作成しましたか?

ヒトケア
ヒトケア

私は次の3つを重ね合わせて作成していきました。

解釈通知

介護事業所がBCPを作成する上で必ず押さえるべきは、解釈通知です。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、

  • 感染症に係る業務継続計画
  • 災害に係る業務継続計画

について、以下の記載がされています。

イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)

ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携

運営基準についての詳細な説明がされている解釈通知の内容を押さえれば、介護事業所としてのBCP策定の基準を満たしていることになります。

厚生労働省のひな形、ガイドライン

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

BCPの作成にあたっては、解釈通知の内容を押さえることは理解できました。

でも、具体的に何を書いたらいいか分かりません。

厚生労働省のホームページにて介護事業所の(BCP)作成のひな形やガイドラインが公開されています。

ただし、厚生労働省のBCPひな形やガイドラインは施設を想定した内容になっています。

そのため、ひな形の中から居宅介護支援においても該当する部分のみを抜き出していく必要があります。

ヒトケア
ヒトケア

特に一人ケアマネの場合は現実的に実行可能な部分を抜き出していかないと、BCPが“絵に描いた餅”となってしまいます。

事業所独自の取り組み

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

解釈通知の内容を押さえた上で、厚生労働省のBCPやガイドラインから居宅介護支援に該当する部分を抜き出していくのですね。

でもそれだと、どの居宅介護支援事業所も同じようなBCPになってしまいますね。

たしかに解釈通知と厚生労働省のひな形だけでは金太郎飴のようなBCPが量産されてしまいます。

そこで最後に加えるのが“事業所独自の取り組み”です。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

ヒトケアさんがBCPに加えた“事業所独自の取り組み”は何ですか?

ヒトケア
ヒトケア

私は事業所独自の取り組みとして、以下のICTツールの活用を記載しました。

BCPに記載したICTツール
<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

BCPに関わらず、日々の業務においてもICTツールの活用は重要ですね。

BCPにおけるICTツール活用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

居宅介護支援事業所版BCPの共通事項

ここからは、居宅介護支援事業所版BCPの作成例について解説します。

私が策定したBCPは「感染症」と「自然災害」を一体的に策定しています。

最初の大項目はBCPの共通事項を記載しました。

共通事項の項目は以下のとおりです。

(1)目的

「目的」については、以下の記載をしました。

作成例

(1)目的
本計画は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という)及び自然災害が事業所内で発生した場合においても、サービス提供を継続するために当事業所の実施すべき事項を定めるとともに、定めた実施事項を平時から円滑に実行できるよう準備すべき事項を定める。

(2)基本方針

基本方針の記載内容は、以下のとおりです。

作成例

(2)基本方針
本計画に関する基本方針を以下のとおりとする。
① 職員の安全確保
職員の生命を守り、生活の維持及び感染拡大防止に努める。
② 利用者の安全確保
利用者は重症化リスクが高く、感染症の罹患及び自然災害発生時に深刻な被害が生じるおそれがあることに留意して安全の確保に努める。
③ サービスの継続
利用者の生命、身体の安全、健康を守るために最低限必要となる機能を維持する。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

「利用者の安全確保」よりも「職員の安全確保」の方が上にありますね。
厚生労働省のBCPひな形では利用者の方が上にありましたが…。

災害が発生すると、支援者であるケアマネジャー自身も被災者になります。

まずは自分や自分の家族の安全を確保すること。

それができてこそ利用者の安全確保ができると考え、「職員の安全確保」を最上位に設定しました。

(3)対応体制

「対応体制」に記載した研修・訓練の内容は以下のとおりです。

作成例

(3)対応体制
感染症及び自然災害発生時の対応体制は以下のとおりとする。
①自然災害及び感染症対策本部長:◯◯
②対策本部における職務
・緊急対応に関する意思決定
・関係各部署との窓口
・医療機関との連携
・関連機関、他施設、関連業者との連携
・感染防護具の管理、調達

ヒトケア
ヒトケア

「対応体制」と言っても、一人ケアマネの場合は自分しかいないため、自分が全ての職務を担うことになります。

(4)ICTツールの活用

感染症及び自然災害発生時にも事業所以外で業務継続できるよう、以下のICTツール活用を記載しています。

作成例

(4)ICTツールの活用
感染症及び自然災害発生時にも事業所以外で業務継続できるよう、以下のICTツールを活用する。
・チャットツール:MCS(メディカルケアステーション)、LINE WORKS
・ビデオ通話:Zoom
・クラウド型介護ソフト:カイポケ
・インターネットFAX:MOVFAX
・クラウドストレージ:Dropbox
・IP電話アプリ:SUBLINE

(5)研修・訓練の実施

私がBCPに記載した研修・訓練の内容は以下のとおりです。

作成例

(5)研修・訓練の実施
ア 本計画に基づき以下の研修を実施する。
① 入職時研修
・時期:入職時   
・担当:管理者   
・方法:BCPの概念や必要性、感染症及び自然災害に関する情報を説明する。
② BCP研修(全員を対象)
・時期:年1回  
・担当:管理者    
・方法:BCPの概念や必要性、感染症及び自然災害に関する情報を共有する。

イ 本計画に基づき以下の訓練を実施する。
・時期:年1回
・担当:管理者
・方法:BCPに基づき、役割分担、実施手順、人員の代替え、物資調達方法の確認などを机上訓練で確認する。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

BCPの研修や訓練についての決まりはあるのでしょうか?

解釈通知の「⒁ 業務継続計画の策定等③④」には、研修・訓練について以下のとおりに定められています。

③ 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。
職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。

④ 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。
訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。

引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について

解釈通知の研修、訓練の内容を整理すると以下のようになります。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

一人ケアマネだと、自分ひとりで研修や訓練を行うのは難しそうですね。

ヒトケア
ヒトケア

私は地域のケアマネ協会と一緒に年BCPの研修、訓練を開催する予定です。

(6)BCPの検証・見直し

「BCPの検証・見直し」も共通事項に記載しました。

作成例

(6)BCPの検証・見直し
以下の活動を定期的に行い、BCPを見直す。
・地域の関係者とBCPに関する検討会を設置する。
・BCPに関連した最新の動向を把握する。
・訓練の実施により判明した新たな課題と、その解決策をBCPに反映させる。

ヒトケア
ヒトケア

「研修・訓練」と同様に地域のケアマネ協会と一緒にBCPを見直していきます。

居宅介護支援事業所版BCP(新型コロナウイルス感染症編)の作成例

続いては新型コロナウイルス感染症(※以下、「感染症」という)の記載事項について解説します。

解釈通知の感染症BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。

(1)平時からの備え

平時からの備えの記載内容は以下のとおりです。

作成例

(1)平時からの備え
ア 体制構築・整備
・意思決定者及び担当者は、感染症及び自然災害対策本部長とする。

イ 感染症防止に向けた取り組みの実施
・新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで示された「感染防止の5 つの基本」及び厚生労働省からの「高齢者施設等における感染対策等について」を踏まえ、以下の感染防止に取り組む。
①体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診する
②利用者宅でのマスクの着用及び日頃からのせきエチケットの実施
③3 密の回避及び換気
④手洗いを日常の生活習慣とする
⑤適度な運動と食事により健康な生活を送る
・ICT ツールを活用(※)したリモートワークの環境を整備する。
※「1.共通事項(4)ICT ツールの活用」参照。
・以下の行政機関から最新の情報を収集する。
①厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
②◯◯県の新型コロナウイルス感染症のホームページ
https://
③〇〇市の新型コロナウイルス感染症のホームページ
https://

ウ 備蓄品の確保
・備蓄品リストを年1回確認し、不足分を補充する。

(2)初動対応

初動対応の記載内容は以下のとおりです。

作成例

(2)初動対応
・感染疑い者が発生した際の初動対応について、迅速な行動ができるよう準備しておく。
ア 対応主体
・感染症及び自然災害対策本部長を最高責任者とする。

イ 第一報
・感染疑い者が出た事実、本人の容態、感染前後の経緯等を確認する。
・主治医や地域で身近な医療機関、あるいは、受診・相談センターへ電話連絡、指示を受ける。

ウ 感染疑い者への対応
a 職員
・医療機関受診
・自宅待機指示(リモート勤務)

エ 感染者への対応
a 職員
・発症日を0日目として5日間は事業所への出勤及び利用者宅への訪問を控え、かつ症状が軽快した場合でも、24 時間程度は同対応とする。
・自宅療養中も可能な範囲でリモート勤務を継続していく。
c 関係機関への連絡
・陽性結果について、◯◯市福祉部介護保険課◯◯係に報告する。

私は2022年2月に、新型コロナウイルスに感染しました。

当時は10日間の自宅療養が必要でしたが、テレワークの環境を整えていたため、自宅で支障なく業務継続ができました。

ヒトケア
ヒトケア

自分自身が新型コロナウイルスに感染したことで、業務継続におけるICTツールの重要性を実感しました。

居宅介護支援事業所のテレワーク(在宅勤務)導入のポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

(3)感染防止体制の確立

感染防止体制の確立の記載内容は以下のとおりです。

作成例

(3)感染防止体制の確立
ア 濃厚接触者への対応
a 職員
・新型コロナウイルス感染者との接触日を 0 日として 5 日間は事業所への出勤及び利用者宅への訪問を控え健康観察を行う。
・リモート勤務にて業務継続する。

イ 関係者との情報共有
・時系列にまとめ、感染者の情報、感染者の症状を報告、共有する。

新型コロナウイルス感染症5類移行後の介護現場での対応と感染症編BCPの詳細については、以下の記事をご覧ください。

居宅介護支援事業所版BCP(自然災害編)の作成例

ここからは自然災害BCPの記載事項について解説します。

解釈通知の自然災害BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。

(1)平常時の対応

平常時の対応の記載内容は以下のとおりです。

作成例

(1)平常時の対応
ア 建物・設備の安全対策
・利用者・家族および関係者とチャット(※)やメール等の電話以外の連絡方法を確保する。※チャットツールは◯◯を使用。
・紙による書類保存を減らし、電子保存とする。
・電子保存したデータをクラウド(※)上で保存する。※クラウドストレージは◯◯を使用。
・書庫の転倒防止のため、耐震ポールを設置する。
・不安定に物品を積み上げず、日ごろから整理整頓を行い、転落を防ぐ。

イ 電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策
a 電気が止まった時の対策
・電気なしでも使える代替品(乾電池や手動で稼働するもの)の準備や業務の方策を検討する。
b 水道が止まった時の対策
・飲料水用のペットボトルなどの保管方法を検討する。
・飲料水は、定期的に使用し、新しいものと入れ替える。
・対応策(削減策)生活用水の多くは「トイレ」「食事」「入浴」で利用
c 通信が麻痺した場合の対策
・被災時は固定電話や携帯電話が使用できなくなる可能性があるため、日頃からメールやチャット等の連絡手段で関係機関と連絡が取れる体制を構築していく。
d システムが停止した場合の対策
・PC、サーバ、重要書類などは、浸水のおそれのない場所に保管しておく。
・電子データはローカルではなく、クラウド上で保存していく。

ウ 必要品の備蓄
・被災時に必要な備蓄品は備蓄品リストを使用して、計画的に備蓄する。
・備蓄品によっては、賞味期限や使用期限があるため、担当者を決めて、定期的にメンテナンスを行い、備蓄品リストを見直す。

エ 防災アプリフォルダの作成
・災害時に迅速に情報を入手できるよう、スマートフォンに防災アプリフォルダを作成する。防災アプリフォルダには以下のアプリを含む。

オ 外出時の習慣
災害時には高層階から階段で降りる必要があったり、長時間歩くことも想定される。そのため、靴選びでは「歩きやすさ」を優先することが重要である。日常的にスニーカーを履いているのが理想的だが、それが難しい場合は、コンパクトなフラットシューズをバッグに入れて持ち歩いたり、職場にスニーカーを置いておくなどの工夫をする。

カ ハザードマップを確認する
ハザードマップ(防災マップ)は、大地震や水害などの災害時に被害が大きくなりやすい場所や、危険性の高い地域、避難場所、給水ポイントなどを示した地図である。自分の住む地域にどのような危険があるのか、緊急時にどこへ避難すべきかを確認しておく。

キ 日常備蓄
「日常備蓄」とは、普段使う食料品や生活必需品を通常よりも少し多く購入し、ストックしておくことである。買い物の方法を少し変更するだけで、防災対策に役立つ。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

平常時の対応のポイントはありますか?

私は以下のツールの活用はBCPにも有効であると考え、「平常時の対応」に記載しました。

  • チャットツール(MCS、LINE WORKS)
  • クラウドストレージ(Dropbox)

大地震の発生後に電話が繋がらない時でも、チャットツールで家族や関係者と繋がっていれば連絡が取れる可能性が高いです。

紙の書類を電子化(ペーパーレス化)して、それをクラウド上に保存しておけば水害や震災が発生した場合も書類を消失することがありません。

ヒトケア
ヒトケア

平常時からそれらのICTツールを活用することは、BCPだけでなく業務効率化支援の質向上につながります。

ペーパーレス化の実践方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

また、日常生活から無理なくできる防災対策(平常時の対応)もBCPに盛り込んでいます。

(2)緊急時の対応

緊急時の対応の記載内容は以下のとおりです。

作成例

(2)緊急時の対応
ア 業務継続計画(BCP)発動基準
a 地震
・◯◯市において震度 6 以上の地震が発生した場合。
b 水害
・◯◯市において大型台風や大雨により◯◯川の氾濫、高潮が見込まれる場合。

イ 自らの身の安全の確保
a 地震発生の瞬間
地震発生の瞬間には、「身を守る」「つかまる」「危険から離れる」の3つを意識する。
① 身を守る
地震の揺れを感じた際には、周囲の状況を素早く確認し、「落ちてこない」「倒れてこない」「行動しない」場所へ迅速に移動することが重要である。1 分以上は安全な場所で状況を見守る。
② つかまる
固定されたものにつかまる。
③ 危険から離れる
揺れにより発生する危険から離れる。
b 揺れが収まってからの行動
揺れが収まってからの行動は、ケガに注意しつつ、落ち着いて火の始末と出口を確保する。
① ケガに注意して行動する
あわてて行動すると、散乱したガラスなどで怪我をするおそれがある。落ち着いて周りをよく見ながら、スリッパや靴を履いてから次の行動に移る。
② 落ち着いて、火の始末をする
揺れている最中のキッチンは危険が多いため、すぐに離れて身を守ることを優先し、揺れが収まってから火の始末をする。万一、出火した場合は、落ち着いて初期消火に当たる。
③ ドアを開けて出口を確保する
大きな揺れが収まっても、余震は続く。いつでも避難できるように、部屋の窓や
戸、玄関のドアを開けて出口を確保する。

ウ 災害用伝言ダイヤル「171」の利用
NTT 東日本が提供する災害用伝言ダイヤル「171」を利用し、家族や職員の安否確認を行う。
【録音と再生の方法】
・録音:「171」に電話をかけ、録音用のオプション「1」を選択し、自分の電話番号を入力後、メッセージを録音する。
・再生:「171」に電話をかけ、再生用のオプション「2」を選択し、確認したい人の電話番号を入力してメッセージを聞く。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

「利用者の安否確認」にもMCSの活用が記載されていますね。

私達はチームで利用者さんの支援をしているのですから、災害時の安否確認もチームで行えば良いのです。

その時に力を発揮するのがグループチャットによる連携です。

ご家族を含めたチームの誰かが利用者さんの安否確認を行い、それを多職種によるグループチャットに送信すれば、全ての利用者さんの安否確認を行うことも可能です。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

災害時こそチームの“連携力”が問われますね。

災害用伝言ダイヤル「171」とは?

NTT東日本が提供する災害用伝言ダイヤル「171」は、災害時に家族や友人の安否を確認するための「声の伝言板」サービスです。このサービスの特徴は以下の通りです。

  1. 災害用伝言ダイヤル「171」の目的
    • 大規模な災害発生時、通信網が圧迫されることがあります。このような状況で、被災者が自分の安否情報を録音し、家族や友人がそれを聞くことができるようにするのが目的です。
  2. 録音と再生の方法
    • 録音:「171」に電話をかけ、録音用のオプション「1」を選択し、自分の電話番号を入力後、メッセージを録音します。
    • 再生:「171」に電話をかけ、再生用のオプション「2」を選択し、確認したい人の電話番号を入力してメッセージを聞きます。
  3. 「web171」について
    • 「web171」は、インターネットを通じて安否確認を行うサービスです。
    • 「web171」は、スマートフォンやパソコンからアクセス可能で、災害時の電話回線の混雑を避けるための代替手段として利用できます。
  4. 体験利用の日程
    • 災害用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日と15日に体験利用が可能です。体験利用を通じて、実際の災害時に備えることができます。

災害用伝言ダイヤル(171)の基本的操作方法はこちら

(3)他施設及び地域との連携

他施設及び地域との連携の記載内容は以下のとおりです。

作成例

(3)他施設及び地域との連携
・単独での事業継続が困難な事態を想定して施設・事業所を取り巻く関係者との協力関係を日頃から構築しておく。

ヒトケア
ヒトケア

この項目は、これから地域の介護事業所と具体的にどのような連携が図れるか検討中です。

感染症及び自然災害発生時における利用者支援について

ケアマネさん
ケアマネさん

居宅介護支援事業所のBCPに利用者支援をどう組み込むか悩んでいます。

居宅介護支援事業所におけるBCP策定では、

  • 職員の安全確保
  • 非常時における利用、家族、多職種との連携体制の構築
  • 事業所の建物・設備の安全対策
  • 事業所のライフライン(電気、水道、ガスなど)の確保

など、事業の継続を実現するための方針や手順を明確に定めることが求められます。

しかし、居宅介護支援事業所の役割として利用者の生活を支える視点も重要であり、そのための具体的な支援内容を考える必要もあります。
この観点から、本文のBCPとは別に「感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」の別紙を定めることで、利用者への具体的な支援内容を明確にしました。

作成例

(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について
(1)安否確認
・利用者の安否を迅速に確認する。
・チャットツールや電話を活用して多職種と連携を図りながら、利用者の安否確認を行う。
・「災害時利用者安否確認シート」にて利用者の安否確認を記録する。

(2)医療機関への搬送
・利用者の状況に応じて医療機関への搬送をサポートする。

(3)サービスの継続
・利用者の生命、身体の安全、健康を守るために必要不可欠と判断されたサービスに関しては、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。
・通所系、宿泊系サービスに関しては利用を中止する場合があるが、訪問系サービスに関しては、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。

(3)日常生活のサポート
・多職種で連携しながら生活必需品の確保や食料・水の供給サポートを行う。

(4)情報提供
・利用者やその家族に対して、現状の情報や安全対策、必要な行動についての情報を提供する。

(5)その他
・利用者の状況に応じて、その他の必要なサポートを提供する

居宅介護支援事業所BCP策定における利用者支援の位置づけについては、以下の記事をご覧ください。

まとめ:BCP策定をきっかけに業務効率化や地域との連携強化に繋げよう

今回は、新型コロナウイルス感染症自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPについて解説しました。

BCP策定においては解釈通知内に規定されている以下の項目を記載する必要があります。

イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)

ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携

BCPに様々な対応を盛り込むことは簡単ですが、それを実行できなければ意味がありません。

ヒトケア
ヒトケア

シンプルで実用的なBCPを作成するには、“やること”と同じくらい“やらないこと”を見極めるのが重要です。

介護事業所におけるBCPは、感染症や自然災害が発生した際も業務継続するために作成するものですが、

  • 業務効率化
  • 支援の質向上
  • 地域との連携強化

といった“副産物”ももたらしてくれます。

せっかくBCPを作成するのであれば、

「義務だから作成しないと…」

よりも

「BCP策定をきっかけに業務効率や地域との繋がりを深めていこう!」

と捉えたほうが良いものが作れるはずです。

<span class="fz-12px">ケアマネさん</span>
ケアマネさん

私もICTツールや地域との繋がりを活かしてBCPを作成していきます!

ヒトケア
ヒトケア

今回の記事が一人ケアマネさんのBCP作成の一助になれれば幸いです。

それではまたお会いしましょう。

令和5年度末で経過措置が終了した令和3年度介護報酬改定の改定事項は、以下の記事で解説しています。

居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形ダウンロード

「居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形」及び「備蓄品リスト(感染症・自然災害共通)/災害時利用者安否確認シート」は、以下のとおりです。
居宅介護支援事業所版BCPひな形(サンプル)ダウンロード

※編集(ダウンロード)可能な居宅介護支援事業所BCP(自然災害・感染症)(Word)ひな形及び備蓄品リスト/災害時利用者安否確認シート(Excel)の購入方法は、以下の3つがあります。

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令和5年3月12日Ver.1
※新型コロナウイルス感染症5類移行前
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令和5年5月28日Ver.2
※新型コロナウイルス感染症5類移行後
ダウンロード(Word)ダウンロード(Word)新型コロナウイルス感染症5類移行後の介護現場での対応と感染症編BCPについて解説
令和5年7月2日Ver.3
※ICTツールの内容追加
ダウンロード(Word)居宅介護支援事業所BCPにおいて有効な6つのICTツールについて解説
令和5年10月1日Ver.4
※(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について追加
ダウンロード(Word)ダウンロード(Word)居宅介護支援事業所BCP策定における利用者支援の位置づけを考える
令和6年1月6日Ver.5
※「平常時の対応」「緊急時の対応」の内容追記
ダウンロード(Word)ダウンロード(Word)【自然災害BCP】日常生活から無理なくできる防災対策(平常時の対応)
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ヒトケア
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コメント

  1. 福田 より:

    購入させていただきました。
    虐待防止も含め、委員会設置などは無くても大丈夫ですか?
    不安です

    • ヒトケア より:

      虐待防止検討委員会は「高齢者虐待防止のための指針」にて記載しております。