こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。
はじめての方は、「ヒトケアの仕事術」活用ガイドをご覧ください。
令和6年4月から、介護予防支援事業所の指定を受けようか迷っています。
令和6年度介護報酬改定により、居宅介護支援事業所も介護予防支援事業所の指定を受けることが可能となります。
介護予防支援事業所の指定を受けることによって、居宅介護支援事業所はその後の事業所運営や業務に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、指定を受けるか否かを悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるメリット、デメリットを解説します。
令和6年度介護報酬改定の内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
【居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるメリット】
最初に介護予防支援事業所の指定を受けるメリットから教えてください。
居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるメリットは、以下の3つが考えれらます。
メリット① 介護予防支援費が増額する
居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けることで、介護報酬(介護予防支援費)が増額されます。
介護予防支援費 | 要支援1・2 |
---|---|
介護予防支援費(Ⅰ) ※地域包括支援センターのみ | 442単位(438) |
介護予防支援費(Ⅱ) ※指定居宅介護支援事業者のみ | 472単位(新設) |
介護予防支援費(Ⅰ)と(Ⅱ)では30単位の増額になるのですね。
メリット② 介護予防支援費が全額受け取れる
指定を受けても30単位の増額だけでは、報酬面でのメリットは少ないですね。
報酬面のメリットは介護予防支援費の増額だけではありません。
それ以上に大きなメリットは、介護予防支援費を全額受け取れることです。
地域包括支援センターから介護予防支援の受託をした、介護予防支援費としてではなく、原案作成委託料として報酬が振り込まれることになります。
原案作成委託料は、介護予防支援費の8~9割の支給となり、残りの1~2割は地域包括支援センターに支払われます。
一方、市区町村から介護予防支援事業所の指定を受けた場合、居宅介護支援事業所が介護予防支援費の請求をするため、その報酬は全額(10割)受け取れることになります。
介護予防支援費の増額だけでなく、その報酬も全額受け取れるとなると、報酬面において大きな差が出てきますね。
例えば、
- 単価:11.4円※1級地
- 原案作成委託料:介護予防支援(Ⅰ)の90%
- 担当件数:10件
の条件で、介護予防支援費(Ⅰ)と(Ⅱ)を比較した結果は以下のとおりです。
名称 | ①単位数 | ②単価 | ③1件の報酬 (①×②) | ④件数 | ⑤合計 (③×④) | (Ⅱ)と(Ⅰ)の差額合計 (⑦-⑥) |
---|---|---|---|---|---|---|
介護予防支援(Ⅰ) | 442単位 | 11.4円 | 4,535円 ※90%で計算 | 10件 | ⑥45,350円 | +8,460円 ※1件の差額:846円 |
介護予防支援(Ⅱ) | 472単位 | 11.4円 | 5,381円 | 10件 | ⑦53,810円 |
1件の差額は846円なので、10件担当すると8,460円の差額が生じるのですね。
この差は大きい!
原案作成委託料が介護予防支援費から2割差し引かれている地域の場合は、報酬面でのメリットはさらに大きくなりますね。
メリット③ 地域包括支援センターとの書類の手間が減る
包括から介護予防支援を受託すると、プランや給付管理票のやり取りに手間がかかります。
地域包括支援センターから介護予防支援を受託した場合、以下の書類のやり取りが発生します。
- 契約書、重要事項説明書、個人情報使用に関する同意書
- 介護予防サービス支援計画表
- 評価表
- 給付管理票
特に介護予防サービス支援計画表や評価表に関しては、地域包括支援センターの相談員からコメントを記入してもらった後、それを再度受け取りに行く必要があるため、非常に手間がかかります。
これは、契約が地域包括支援センターと結ばれているため避けられない状況です。
一方で、市区町村から介護予防支援の指定を受けた場合、居宅介護支援事業所は利用者と直接介護予防支援の契約を結ぶことになります。
その結果、地域包括支援センターとの間で上記の書類のやり取りをする手間がなくなります。
包括との書類のやり取りがなくなれば、かなりの業務負担軽減になりますね!
ただし、これは“介護予防支援”に限った話なんです。
介護予防ケアマネジメントに関しては…。
え!介護予防ケアマネジメントに関しては、何なんですか!?
この話の続きは、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるデメリットでお伝えします。
【居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるデメリット】
介護予防支援事業所の指定を受けるメリットの話を聞いていたら、今すぐにでも指定申請をしたくなってきました!
指定を受けるかどうかの判断は、これから伝えるデメリットも理解したうえで行いましょう。
デメリット① 市区町村への指定申請書類の提出が必要になる
市区町村から介護予防支援事業所の指定を受ける場合、居宅介護支援とは別に新たに介護予防支援事業所の指定申請書の提出が必要となります。
さらに、法人の登記事項証明書における「目的」欄に「介護保険法に基づく介護予防支援事業」等の記載も必要となります。
指定申請書の提出に加えて登記事項証明書の変更も必要となると、指定を受けるまでに結構な手間がかかりますね。
デメリット② 新規契約の締結が必要になる
介護予防支援事業所の指定を受けた場合、包括から受託をしている要支援の利用者の契約はどうなりますか?
契約先が包括から居宅へと変更となるため、既存の利用者とも新たに契約を結ぶ必要が生じるでしょう。
さらに、介護予防支援に関する新たな契約書等の作成も必要となりますので、その負担も考慮する必要があります。
デメリット③ 保険者に情報提供することが義務付けられる
居宅介護支援事業者が市町村から指定を受けて介護予防支援を行う場合、市町村長に対し、介護予防サービス計画の実施状況等に関して情報提供することが運営基準上義務付けられます。
保険者への情報提供が必要となるのは、かなりの負担です…。
介護予防支援(Ⅰ)と比較して、介護予防支援(Ⅱ)の方が30単位多いのは、保険者への情報提供に要する手間とコストを評価しているからです。
介護報酬が増えるのは、相応の理由が存在するということですね。
デメリット④ 要支援の担当件数が増える可能性がある
介護予防支援費の介護報酬は、要介護1・2の居宅介護支援費に比べて約1/3程度ですが、1件当たりの対応時間は要介護のケースと大きく変わらない場合があります。
このため、報酬面で見ると要支援のケースは割に合わないことから、居宅介護支援事業所としては要支援のケースを積極的に受けたくないというのが実情です。
しかし、市区町村から介護予防支援事業所の指定を受けると、地域包括支援センターからの要支援の依頼を積極的に受け入れる必要が生じる場合があります。
また、要介護認定の更新で要介護から要支援へ変更された場合も、地域包括支援センターへケースを渡すことも困難となるでしょう。
上記の理由により、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けた場合、要支援の担当件数が増えることが想定されます。
要支援の件数が増えすぎると、経営的には厳しくなるというのが実情です。
デメリット⑤ 介護予防ケアマネジメントの契約はできない
事業対象者や要支援のケースが全て包括を通せずに契約できるなら、介護予防支援の指定を受けるのも良い選択肢だと考えています。
実はここまで話した内容は介護予防支援のみの話であって、介護予防ケアマネジメントに関しては、従来どおり地域包括支援センターの担当となります。
え…。一体どういうことですか?
詳しく教えてください。
まずは以下の表をご覧ください。
例えば、利用者(要支援1)が5月に訪問型サービスと介護予防福祉用具貸与を利用(①)していたとします。
この場合、介護予防サービス(介護予防福祉用具貸与)の利用があるため、介護予防支援のプラン(②)を作成する必要があり、その担当は居宅介護支援事業所になります(③)。
しかし、6月は介護予防福祉用具貸与のサービス利用がなく、総合事業(訪問型サービス)の利用のみだった(④)ため、介護予防ケアマネジメントのプラン(⑤)となり、担当は地域包括支援センターに変更されます(⑥)。
その後、7月に再び介護予防福祉用具貸与を利用(⑦)したため、介護予防支援のプラン作成とともに担当も居宅介護支援事業所に戻ります。
上記の変更に伴い、保険者に対して以下の届出が必要になります。
- 5月:介護予防サービス計画作成依頼(変更)届出書(⑩)
- 6月:介護予防ケアマネジメント依頼(変更)届出書(⑪)
- 7月:介護予防サービス計画作成依頼(変更)届出書(⑫)
これは…あまりに煩雑で言葉が出ないです。
まさかその都度、契約も変更されるのですか?
そのとおりです。
ただし、私の地域では利用者への負担を避けるため、受け入れ時に「居宅」と「包括」の両方の契約が可能とされています。※他の地域でも同様の対応を行われているようです。
ここまでは介護予防支援事業所の指定を受けることに前向きでしたが、介護予防ケアマネジメントは従来どおりとなると、慎重にならざるを得ないですね。
まとめ:介護予防支援事業所の指定を受けるメリット、デメリットを理解して判断しよう
今回は令和6年度介護報酬改定によって可能となる、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けるメリット、デメリットについて解説しました。
居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所として指定されることで得られる最大のメリットは、介護予防支援に関する報酬の増額です。
一方で、介護予防支援事業所の指定を受けるために、保険者(市区町村)への指定申請書の提出や情報提供が義務付けられます。
特に注目すべき点は、指定を受けられるのは介護予防支援のみであり、介護予防ケアマネジメントに関しては、従来どおり地域包括支援センターの担当となることです。
このため、介護予防サービスの利用の有無によって担当者(契約先)が変わり、その都度、保険者への届出も必要になります。
介護予防支援事業所の指定を検討されている居宅介護支援事業所の方は、今回紹介したメリットとデメリットを十分に理解し、慎重に判断していただくことをお勧めします。
私ももう一度、慎重に検討したうえで指定を受けるか決めたいと思います。
当サイトで販売しているテンプレートの購入方法は、以下の記事で解説しています。
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