こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。
介護事業所の皆様、令和5年度末で経過措置が終了した令和3年度介護報酬改定の改定事項について、対応されていますでしょうか?
令和5年度中に何とか間に合いましたが、これで大丈夫なのでしょうか…。
今回は、そのような不安を抱えている介護事業所の皆様に向けて、令和5年度末(令和6年3月31日)で経過措置期間が終了した、以下の改定事項について解説します。
名称 | 対象サービス | 概要 | |
---|---|---|---|
1 | 感染症対策の強化 | 全サービス | 感染症の予防及びまん延防止のための訓練、対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に対して周知すること。また、指針を整備すること。 |
2 | 業務継続に向けた取組の強化 | 全サービス | 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画を策定した上で、従業者に対して周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施すること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと。 |
3 | 認知症介護基礎研修の受講の義務付け | 全サービス※無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、福祉用具貸与、居宅介護支援を除く | 介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護にかかる基礎的な研修を受講させるために必要な措置を講じること。 |
4 | 高齢者虐待防止の推進 | 全サービス | 虐待の発生又はその再発を防止するための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に対して周知を行うとともに、必要な指針を整備し、研修を定期的に実施すること。また、これらを適切に実施するための担当者を置くこと。 |
5 | 施設系サービスにおける口腔衛生管理の強化 | 施設系サービス | 口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行うこと。なお、「計画的に」とは、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔衛生の管理に係る技術的助言及び指導を年2回以上実施することとする。 |
6 | 施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの充実 | 施設系サービス | 栄養マネジメント加算の要件を包括化することを踏まえ、入所者の栄養状態の維持及び改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うこと。 |
7 | 事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の強化 | 訪問リハビリテーション | 事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合に、例外として、一定の要件を満たせば、別の医療機関の計画的医学的管理を行う医師の指示のもと、リハビリテーションを提供することができる(未実施減算)。その要件のうち別の医療機関の医師の「適切な研修の修了等」について猶予期間を3年間延長する。 |
これらの改定事項にまだ取り組んでいない方は、早急に各改定事項の整備を進めていきましょう。
令和3年度介護報酬改定の取組確認表※居宅介護支援事業所用 ダウンロード
令和6年度介護報酬改定について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1.感染症対策の強化
感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、以下の取組が義務づけられました。
- 感染対策委員会の開催※おおむね6月に1回以上、定期的に開催すること
- 感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備
- 研修の実施※年1回以上。研修の実施内容についても記録すること。
- 訓練(シミュレーション)の実施
“一人ケアマネ”の場合でも、委員会は開催する必要がありますか?
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(解釈通知)において、居宅介護支援事業所の従業者が1名である場合は、感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備することで、委員会を開催しないことも差し支えないとされています。
「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」のひな形は、以下の記事からダウンロードできます。
2.業務継続に向けた取組の強化
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、以下の取組が義務づけられました。
- 業務継続に向けた計画等の策定
- 研修の実施
- 訓練(シミュレーション)の実施
感染症対策の強化の研修、訓練とは、別々に行わないといけませんか?
感染症の業務継続計画(BCP)に係る研修、訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えないとされています。
以下の指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)において、その旨が記載されています。
⒁ 業務継続計画の策定等
引用:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
(中略)
③ 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。
④ 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。
「居宅介護支援事業所版BCP」のひな形は、以下の記事からダウンロードできます。
3.認知症介護基礎研修の受講の義務付け
介護に関わる者の認知症対応力を向上させていくため、全ての介護サービス事業所者(※)を対象に、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることが義務づけられました。
※無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、福祉用具貸与、居宅介護支援を除く
認知症介護基礎研修とは何ですか?
4.高齢者虐待防止の推進
利用者の人権の擁護、虐待の防止等の観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、以下の取組が義務づけられました。
- 虐待防止検討委員会の設置
- 虐待の防止のための指針の整備
- 虐待の防止のための職員研修※年1回以上
- 専任担当者の設置※虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい。
また、運営規程に定めておかなければならない事項として、「虐待の防止のための措置に関する事項」が追加されました。
運営規定に追加されたことにより、重要事項説明書にも虐待の防止のための措置に関する事項の記載が必要になります。
これは漏れがないように気をつけます。
「高齢者虐待防止のための指針」のひな形は、以下の記事からダウンロードできます。
5.施設系サービスにおける口腔衛生管理の強化
入所者の口腔の健康の保持を図り自立した日常生活を営むことができるよう、施設系サービス(介護保険施設)を対象に、口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行うことが義務づけられました。
「計画的に」の詳細を教えてください。
「計画的に」とは、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔衛生に係る技術的助言及び指導を年2回以上実施することとされています。
6.施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの充実
栄養マネジメント加算の要件を包括化することを踏まえ、施設系サービス(介護保険施設)を対象に、入所者の栄養状態の維持及び改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことが義務づけられました。
7.事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の強化
訪問リハビリテーション事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合に、例外として、以下の要件を満たせば、別の医療機関の計画的医学的管理を行う医師の指示のもと、リハビリテーションを提供することができます(未実施減算)。
その要件のうち別の医療機関の医師の「適切な研修の修了等」についての猶予期間が、令和6年3月31日まで延長されました。
- 訪問リハビリテーション事業所の利用者が当該事業所とは別の医療機関の医師による計画的な医学的管理を受けている場合であって、当該事業所の医師が、計画的な医学的管理を行っている医師から、当該利用者に関する情報の提供を受けていること
- 当該計画的な医学的管理を行っている医師が適切な研修の修了等をしていること。
- 当該情報の提供を受けた訪問リハビリテーション事業所の医師が、当該情報を踏まえ、リハビリテーション計画を作成すること。
まとめ:令和6年度介護報酬改定の準備前に各改定事項を整備しよう
今回は令和5年度末で経過措置期間が終了した、令和3年度介護報酬改定の改定事項について解説しました。
今回解説した改定内容の概要は、以下のとおりです。
名称 | 対象サービス | 概要 | |
---|---|---|---|
1 | 感染症対策の強化 | 全サービス | 感染症の予防及びまん延防止のための訓練、対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に対して周知すること。また、指針を整備すること。 |
2 | 業務継続に向けた取組の強化 | 全サービス | 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画を策定した上で、従業者に対して周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施すること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと。 |
3 | 認知症介護基礎研修の受講の義務付け | 全サービス※無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、福祉用具貸与、居宅介護支援を除く | 介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護にかかる基礎的な研修を受講させるために必要な措置を講じること。 |
4 | 高齢者虐待防止の推進 | 全サービス | 虐待の発生又はその再発を防止するための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に対して周知を行うとともに、必要な指針を整備し、研修を定期的に実施すること。また、これらを適切に実施するための担当者を置くこと。 |
5 | 施設系サービスにおける口腔衛生管理の強化 | 施設系サービス | 口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理を計画的に行うこと。なお、「計画的に」とは、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔衛生の管理に係る技術的助言及び指導を年2回以上実施することとする。 |
6 | 施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの充実 | 施設系サービス | 栄養マネジメント加算の要件を包括化することを踏まえ、入所者の栄養状態の維持及び改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うこと。 |
7 | 事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の強化 | 訪問リハビリテーション | 事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合に、例外として、一定の要件を満たせば、別の医療機関の計画的医学的管理を行う医師の指示のもと、リハビリテーションを提供することができる(未実施減算)。その要件のうち別の医療機関の医師の「適切な研修の修了等」について猶予期間を3年間延長する。 |
介護事業所の皆様は、これから令和6年度の介護報酬改定に向けた準備を進めていくことになります。
その準備と並行して令和3年度の改定事項を整備していくのは容易ではありません。
経過措置の期限が迫る中、慌てることがないように、令和6年3月31日までに計画的に取り組むことが重要です。
令和3年度介護報酬改定で義務化された「BCP(業務継続計画)」「高齢者虐待防止の推進」「感染症対策の強化」「ハラスメント対策の強化」については、以下の記事で解説しています。
ご参考いただければ幸いです。
- 【ひな形あり】居宅介護支援事業所BCPの作成例について解説(自然災害、感染症共通)
- 【ひな形あり】「高齢者虐待防止のための指針」の作成例について解説
- 【ひな形あり】「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」の作成例について解説
- 【ひな形あり】「ハラスメント防止のための指針」の作成例について解説
私も各ひな形を参考にしながら、BCPや各指針の作成をしていきます。
当サイトで販売しているテンプレートの購入方法は、以下の記事で解説しています。
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