こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。
「高齢者虐待防止のための指針」をどのように作成すればいいですか?
令和3年度介護報酬改定に伴い、全ての介護サービス事業所を対象に、虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることを義務づけられました。
そこで、本記事では「高齢者虐待防止のための指針」の作成例について解説します。
この記事を読むことで、高齢者虐待防止についての理解を深め、指針の整備もスムーズに定めることができます。
「高齢者虐待防止のための指針をどのように作成すればいいか分からない…」
とお悩みの介護サービス事業所の方々にとって、この記事が参考になれば幸いです。
【サンプル】高齢者虐待防止のための指針・マニュアル
\高齢者虐待防止のための指針・マニュアル/
BCP、感染症対策、ハラスメント防止のひな形は、以下の記事からダウンロードできます。
高齢者虐待防止に関する解釈通知の内容
「高齢者虐待防止のための指針」の整備にあたり、まずは令和6年3月に公表された「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(解釈通知)の内容を確認していきましょう。
解釈通知では、「虐待の防止」について以下の記載がされています。
(22)虐待の防止
基準省令第 27 条の2は虐待の防止に関する事項について規定したものである。
虐待は、介護保険法の目的の一つである高齢者の尊厳の保持や、高齢者の人格の尊重に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて高く、指定居宅介護支援事業者は虐待の防止のために必要な措置を講じなければならない。
虐待を未然に防止するための対策及び発生した場合の対応等については、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成 17 年法律第 124 号。以下「高齢者虐待防止法」という。)に規定されているところであり、その実効性を高め、利用者の尊厳の保持・人格の尊重が達成されるよう、次に掲げる観点から指定居宅介護支援事業所における虐待の防止に関する措置を講じるものとする。・虐待の未然防止
指定居宅介護支援事業者は高齢者の尊厳保持・人格尊重に対する配慮を常に心がけながらサービス提供にあたる必要があり、第1条の2の基本方針に位置付けられているとおり、研修等を通じて、従業者にそれらに関する理解を促す必要がある。同様に、従業者が高齢者虐待防止法等に規定する養介護事業の従業者としての責務・適切な対応等を正しく理解していることも重要である。・虐待等の早期発見
指定居宅介護支援事業所の従業者は、虐待等又はセルフ・ネグレクト等の虐待に準ずる事案を発見しやすい立場にあることから、これらを早期に発見できるよう、必要な措置(虐待等に対する相談体制、市町村の通報窓口の周知等)がとられていることが望ましい。
また、利用者及びその家族からの虐待等に係る相談、利用者から市町村への虐待の届出について、適切な対応をすること。・虐待等への迅速かつ適切な対応
虐待が発生した場合には、速やかに市町村の窓口に通報される必要があり、指定居宅介護支援事業者は当該通報の手続が迅速かつ適切に行われ、市町村等が行う虐待等に対する調査等に協力するよう努めることとする。
以上の観点を踏まえ、虐待等の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するために次に掲げる事項を実施するものとする。① 虐待の防止のための対策を検討する委員会(第1号)
「虐待の防止のための対策を検討する委員会」(以下「虐待防止検討委員会」という。)は、虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会であり、管理者を含む幅広い職種で構成する。
構成メンバーの責務及び役割分担を明確にするとともに、定期的に開催することが必要である。また、事業所外の虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましい。
一方、虐待等の事案については、虐待等に係る諸般の事情が、複雑かつ機微なものであることが想定されるため、その性質上、一概に従業者に共有されるべき情報であるとは限られず、個別の状況に応じて慎重に対応することが重要である。
なお、虐待防止検討委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。
また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携により行うことも差し支えない。また、虐待防止検討委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。
この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。虐待防止検討委員会は、具体的には、次のような事項について検討することとする。その際、そこで得た結果(事業所における虐待に対する体制、虐待等の再発防止策等)は、従業者に周知徹底を図る必要がある。
イ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること
ロ 虐待の防止のための指針の整備に関すること
ハ 虐待の防止のための職員研修の内容に関すること
ニ 虐待等について、従業者が相談・報告できる体制整備に関すること
ホ 従業者が虐待等を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること
ヘ 虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること
ト 前号の再発の防止策を講じた際に、その効果についての評価に関すること② 虐待の防止のための指針(第2号)
指定居宅介護支援事業者が整備する「虐待の防止のための指針」には、次のような項目を盛り込むこととする。
イ 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
ロ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
ハ 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
ニ 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
ホ 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
へ 成年後見制度の利用支援に関する事項
ト 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
チ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
リ その他虐待の防止の推進のために必要な事項③ 虐待の防止のための従業者に対する研修(第3号)
従業者に対する虐待の防止のための研修の内容としては、虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、当該指定居宅介護支援事業所における指針に基づき、虐待の防止の徹底を行うものとする。
職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定居宅介護支援事業者が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である。
また、研修の実施内容についても記録することが必要である。研修の実施は、事業所内職員研修での研修で差し支えない。④ 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者(第4号)
引用:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
指定居宅介護支援事業所における虐待を防止するための体制として、①から③までに掲げる措置を適切に実施するため、担当者を置くことが必要である。
当該担当者としては、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい。
なお、同一事業所内での複数担当(※)の兼務や他の事業所・施設等との担当(※)の兼務については、担当者としての職務に支障がなければ差し支えない。
ただし、日常的に兼務先の各事業所内の業務に従事しており、利用者や事業所の状況を適切に把握している者など、各担当者としての職務を遂行する上で支障がないと考えられる者を選任すること。
(※) 身体的拘束等適正化担当者、褥瘡予防対策担当者(看護師が望ましい。)、感染対策担当者(看護師が望ましい。)、事故の発生又はその再発を防止するための措置を適切に実施するための担当者、虐待の発生又はその再発を防止するための措置を適切に実施するための担当者
虐待防止に関する解釈通知の主要なポイントは以下のとおりです。
解釈通知の内容をしっかり押さえて、高齢者虐待防止のための指針を整備する必要がありますね。
また、運営規程に定めておかなければならない事項として、「虐待の防止のための措置に関する事項」が追加されました。
運営規定に追加されたことにより、重要事項説明書にも虐待の防止のための措置に関する事項の記載が必要になります。
これは漏れがないように気をつけないといけないですね。
居宅介護支援事業所の重要事項説明書に記載すべき項目について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
高齢者虐待防止のための指針の作成例
ここからは、「高齢者虐待防止のための指針」の作成例について解説します。
解釈通知には、虐待の防止のための指針には、次のような項目を盛り込むこととするとされています。
1.事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
事業所における虐待の防止に関する基本的考え方の項目と作成例は、以下のとおりです。
目的
高齢者虐待の種類
虐待に対する「自覚」は問わない
利用者の安全を最優先する
常に迅速な対応を意識する
組織的に対応する
関係機関と連携して援助する
記録を残す
2.虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項と作成例は、以下のとおりです。
委員長の役割
開催頻度
他の会議との一体的な設置・運営
他のサービス事業者との連携
遠隔会議システムの利用
検討事項
3.虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
虐待の防止のための職員研修に関する基本方針の項目と作成例は、以下のとおりです。
研修プログラムの作成
定期的な研修の実施
新規採用者への研修
研修内容の記録
虐待防止研修記録簿のダウンロードはこちら。
4.虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針の項目と作成例は、以下のとおりです。
迅速な報告
事実確認の協力
被虐待者の保護
養護者の支援
虐待者が職員の場合
⏬高齢者虐待防止のための指針・マニュアル(ひな形)のダウンロードはこちら
5.虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項の項目と作成例は、以下のとおりです。
相談窓口の設置
報告内容の適切な扱い
報告者へのサポート
6.成年後見制度の利用支援に関する事項
成年後見制度の利用支援に関する事項の作成例は、以下のとおりです。
7.虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
虐待等に係る苦情解決方法に関する事項の項目と作成例は、以下のとおりです。
苦情受付窓口の設置
苦情の迅速な対応
透明性の保持
解決策の検討と実施
苦情処理の記録と評価
8.利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項の作成例は、以下のとおりです。
9.その他虐待の防止の推進のために必要な事項
その他虐待の防止の推進のために必要な事項の作成例は、以下のとおりです。
【別紙】高齢者虐待防止対応マニュアル
高齢者虐待防止のための指針の別紙として「高齢者虐待防止対応マニュアル」を追加しました。
高齢者虐待防止対応マニュアルは、高齢者虐待防止のための指針に沿い、以下の3段階に分けて構成しました。
まとめ:高齢者虐待防止のため、実効性のある指針を整備しよう
今回は「高齢者虐待防止のための指針」の作成例について解説しました。
高齢者虐待は深刻な問題であり、その予防と対策は非常に重要です。
この記事では、虐待の種類の明確化、教育と研修、緊急時の対応手順、苦情処理方法など、実効性のある指針とマニュアルのひな形を紹介しました。
今回の記事が、高齢者虐待防止のための具体的な指針を作成する際の参考になれば幸いです。
私も今回の記事を参考に、実効性のある指針とマニュアルを作成します!
【編集可能】高齢者虐待防止のための指針・マニュアル ひな形 ダウンロード
全ての介護サービス事業所で使用できる「高齢者虐待防止のための指針・マニュアル」のひな形(Word)を490円で販売しています。
【サンプル】高齢者虐待防止のための指針・マニュアル
有料記事内に虐待防止研修記録簿も追加しました。
Wordでの編集可能な「高齢者虐待防止のための指針・マニュアル」のひな形の購入方法は、以下のとおりです。
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