有料記事内に、【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿を追加しました。
こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。
はじめての方は、「ヒトケアの仕事術」活用ガイドをご覧ください。

居宅介護支援事業所のBCPを策定しましたが、内容に不安があります。
令和6年4月1日より、BCP(業務継続計画)の策定が完全義務化されました。
BCPの策定はしたものの「この内容で感染症や自然災害が発生した時に対応できるのだろうか?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新型コロナウイルス感染症と自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPの作成例を解説します。

BCPは「新型コロナウイルス感染症」と「自然災害」でそれぞれ作成する必要があるんじゃないですか!?
厚生労働省による「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、
“感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない”
とされています。
② 業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。
引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
なお、各項目の記載内容については、「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。
また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。
(後略)

「感染症」「自然災害」を1つにまとめた方がシンプルで実用的なBCPが作成できそうですね。
\居宅介護支援事業所事業所BCPひな形/
虐待防止、感染症対策、ハラスメント防止のひな形は、以下の記事からダウンロードできます。
BCP(業務継続計画)とは?


すみません、今更ですけどBCPとはそもそも何ですか?
それでは、はじめにBCP(事業継続計画)の定義について説明します。
内閣府の「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)」では、BCPについて以下のように定義されています。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン
引用:内閣府 事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)
(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な
事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方
針、体制、手順等を示した計画のこと。
BCPの定義を分かりやすく整理をすると以下のようになります。


介護サービスは利用者さんやご家族の生活を支える上で欠かせない存在のため、自然災害や感染症等が発生した場合でも継続的なサービスの提供が求められます。

そのために介護事業所にもBCP作成が必要なんですね。
居宅介護支援事業所BCPの作成方法


ヒトケアさんはどのようにしてBCPを作成しましたか?

私は次の3つを重ね合わせて作成していきました。

解釈通知
介護事業所がBCPを作成する上で必ず押さえるべきは、解釈通知です。
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、
- 感染症に係る業務継続計画
- 災害に係る業務継続計画
について、以下の記載がされています。
イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携
運営基準についての詳細な説明がされている解釈通知の内容を押さえれば、介護事業所としてのBCP策定の基準を満たしていることになります。
厚生労働省のひな形、ガイドライン

BCPの作成にあたっては、解釈通知の内容を押さえることは理解できました。
でも、具体的に何を書いたらいいか分かりません。
厚生労働省のホームページにて介護事業所の(BCP)作成のひな形やガイドラインが公開されています。
ただし、厚生労働省のBCPひな形やガイドラインは施設を想定した内容になっています。
そのため、ひな形の中から居宅介護支援においても該当する部分のみを抜き出していく必要があります。

特に一人ケアマネの場合は現実的に実行可能な部分を抜き出していかないと、BCPが“絵に描いた餅”となってしまいます。
事業所独自の取り組み

解釈通知の内容を押さえた上で、厚生労働省のBCPやガイドラインから居宅介護支援に該当する部分を抜き出していくのですね。
でもそれだと、どの居宅介護支援事業所も同じようなBCPになってしまいますね。
たしかに解釈通知と厚生労働省のひな形だけでは金太郎飴のようなBCPが量産されてしまいます。
そこで最後に加えるのが“事業所独自の取り組み”です。

ヒトケアさんがBCPに加えた“事業所独自の取り組み”は何ですか?

私は事業所独自の取り組みとして、以下のICTツールの活用を記載しました。
- チャットツール:MCS(メディカルケアステーション)、LINE WORKS
- ビデオ通話:Zoom
- クラウド型介護ソフト:カイポケ
- インターネットFAX:MOVFAX(モバックス)
- IP電話アプリ:SUBLINE
- クラウドストレージ:Dropbox

BCPに関わらず、日々の業務においてもICTツールの活用は重要ですね。
BCPにおけるICTツール活用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所版BCPの共通事項

ここからは、居宅介護支援事業所版BCPの作成例について解説します。
私が策定したBCPは「感染症」と「自然災害」を一体的に策定しています。
最初の大項目はBCPの共通事項を記載しました。
共通事項の項目は以下のとおりです。
(1)目的

(2)基本方針


「利用者の安全確保」よりも「職員の安全確保」の方が上にありますね。
厚生労働省のBCPひな形では利用者の方が上にありましたが…。
災害が発生すると、支援者であるケアマネジャー自身も被災者になります。
まずは自分や自分の家族の安全を確保すること。
それができてこそ利用者の安全確保ができると考え、「職員の安全確保」を最上位に設定しました。
(3)対応体制


「対応体制」と言っても、一人ケアマネの場合は自分しかいないため、自分が全ての職務を担うことになります。
(4)ICTツールの活用

(5)研修・訓練の実施


BCPの研修や訓練についての決まりはあるのでしょうか?
解釈通知の「⒁ 業務継続計画の策定等③④」には、研修・訓練について以下のとおりに定められています。
③ 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。
引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。
④ 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。
訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
解釈通知の研修、訓練の内容を整理すると以下のようになります。



一人ケアマネだと、自分ひとりで研修や訓練を行うのは難しそうですね。

私は地域のケアマネ協会と一緒に年BCPの研修、訓練を開催する予定です。
(6)BCPの検証・見直し


「研修・訓練」と同様に地域のケアマネ協会と一緒にBCPを見直していきます。
居宅介護支援事業所版BCP(新型コロナウイルス感染症編)の作成例

続いては新型コロナウイルス感染症(※以下、「感染症」という)の記載事項について解説します。
解釈通知の感染症BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。
(1)平時からの備え

(2)初動対応

私は2022年2月に、新型コロナウイルスに感染しました。
当時は10日間の自宅療養が必要でしたが、テレワークの環境を整えていたため、自宅で支障なく業務継続ができました。
自分自身が新型コロナウイルスに感染したことで、業務継続におけるICTツールの重要性を実感しました。
居宅介護支援事業所のテレワーク(在宅勤務)導入のポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
(3)感染防止体制の確立

新型コロナウイルス感染症5類移行後の介護現場での対応と感染症編BCPの詳細については、以下の記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所版BCP(自然災害編)の作成例

ここからは自然災害BCPの記載事項について解説します。
解釈通知の自然災害BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。
(1)平常時の対応







平常時の対応のポイントはありますか?
私は以下のツールの活用はBCPにも有効であると考え、「平常時の対応」に記載しました。
- チャットツール(MCS、LINE WORKS)
- クラウドストレージ(Dropbox)
大地震の発生後に電話が繋がらない時でも、チャットツールで家族や関係者と繋がっていれば連絡が取れる可能性が高いです。
紙の書類を電子化(ペーパーレス化)して、それをクラウド上に保存しておけば水害や震災が発生した場合も書類を消失することがありません。

平常時からそれらのICTツールを活用することは、BCPだけでなく業務効率化や支援の質向上につながります。
ペーパーレス化の実践方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
また、日常生活から無理なくできる防災対策(平常時の対応)もBCPに盛り込んでいます。
(2)緊急時の対応



NTT東日本が提供する災害用伝言ダイヤル「171」は、災害時に家族や友人の安否を確認するための「声の伝言板」サービスです。このサービスの特徴は以下の通りです。
- 災害用伝言ダイヤル「171」の目的
- 大規模な災害発生時、通信網が圧迫されることがあります。このような状況で、被災者が自分の安否情報を録音し、家族や友人がそれを聞くことができるようにするのが目的です。
- 録音と再生の方法
- 録音:「171」に電話をかけ、録音用のオプション「1」を選択し、自分の電話番号を入力後、メッセージを録音します。
- 再生:「171」に電話をかけ、再生用のオプション「2」を選択し、確認したい人の電話番号を入力してメッセージを聞きます。
- 「web171」について
- 「web171」は、インターネットを通じて安否確認を行うサービスです。
- 「web171」は、スマートフォンやパソコンからアクセス可能で、災害時の電話回線の混雑を避けるための代替手段として利用できます。
- 体験利用の日程
- 災害用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日と15日に体験利用が可能です。体験利用を通じて、実際の災害時に備えることができます。
災害用伝言ダイヤル(171)の基本的操作方法はこちら。
(3)他施設及び地域との連携


この項目は、これから地域の介護事業所と具体的にどのような連携が図れるか検討中です。
感染症及び自然災害発生時における利用者支援について


居宅介護支援事業所のBCPに利用者支援をどう組み込むか悩んでいます。
居宅介護支援事業所におけるBCP策定では、
- 職員の安全確保
- 非常時における利用、家族、多職種との連携体制の構築
- 事業所の建物・設備の安全対策
- 事業所のライフライン(電気、水道、ガスなど)の確保
など、事業の継続を実現するための方針や手順を明確に定めることが求められます。
しかし、居宅介護支援事業所の役割として利用者の生活を支える視点も重要であり、そのための具体的な支援内容を考える必要もあります。
この観点から、本文のBCPとは別に「感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」の別紙を定めることで、利用者への具体的な支援内容を明確にしました。

ヒトケア式アセスメントシートに「災害リスク」の項目を追加しました。

BCP対策の一環としてもご活用ください。
【サンプル】ヒトケア式アセスメントシート
※シート1,2まで利用可能
【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿


研修や訓練の実施内容を記録する書式を探しています。

BCPだけでなく、感染症対策の研修・訓練にも使用できる記録簿を作成しました。
「初期設定シート」に入力した内容は「記録簿シート」からリストで選択できるようになります。

参考として、BCP研修・訓練の具体案を載せています。
BCP研修・訓練に関しては、以下の記事をご覧ください。
まとめ:BCP策定をきっかけに業務効率化や地域との連携強化に繋げよう

今回は、新型コロナウイルス感染症と自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPについて解説しました。
BCP策定においては解釈通知内に規定されている以下の項目を記載する必要があります。
イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携
BCPに様々な対応を盛り込むことは簡単ですが、それを実行できなければ意味がありません。

シンプルで実用的なBCPを作成するには、“やること”と同じくらい“やらないこと”を見極めるのが重要です。
介護事業所におけるBCPは、感染症や自然災害が発生した際も業務継続するために作成するものですが、
- 業務効率化
- 支援の質向上
- 地域との連携強化
といった“副産物”ももたらしてくれます。
せっかくBCPを作成するのであれば、
「義務だから作成しないと…」
よりも
「BCP策定をきっかけに業務効率や地域との繋がりを深めていこう!」
と捉えたほうが良いものが作れるはずです。

私もICTツールや地域との繋がりを活かしてBCPを作成していきます!

今回の記事が一人ケアマネさんのBCP作成の一助になれれば幸いです。
それではまたお会いしましょう。
当サイトで販売しているテンプレートの購入方法は、以下の記事で解説しています。
【編集可能】居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形
今回紹介した、
- 居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形
- 備蓄品リスト・災害時安否確認シート
- 【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿
を590円で販売しています。
1.居宅介護支援事業所BCPひな形
2.備蓄品リスト・災害時安否確認シート


3.【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿
居宅介護支援事業所BCP(自然災害・感染症)等の購入方法は以下のとおりです。
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コメント
購入させていただきました。
虐待防止も含め、委員会設置などは無くても大丈夫ですか?
不安です
虐待防止検討委員会は「高齢者虐待防止のための指針」にて記載しております。