有料記事内に、【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿を追加しました。
こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。
はじめての方は、「ヒトケアの仕事術」活用ガイドをご覧ください。

居宅介護支援事業所のBCPを策定しましたが、内容に不安があります。
令和6年4月1日より、BCP(業務継続計画)の策定が完全義務化されました。
BCPの策定はしたものの「この内容で感染症や自然災害が発生した時に対応できるのだろうか?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新型コロナウイルス感染症と自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPの作成例を解説します。

BCPは「新型コロナウイルス感染症」と「自然災害」でそれぞれ作成する必要があるんじゃないですか!?
厚生労働省による「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、
“感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない”
とされています。
② 業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。
引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
なお、各項目の記載内容については、「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。
また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。
(後略)

「感染症」「自然災害」を1つにまとめた方がシンプルで実用的なBCPが作成できそうですね。
🎙️AI(NotebookLM)による音声解説はこちら。
\居宅介護支援事業所事業所BCPひな形/
BCP策定後の研修・訓練の開催方法に関しては、以下の記事をご覧ください。
BCP(業務継続計画)とは?


すみません、今更ですけどBCPとはそもそも何ですか?
それでは、はじめにBCP(事業継続計画)の定義について説明します。
内閣府の「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)」では、BCPについて以下のように定義されています。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン
引用:内閣府 事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和3年4月)
(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な
事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方
針、体制、手順等を示した計画のこと。
BCPの定義を分かりやすく整理をすると以下のようになります。
BCP (業務継続計画) とは?
自然災害や感染症などの
不測の事態が発生しても…
① 事業を中断させない
重要な事業活動を継続
② 短期間で復旧させる
中断しても迅速に再開
①②のための
方針、体制、手順を示す計画

介護サービスは利用者さんやご家族の生活を支える上で欠かせない存在のため、自然災害や感染症等が発生した場合でも継続的なサービスの提供が求められます。

そのために介護事業所にもBCP作成が必要なんですね。
居宅介護支援事業所BCPの作成方法


ヒトケアさんはどのようにしてBCPを作成しましたか?

私は次の3つを重ね合わせて作成していきました。
BCPの作り方
解釈通知
介護事業所がBCPを作成する上で必ず押さえるべきは、解釈通知です。
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(解釈通知)内の「⒁ 業務継続計画の策定等②」には、
- 感染症に係る業務継続計画
- 災害に係る業務継続計画
について、以下の記載がされています。
イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携
運営基準についての詳細な説明がされている解釈通知の内容を押さえれば、介護事業所としてのBCP策定の基準を満たしていることになります。
厚生労働省のひな形、ガイドライン

BCPの作成にあたっては、解釈通知の内容を押さえることは理解できました。
でも、具体的に何を書いたらいいか分かりません。
厚生労働省のホームページにて介護事業所の(BCP)作成のひな形やガイドラインが公開されています。
ただし、厚生労働省のBCPひな形やガイドラインは施設を想定した内容になっています。
そのため、ひな形の中から居宅介護支援においても該当する部分のみを抜き出していく必要があります。

特に一人ケアマネの場合は現実的に実行可能な部分を抜き出していかないと、BCPが“絵に描いた餅”となってしまいます。
事業所独自の取り組み

解釈通知の内容を押さえた上で、厚生労働省のBCPやガイドラインから居宅介護支援に該当する部分を抜き出していくのですね。
でもそれだと、どの居宅介護支援事業所も同じようなBCPになってしまいますね。
たしかに解釈通知と厚生労働省のひな形だけでは金太郎飴のようなBCPが量産されてしまいます。
そこで最後に加えるのが“事業所独自の取り組み”です。

ヒトケアさんがBCPに加えた“事業所独自の取り組み”は何ですか?

私は事業所独自の取り組みとして、以下のICTツールの活用を記載しました。
- チャットツール:MCS(メディカルケアステーション)、LINE WORKS
- ビデオ通話:Zoom
- クラウド型介護ソフト:カイポケ
- インターネットFAX:MOVFAX(モバックス)
- IP電話アプリ:SUBLINE
- クラウドストレージ:Dropbox

BCPに関わらず、日々の業務においてもICTツールの活用は重要ですね。
BCPにおけるICTツール活用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所版BCPの共通事項

ここからは、居宅介護支援事業所版BCPの作成例について解説します。
私が策定したBCPは「感染症」と「自然災害」を一体的に策定しています。
最初の大項目はBCPの共通事項を記載しました。
共通事項の項目は以下のとおりです。
(1)目的
本計画は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という)及び自然災害が事業所内で発生した場合においても、サービス提供を継続するために当事業所の実施すべき事項を定めるとともに、定めた実施事項を平時から円滑に実行できるよう準備すべき事項を定める。
感染症及び自然災害発生時の利用者支援についての詳細な対応は「(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」にて定める。
(2)基本方針
本計画に関する基本方針を以下のとおりとする。
- 職員の安全確保
職員の生命を守り、生活の維持及び感染拡大防止に努める。 - 利用者の安全確保
利用者は重症化リスクが高く、感染症の罹患及び自然災害発生時に深刻な被害が生じるおそれがあることに留意して安全の確保に努める。 - サービスの継続
利用者の生命、身体の安全、健康を守るために最低限必要となる機能を維持する。

「利用者の安全確保」よりも「職員の安全確保」の方が上にありますね。
厚生労働省のBCPひな形では利用者の方が上にありましたが…。
災害が発生すると、支援者であるケアマネジャー自身も被災者になります。
まずは自分や自分の家族の安全を確保すること。
それができてこそ利用者の安全確保ができると考え、「職員の安全確保」を最上位に設定しました。
(3)対応体制
感染症及び自然災害発生時の対応体制は以下のとおりとする。
- 自然災害及び感染症対策本部長:〇〇
- 対策本部における職務
- 緊急対応に関する意思決定
- 関係各部署との窓口
- 医療機関との連携
- 関連機関、他施設、関連業者との連携
- 感染防護具の管理、調達

「対応体制」と言っても、一人ケアマネの場合は自分しかいないため、自分が全ての職務を担うことになります。
(4)ICTツールの活用
ICTツール | ソフト名 | 活用場面 |
---|---|---|
チャットツール | 〇〇 | ● 災害時に電話回線が繋がりにくい状況での連絡手段 ● グループチャットによる迅速な情報共有、情報の一元化 |
ビデオ通話 | 〇〇 | ● 非接触による安全性を確保しながらのカンファレンス開催 ● 遠隔地の関係者と直接的なコミュニケーションの実現 |
クラウド型介護ソフト | 〇〇 | ● 利用者データを自動でバックアップ ● 事務所以外の場所からケアプラン等を作成 |
インターネットFAX | 〇〇 | ● リモートによるFAXデータの送受信 ● 送受信のデータを電子的に管理・保存 |
クラウドストレージ | 〇〇 | ● 紙の書類をデータ化してクラウドストレージに保存し、リモートからデータにアクセス ● 自動的なバックアップ機能によりデータの損失等を回避 |
IP電話アプリ | 〇〇 | ● 災害時に電話回線の制約を受けない通信手段の確保 ● 場所に固定されない通信環境の実現 |
(5)研修・訓練の実施
- ア 本計画に基づき以下の研修を実施する。
- ① 入職時研修
- 時期:入職時
- 担当:管理者
- 方法:BCPの概念や必要性、感染症及び自然災害に関する情報を説明する。
- ② BCP研修(全員を対象)
- 時期:年1回
- 担当:管理者
- 方法:BCPの概念や必要性、感染症及び自然災害に関する情報を共有する。
- ① 入職時研修
- イ 本計画に基づき以下の訓練を実施する。
- 時期:年1回
- 担当:管理者
- 方法:BCPに基づき、役割分担、実施手順、⼈員の代替、物資調達⽅法の確認などを机上訓練で確認する。

BCPの研修や訓練についての決まりはあるのでしょうか?
解釈通知の「⒁ 業務継続計画の策定等③④」には、研修・訓練について以下のとおりに定められています。
③ 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。
引用:厚生労働省 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について
職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。
④ 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。
訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
解釈通知の研修、訓練の内容を整理すると以下のようになります。



一人ケアマネだと、自分ひとりで研修や訓練を行うのは難しそうですね。

私は地域のケアマネ協会と一緒に年BCPの研修、訓練を開催する予定です。
(6)BCPの検証・見直し
以下の活動を定期的に行い、BCPを見直す。
- 地域の関係者とBCPに関する検討会を設置する。
- BCPに関連した最新の動向を把握する。
- 訓練の実施により判明した新たな課題と、その解決策をBCPに反映させる。

「研修・訓練」と同様に地域のケアマネ協会と一緒にBCPを見直していきます。
居宅介護支援事業所版BCP(新型コロナウイルス感染症編)の作成例

続いては新型コロナウイルス感染症(※以下、「感染症」という)の記載事項について解説します。
解釈通知の感染症BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。
(1)平時からの備え
- ア 体制構築・整備
- 意思決定者及び担当者は、感染症及び自然災害対策本部長とする。
- イ 感染症防止に向けた取り組みの実施
- 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで示された 「感染防止の5つの基本」 及び厚生労働省からの 「高齢者施設等における感染対策等について」 を踏まえ、以下の感染防止に取り組む。
- ① 体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診する
- ② 利用者宅でのマスクの着用及び日頃からのせきエチケットの実施
- ③ 室内の適度な換気
- ④ 手洗いと日常の生活習慣とする
- ⑤ 適度な運動と食事により健康な生活を送る
- ICTツールを活用し、リモートワークの環境を整備する。
※「1.共通事項 (4) ICT ツールの活用」参照。 - 以下の情報源より最新の情報を収集する。
- ・厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html - ・〇〇県の新型コロナウイルス感染症のホームページ
https://〇〇〇〇 - ・〇〇市の新型コロナウイルス感染症のホームページ
https://〇〇〇〇
- ・厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
- 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで示された 「感染防止の5つの基本」 及び厚生労働省からの 「高齢者施設等における感染対策等について」 を踏まえ、以下の感染防止に取り組む。
- ウ 備蓄品の確保
- 備蓄品リストを年1回確認し、不足分を補充する。
(2)初動対応
感染疑い者が発生した際の初動対応について、迅速な行動ができるよう準備しておく。
- ア 対応主体
- 感染症及び自然災害対策本部長を最高責任者とする。
- イ 第一報
- 感染疑い者が出た事実、本人の容態、感染前後の経緯等を確認する。
- 主治医や地域で身近な医療機関、あるいは、受診・相談センターへ電話連絡、指示を受ける。
- ウ 感染疑い者への対応
- a. 職員
- 医療機関受診
- 自宅待機指示(リモート勤務)
- a. 職員
- エ 感染者への対応
- a. 職員
- 発症日を0日目として5日間は事業所への出勤及び利用者宅への訪問を控え、かつ症状が軽快した場合でも、24時間程度は同対応とする。
- 自宅療養中も可能な範囲でリモート勤務を継続していく。
- b. 関係機関への連絡
- 陽性結果について、〇〇市福祉部介護保険課〇〇係に報告する。
- a. 職員
私は2022年2月に、新型コロナウイルスに感染しました。
当時は10日間の自宅療養が必要でしたが、テレワークの環境を整えていたため、自宅で支障なく業務継続ができました。
自分自身が新型コロナウイルスに感染したことで、業務継続におけるICTツールの重要性を実感しました。
居宅介護支援事業所のテレワーク(在宅勤務)導入のポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
(3)感染防止体制の確立
- ア 濃厚接触者への対応
- 職員
- 新型コロナウイルス感染者との接触日を0日として5日間は事業所への出勤及び利用者宅への訪問を控え健康観察を行う。
- リモート勤務にて業務継続する。
- 職員
- イ 関係者との情報共有
- 時系列にまとめ、感染者の情報、感染者の症状を報告、共有する。
新型コロナウイルス感染症5類移行後の介護現場での対応と感染症編BCPの詳細については、以下の記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所版BCP(自然災害編)の作成例

ここからは自然災害BCPの記載事項について解説します。
解釈通知の自然災害BCPに規定されている3つの項目は以下のとおりです。
(1)平常時の対応
- ア 建物・設備の安全対策
- 利用者・家族および関係者とチャット(※)やメール等の電話以外の連絡方法を確保する。※チャットツールは〇〇を使用。
- 紙による書類保存を減らし、電子保存とする。
- 電子保存したデータをクラウド(※)上で保存する。※クラウドストレージは〇〇を使用。
- 書庫の転倒防止のため、耐震ポールを設置する。
- 不安定に物品を積み上げず、日ごろから整理整頓を行い、転落を防ぐ。
- イ 電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策
- a. 電気が止まった時の対策
- 電気なしでも使える代替品(乾電池や手動で稼働するもの)の準備や業務の方策を検討する。
- b. 水道が止まった時の対策
- 飲料水用にボトルなどの保管方法を検討する。
- 飲料水は、定期的に使用し、新しいものと入れ替える。
- 対応策(削減策)生活用水の多くは「トイレ」「食事」「入浴」で利用。
- c. 通信が途絶えた時の対策
- 災害時などに携帯電話が使用できなくなる可能性があるため、日頃からメールやチャット等の通信手段で関係機関と連絡が取れる体制を構築していく。
- d. システムが止まった場合の対策
- PC、サーバ、重要書類などは、浸水のおそれのない場所に保管しておく。
- 電子データはローカルではなく、クラウド上で保存していく。
- a. 電気が止まった時の対策
- ウ 必要品の備蓄
- 災時に必要な備蓄品は備蓄品リストを使用して、計画的に備蓄する。
- 備蓄品によっては、賞味期限や使用期限があるため、担当者を決めて、定期的にメンテナンスを行い、備蓄品リストを見直す。
- エ 防災アプリフォルダの作成
- 災害時に迅速に情報を入手できるよう、スマートフォンに防災アプリフォルダを作成する。防災アプリフォルダには以下のアプリを含む。
防災アプリ | アプリ名 | 活用場面 |
---|---|---|
〇〇県の防災アプリ | 〇〇 | 各地域の災害情報や適切な備え方を学ぶことが可能。 |
ラジオアプリ | 〇〇 | ラジオやテレビのない外出先で災害が発生したときも、すぐに必要な情報にアクセスできる。 |
防災情報アプリ | 〇〇 | 災害の最新情報が得られるだけでなく、マップ上で雨雲・台風・河川の情報も確認できる。 |
応急手当アプリ | 〇〇 | 災害発生時に怪我や急病に対応し、自分や他者を危険から守る手助けとなる。 |
位置情報発信アプリ | 〇〇 | 自分の居場所を、あらかじめ登録した人に知らせる。 |
- オ 外出時の習慣
- 災害時には高層階から階段で降りる必要があったり、長時間歩くことも想定される。そのため、靴選びでは「歩きやすさ」を優先することが重要である。日常的にスニーカーを履いているのが理想的だが、それが難しい場合は、コンパクトなフラットシューズをバッグに入れて持ち歩いたり、職場にスニーカーを置いておくなどの工夫をする。
- カ ハザードマップを確認する
- ハザードマップ(防災マップ)は、大地震や水害などの災害時に被害が大きくなりやすい場所や、危険性の高い地域、避難場所、給水ポイントなどを示した地図である。自分の住む地域にどのような危険があるのか、緊急時にどこへ避難すべきかを確認しておく。
- キ 日常備蓄
- 「日常備蓄」とは、普段使う食料品や生活必需品を通常よりも少し多く購入し、ストックしておくことである。買い物の方法を少し変更するだけで、防災対策に役立つ。

平常時の対応のポイントはありますか?
私は以下のツールの活用はBCPにも有効であると考え、「平常時の対応」に記載しました。
- チャットツール(MCS、LINE WORKS)
- クラウドストレージ(Dropbox)
大地震の発生後に電話が繋がらない時でも、チャットツールで家族や関係者と繋がっていれば連絡が取れる可能性が高いです。
紙の書類を電子化(ペーパーレス化)して、それをクラウド上に保存しておけば水害や震災が発生した場合も書類を消失することがありません。

平常時からそれらのICTツールを活用することは、BCPだけでなく業務効率化や支援の質向上につながります。
ペーパーレス化の実践方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
また、日常生活から無理なくできる防災対策(平常時の対応)もBCPに盛り込んでいます。
(2)緊急時の対応
- ア 業務継続計画(BCP)発動基準
- a. 地震
・〇〇市において震度6以上の地震が発生した場合。 - b. 水害
・〇〇市において大型台風や大雨により〇〇川の氾濫、高潮が見込まれる場合。
- a. 地震
- イ 自らの身の安全の確保
- a. 地震発生の瞬間
地震発生の瞬間には、「身を守る」「つかまる」「危険から離れる」の3つを意識する。- ① 身を守る
地震の揺れを感じた際には、周囲の状況を素早く確認し、「落ちてこない」「倒れてこない」「行動しない」場所へ迅速に移動することが重要である。1分以上は安全な場所で状況を見守る。 - ② つかまる
固定されたものにつかまる。 - ③ 危険から離れる
揺れにより発生する危険から離れる。
- ① 身を守る
- b. 揺れがおさまってからの行動
揺れがおさまってからの行動は、ケガに注意しつつ、落ち着いて火の始末と出口を確保する。- ① ケガに注意して行動する
あわてて行動すると、散乱したガラスなどで怪我をするおそれがある。落ち着いて周囲をよく見ながら、スリッパや靴を履いてから次の行動に移る。 - ② 落ち着いて、火の始末をする
揺れている最中のキッチンは危険が多いため、すぐに離れて身を守ることを優先し、揺れがおさまってから火の始末をする。万一、出火した場合は、落ち着いて初期消火に努める。 - ③ ドアを開けて出口を確保する
大きな揺れがおさまっても、余震に備え、いつでも避難できるように、部屋の窓や戸、玄関のドアを開けて出口を確保する。
- ① ケガに注意して行動する
- a. 地震発生の瞬間
- ウ 災害用伝言ダイヤル「171」の利用 NTT東日本が提供する災害用伝言ダイヤル「171」を利用し、家族や職員の安否確認を行う。
【録音と再生の方法】- 録音:「171」に電話をかけ、録音用のオプション「1」を選択し、自分の電話番号を入力後、メッセージを録音する。
- 再生:「171」に電話をかけ、再生用のオプション「2」を選択し、確認したい人の電話番号を入力してメッセージを聞く。
NTT東日本が提供する災害用伝言ダイヤル「171」は、災害時に家族や友人の安否を確認するための「声の伝言板」サービスです。このサービスの特徴は以下の通りです。
- 災害用伝言ダイヤル「171」の目的
- 大規模な災害発生時、通信網が圧迫されることがあります。このような状況で、被災者が自分の安否情報を録音し、家族や友人がそれを聞くことができるようにするのが目的です。
- 録音と再生の方法
- 録音:「171」に電話をかけ、録音用のオプション「1」を選択し、自分の電話番号を入力後、メッセージを録音します。
- 再生:「171」に電話をかけ、再生用のオプション「2」を選択し、確認したい人の電話番号を入力してメッセージを聞きます。
- 「web171」について
- 「web171」は、インターネットを通じて安否確認を行うサービスです。
- 「web171」は、スマートフォンやパソコンからアクセス可能で、災害時の電話回線の混雑を避けるための代替手段として利用できます。
- 体験利用の日程
- 災害用伝言ダイヤル「171」は、毎月1日と15日に体験利用が可能です。体験利用を通じて、実際の災害時に備えることができます。
災害用伝言ダイヤル(171)の基本的操作方法はこちら。
(3)他施設及び地域との連携
- 単独での事業継続が困難な事態を想定して、施設・事業所を取り巻く関係者との協力関係を日頃から構築しておく。
感染症及び自然災害発生時における利用者支援について


居宅介護支援事業所のBCPに利用者支援をどう組み込むか悩んでいます。
居宅介護支援事業所におけるBCP策定では、
- 職員の安全確保
- 非常時における利用、家族、多職種との連携体制の構築
- 事業所の建物・設備の安全対策
- 事業所のライフライン(電気、水道、ガスなど)の確保
など、事業の継続を実現するための方針や手順を明確に定めることが求められます。
しかし、居宅介護支援事業所の役割として利用者の生活を支える視点も重要であり、そのための具体的な支援内容を考える必要もあります。
この観点から、本文のBCPとは別に「感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」の別紙を定めることで、利用者への具体的な支援内容を明確にしました。
(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について
- 安否確認
- 利用者の安否を迅速に確認する。
- チャットツールや電話を活用して多職種と連携を図りながら、利用者の安否確認を行う。
- 「災害時利用者安否確認シート」にて利用者の安否確認を記録する。
- 医療機関への搬送
- 利用者の状況に応じて医療機関への搬送をサポートする。
- サービスの継続
- 利用者の生命、身体の安全、健康を守ることが必要不可欠と判断されたサービスについては、感染症に配慮した上でサービスの提供を継続する。
- 通所について、送迎に関しては利用中止する場合があるが、訪問系サービスに振り替えて継続的な提供を行うなど柔軟な対応を図る。
- 日常生活のサポート
- 多職種と連携しながら生活必需品の確保や食料・水の供給をサポートする。
- 情報提供
- 利用者の安心感に対して、現状の情報や安全対策、必要な行動についての情報を提供する。
- その他
- 利用者の状況に応じて、その他必要なサポートを提供する。
ヒトケア式アセスメントシートに「災害リスク」の項目を追加しました。

BCP対策の一環としてもご活用ください。
【サンプル】ヒトケア式アセスメントシート
※シート1,2まで利用可能
【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿


研修や訓練の実施内容を記録する書式を探しています。

BCPだけでなく、感染症対策の研修・訓練にも使用できる記録簿を作成しました。
「初期設定シート」に入力した内容は「記録簿シート」からリストで選択できるようになります。

参考として、BCP研修・訓練の具体案を載せています。
BCP研修・訓練に関しては、以下の記事をご覧ください。
まとめ:BCP策定をきっかけに業務効率化や地域との連携強化に繋げよう

今回は、新型コロナウイルス感染症と自然災害を一体的に作成した居宅介護支援事業所版BCPについて解説しました。
BCP策定においては解釈通知内に規定されている以下の項目を記載する必要があります。
イ 感染症に係る業務継続計画
a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
b 初動対応
c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
ロ 災害に係る業務継続計画
a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
c 他施設及び地域との連携
BCPに様々な対応を盛り込むことは簡単ですが、それを実行できなければ意味がありません。

シンプルで実用的なBCPを作成するには、“やること”と同じくらい“やらないこと”を見極めるのが重要です。
介護事業所におけるBCPは、感染症や自然災害が発生した際も業務継続するために作成するものですが、
- 業務効率化
- 支援の質向上
- 地域との連携強化
といった“副産物”ももたらしてくれます。
せっかくBCPを作成するのであれば、
「義務だから作成しないと…」
よりも
「BCP策定をきっかけに業務効率や地域との繋がりを深めていこう!」
と捉えたほうが良いものが作れるはずです。

私もICTツールや地域との繋がりを活かしてBCPを作成していきます!

今回の記事が一人ケアマネさんのBCP作成の一助になれれば幸いです。
それではまたお会いしましょう。
当サイトで販売しているテンプレートの購入方法は、以下の記事で解説しています。
【編集可能】居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形
今回紹介した、
- 居宅介護支援事業所BCP(感染症・自然災害)ひな形
- 備蓄品リスト・災害時安否確認シート
- 【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿
を590円で販売しています。
1.居宅介護支援事業所BCPひな形
2.備蓄品リスト・災害時安否確認シート


3.【具体案付き】BCP研修・訓練記録簿
居宅介護支援事業所BCP(自然災害・感染症)等の購入方法は以下のとおりです。
決済方法 | 購入方法 | リンク | ||
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当記事(codoc) | 1.クレジットカード 2.コンビニ払い | 説明はこちら | ブログで購入 | |
note | 1.クレジットカード 2.キャリア決済(docomo/au /Softbank) 3.PayPay | 説明はこちら | noteで購入 | |
銀行振込 | 銀行振込 | 説明はこちら | 銀行振込で購入 |
テンプレートセットの購入はこちら。
有料記事購入後のテンプレートのダウンロード方法は、こちらをご覧ください。
テンプレートの利用は、すべて購入者様の責任において行っていただくものとします。テンプレートを使用したことによって生じたいかなるトラブルや損失、損害についても、当サイトは一切の責任を負いかねます。
ご購入をもって、上記内容に同意したものとみなします。
コメント
購入させていただきました。
虐待防止も含め、委員会設置などは無くても大丈夫ですか?
不安です
虐待防止検討委員会は「高齢者虐待防止のための指針」にて記載しております。
全ての、書式を購入したいのですが、郵貯払い、銀行振り込みで可能でしたら。ありがたいです。(この場合毎年、振り込めばいいのでしょうか。)
ご質問ありがとうございます。
『全ての、書式を購入したいのですが、郵貯払い、銀行振り込みで可能でしたら。ありがたいです。』
銀行振込みをご希望の場合、以下のフォームからお申し込みをお願いいたします。
https://forms.gle/kpRGFN9aaWfw3jq1A
『この場合毎年、振り込めばいいのでしょうか。』
→テンプレートは買い切り型のため、毎年の料金は発生しません。
ただし、銀行振込をご利用の場合、テンプレートはメールにてお送りいたします。最新版のテンプレートが必要な場合は、改めてご購入いただく必要がございます。