認定調査の聞き取りが上手くできずに報告書の作成で苦労しています。
認定調査員の皆さん、1回の認定調査で74項目に渡る調査項目を漏れなく聞き取り、報告書を作成する難しさを感じていませんか?
私も2015年7月から、ケアマネ業務の傍ら認定調査も行っていますが、現在も調査項目の選択や特記事項の記載に迷うことがあります。
そこで今回の記事では、74項目に及ぶ調査項目の具体的な聞き取り方から特記事項の文例集まで完全解説します。
円滑な認定調査を行い報告書作成の負担を軽減したい方は、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。
特記事項の例文(記入例)は、随時追加していきます。
当サイトからダウンロードできる各種テンプレートは、以下の記事にて紹介しています。
認定調査の概要
認定調査は、以下の3種類によって構成されています。
概況調査
概況調査は、以下の項目から構成されています。
- 認定調査実施者(記入者)
- 調査対象者
- 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
- 置かれている環境等(家族状況、在宅環境、傷病、既往歴等)
基本調査※74項目
基本調査は、以下の74項目(1~5群及び「その他」)から構成されています。
群 | 項目 | テキスト |
---|---|---|
第1群 身体機能・起居動作 | 1-1麻痺(5) | P31~35 |
1-2拘縮(4) | P36~40 | |
1-3寝返り | P41~42 | |
1-4起き上がり | P43~44 | |
1-5座位保持 | P45~47 | |
1-6両足での立位 | P48~49 | |
1-7歩行 | P50~52 | |
1-8立ち上がり | P53~54 | |
1-9片足での立位 | P55~56 | |
1-10洗身 | P57~59 | |
1-11つめ切り | P60~62 | |
1-12視力 | P63~66 | |
1-13聴力 | P67~68 | |
第2群 生活機能 | 2-1移乗 | P70~72 |
2-2移動 | P73~75 | |
2-3えん下 | P76~77 | |
2-4食事摂取 | P78~80 | |
2-5排尿 | P81~83 | |
2-6排便 | P84~86 | |
2-7口腔清潔 | P87~88 | |
2-8洗顔 | P89~90 | |
2-8整髪 | P91~92 | |
2-10上衣の着脱 | P93~95 | |
2-11ズボン等の着脱 | P96~98 | |
2-12外出頻度 | P99 | |
第3群 認知機能 | 3-1意思の伝達 | P101~102 |
3-2毎日の日課を理解 | P103 | |
3-3生年月日をいう | P104 | |
3-4短期記憶 | P105~106 | |
3-5自分の名前をいう | P107 | |
3-6今の季節を理解 | P108 | |
3-7場所の理解 | P109 | |
3-8徘徊 | P110~111 | |
3-9外出して戻れない | P112~113 | |
第4群 精神・行動障害 | 4-1被害的 | P116 |
4-2作話 | P117 | |
4-3感情が不安定 | P118 | |
4-4昼夜逆転 | P119 | |
4-5同じ話をする | P120 | |
4-6大声を出す | P121 | |
4-7介護に抵抗 | P122 | |
4-8落ち着きなし | P123 | |
4-9一人で出たがる | P124 | |
4-10収集癖 | P125 | |
4-11物や衣類を壊す | P126 | |
4-12ひどい物忘れ | P127 | |
4-13独り言・独り笑い | P128 | |
4-14自分勝手に行動する | P129 | |
4-15話がまとまらない | P130 | |
第5群 社会生活への適応 | 5-1薬の内服 | P132~134 |
5-2金銭の管理 | P135~136 | |
5-3日常の意思決定 | P137~138 | |
5-4集団への不適応 | P139~140 | |
5-5買い物 | P141~143 | |
5-6簡単な調理 | P144~145 | |
その他 過去14日間にうけた特別な医療について | 点滴の管理 | P147 |
中心静脈栄養 | P148 | |
透析 | P148~149 | |
ストーマ(人工肛門)の処置 | P149 | |
酸素療法 | P149~150 | |
レスピレーター | P150 | |
気管切開の処置 | P151 | |
疼痛の看護 | P151~152 | |
経管栄養 | P152 | |
モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等) | P153 | |
じょくそうの処置 | P153~154 | |
カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等) | P154 |
基本調査の項目には、以下の3つの評価軸があります。
①能力
身体機能や認知機能などの能力
②介助の方法
生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか
③有無
障害や現象(行動)の有無
特記事項
基本調査(74項目)の中で特に介護に影響を与えている項目について、具体的な状況等について記入します。
第1群 身体機能・起居動作
「第 1 群 身体機能・起居動作」は、麻痺等や拘縮による四肢の機能や、身体機能・起居のための動作の能力に関して調査を行う項目の群です。
「麻痺」「拘縮」は部位ごとの評価であり、これらは合計で 9 項目あります。
評価軸 | ①能力 | ②介助 | ③有無 |
---|---|---|---|
1-1 麻痺等の有無 | ◯ | ||
1-2 拘縮の有無 | ◯ | ||
1-3 寝返り | ◯ | ||
1-4 起き上がり | ◯ | ||
1-5 座位保持 | ◯ | ||
1-6 両足での立位保持 | ◯ | ||
1-7 歩行 | ◯ | ||
1-8 立ち上がり | ◯ | ||
1-9 片足での立位 | ◯ | ||
1-10 洗身 | ◯ | ||
1-11 つめ切り | ◯ | ||
1-12 視力 | ◯ | ||
1-13 聴力 | ◯ |
1-1 麻痺等の有無(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 上肢
・右腕の肘を伸ばしたまま肩の高さまで前方に挙げて静止させてください。
・次に左腕の肘を伸ばしたまま肩の高さまで前方に挙げて静止させてください。 - 下肢
・右足を膝から下を伸ばして前方に挙げて静止させてください。
・次に左足を膝から下を伸ばして前方に挙げて静止させてください。
認定調査員は対象者と向かい合わせで座り、確認動作を示すと伝わりやすいです。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 上下肢ともにスムーズに確認動作が行えた。
- 加齢による筋力低下があるが、上下肢の確認動作はなんとか行えた。
- 筋力に関しては全く問題がなく、確認動作も速やかに行った。
- 加齢による運動機能の衰えは見られるが、確認動作に影響はない。
- 筋肉量は少なくなっているが、確認動作は正常に行えた。
- 運動制限はなく、確認動作も正確に行えた。
- 年齢を考慮しても筋力は十分であり、確認動作も問題なく行えた。
- 筋力自体は低下しているものの、確認動作に支障はなかった。
- 長時間の座位による疲労があるが、確認動作は順調に行った。
- 運動量が少ない日常生活を送っているが、確認動作に制限はなかった。
2.左上肢 3.右上肢 4.左下肢 5.右下肢
- 重度の寝たきりで意識障害があり意思疎通できず。自分の意志で四肢等を全く動かせない。
- 脳梗塞の後遺症により右半身の麻痺あり。右上下肢は自力では45度の程度しか挙上できない。転倒リスクがあり歩行時は見守り介助が行われている。
- 関節痛により、確認動作が制限されており、両上肢の挙上可能な角度は45度程度だった。
- 関節リウマチのため、右上肢には可動域制限があり、挙上、静止可能な角度は60度である。
- 右上肢に軽度の可動域制限があるが、関節の動く範囲で挙上、静止できた。
- 調査時、関節等の痛みがあり確認動作行えず。調査対象者に日頃の状況について確認したところ、上肢については問題なくできるが、両下肢はできないとのこと。
6.その他(四肢の欠損)
- 糖尿病性壊疽により、右膝下の欠損があり補装具を使用。介護者が装着を行っている。
- 右足に先天的な欠損があり、義足を着用している。
- 手指に麻痺があり自力では動かせない。
- 糖尿病による壊疽で右足を欠損。車椅子を使用している。
1-2 拘縮の有無(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 関節が動かせなかったり、動かしにくいところはありますか。
- 痛みによって動かせないところはありますか。
- 寝ている時に膝は真っすぐ伸びていますか。
- 関節が動かせないことで、介助の際に気をつけていることはありますか。
- 痛みのない範囲で腕や足をゆっくり動かしてもいいですか。
調査対象者が痛みを訴える場合は、それ以上は動かさず、そこ
までの状況で選択しましょう。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 上下肢ともに支障なく確認動作が行えた。
- 確認動作は行えたが、人工関節のため正座はできない。
- 重度の寝たきりで意識障害があり意思疎通できず。家族に「拘縮」の確認動作が行えるか確認したところ、全てできるとのこと。
- 左股関節は10cmほどの動作しかできないが、右股関節は25cmほど開くことができたため、「制限なし」とする。
- 確認動作はできたが膝の痛みがあり、立ち上がりの動作は緩慢。
- 確認動作はすべて行えたが、右腕に軽度の痛みがある。
2.肩関節 3.股関節 4.膝関節
- 右肩は骨折の影響により、他動でも肩までは上げられない。着替えや整髪時に介助されている。
- 両肩の痛みがあり、他動でも60度程度しか上げられない。
- 人工関節の手術により、股関節は他動でも20cm程度しか開かない。オムツ交換の介助時に支障がある。
- 両膝が「く」の字に曲がり、他動でも伸ばすことができない。
- 他動でも膝を伸ばすことができなかったが、臥床時は膝をまっすぐ伸びているため「制限なし」とする。
- 左肩関節に拘縮があり、他動でも60度までしか上げられない。服の着脱に支障がある。
- 両股関節に拘縮があり、他動でも15cmしか開けない。オムツ交換時に配慮が必要。
5.その他
- 両手指が握り拳のように固縮しており、食事や着替えに介助が必要。
- 腰椎圧迫骨折の影響により腰椎に可動域の制限がある。
1-3 寝返り(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 仰向けの状態から左右の寝返りをしてください。
- 日頃からベッド柵につかまり寝返りをしていますか。
- (調査時に確認ができない場合)日頃の寝返りの状況を教えてください。
特記事項の例文(記入例)
1.つかまらないでできる
- 動作緩慢だが、つかまらずに左右の寝返りができた。
- きちんと横向きにはならなかったが、横たわったまま左右に体の向きを変え、安定した状態を保持できた。
- 下半身の麻痺があるが、上半身だけならつかまらずに左右の向きを変えられる。
- 認知症により声かけをしないと仰臥位のままでいるが、声をかければつかまらずに寝返りできる。
- 左側への寝返りは肩の痛みにより困難だが、右側へは問題なくできる。
- 腰痛があるものの、つかまらずに寝返りができた。
2.何かにつかまればできる
- ベッド柵につかまり、左右の寝返りができた。
- 調査時は体調が悪く、寝返りの動作が行えなかった。家族より日頃はベッド柵につかまり寝返りができているとのこと。日頃の状況から「何かにつかまればできる」を選択。
- 自分の膝の裏につかまりなんとか寝返りできた。
- 右側の寝返りはできなかったが、左側はサイドレールにつかまりできた。
3.できない
- 自力での寝返りができず、介護者が定期的に体位変換をしている。
- 円背により日頃から側臥位で寝ている。向きを変える時は一度起き上がってから体の方向を変えている。
- 認知症があり、仰臥位のまま自分で動くことがない。声かけをしても理解できず寝返りをしない。介護者が2時間おきに体位変換をしている。
- 調査時はベッド柵につかまり何とか寝返りできたが、家族からは日頃は介助なしでは寝返りできないとのこと。日頃の状況から「できない」を選択。
1-4 起き上がり(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 日頃のやり方で起き上がってもらえますか。
- 日頃からベッド柵につかまり起き上がっていますか。
- (調査時に確認ができない場合)日頃の寝返りの状況を教えてください。
特記事項の例文(記入例)
1.つかまらないでできる
- 習慣的に布団に手をついて起き上がるが、つかまらなくてもできる能力はある。
- 習慣的にベッド柵につかまり起きるが、つかまらなくてもできる能力はある。
- 動作緩慢だが、つかまらずに起き上がりできた。
- 常時、30度程度のギャッジアップをしており、その状態からつかまらずに起き上がりできた。
- 認知症により自分から起き上がることはないが、介護者が声かけをすれば、つかまらずに起き上がりできる。
2.何かにつかまればできる
- 側臥位からサイドレールにしっかりつかまり起き上がる。
- 布団に肘をついて支えにしながら起き上がる。
- 自分の膝の裏をつかんで、反動をつけて起き上がる。
3.できない
- 自力での起き上がりはできず、介護者が上半身を抱えて起こしている。
- つかまっても起き上がりはできないが、自分で介護ベッドをギャッジアップして起き上がる。
- 自力での起き上がりはできない。介護者が介護ベッドをギャッジアップして起き上がる。
1-5 座位保持(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 背もたれから離れて10分程度座っていることはできますか。
- ベッドに腰掛けた状態(端座位)で10分程度座っていることはできますか。
- 食事の時は10分程度背もたれから離れていますか。
- ベッド柵につかまった状態で10分程度座っていることはできますか。
- お風呂の時は背もたれのない椅子に10分程度座っていますか。
長座位や端座位など、座り方は問いません。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 調査中、背もたれから離れた状態で10分以上の座位保持できた。
- 調査中、10分以上の端座位保持ができた。
- 調査時は背もたれに寄りかかっていたが、食事時は10分以上背もたれから離れて座位保持できている。
- 調査中は背もたれに寄りかかっていたが、入浴時は背もたれのないシャワーチェアで10分程度の座位保持ができている。
- 調査時、畳で10分以上、胡坐をかいて座位保持できた。
2.自分の手で支えればできる
- 右手でベッド柵につかまっていれば、10分程度の端座位保持ができる。
- 調査時、片方の手を畳について10分程度の正座ができた。
- 両肘をテーブルについて支えにすれば10分以上の座位保持可能。
- 両膝に手をついて支えにしながら10分以上の座位保持できた。
3.支えてもらえばできる
- 背もたれのない状態では、5分程度で上体が左右に崩れてしまう。
- 背もたれがないと上体が後ろに傾いてしまう。
- 介護ベッドをギャッジアップして10分間の長座位保持可能。
- 背もたれやクッションに寄り掛かれば、10分間の座位保持可能。
4.できない
- 起立性低血圧によりめまいが起きやすいため、医師から座位になることを禁止されている。
- 1ヶ月以上にわたり水平な体位しかとったことがない。
- 屈曲拘縮により体が丸まっているため、座位がとれない。
1-6 両足での立位保持(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- どこにもつかまらずに10秒程度立っていることはできますか。
- 立っているのに杖などの支えが必要ですか。
- (調査時に確認ができない場合)日頃、立っている時の状況を教えてください。
拘縮で片足が床に付かない場合は、片足での立位保持で判断します。
特記事項の例文(記入例)
1.支えなしでできる
- 右膝下の欠損があるが、義足を使用してつかまらずに10秒間の立位保持可能。
- 右半身の麻痺があるが、左足でバランスをとりながら10秒間の立位保持可能。
- 両下肢の筋力低下があるが、10秒程度はつかまらずに立位保持可能。
2.何か支えがあればできる
- 常に片手はどこかにつかまることで10秒間の立位保持可能。
- 両手で手すりにつかまることで10秒間の立位保持可能。
- 極度の円背により、自分の両膝に手をついて支えにしながら立位保持可能。
3.できない
- 介護者が腋窩を支えた状態で立位保持可能。
- 介護者が上半身をしっかりと抱えた状態で立位保持可能。
- 両手で手すりにつかまっても立位保持できず、常に介護者が体の一部を支える必要がある。
- 常時、寝たきりの状態のため、立位保持ができない。
1-7 歩行(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- つかまらずに家の中を歩けますか。
- (5m程先を指し)あそこまで歩いてもらえますか。
- リハビリ時以外に普段の生活の中で歩くことはありますか。
補装具を使用している場合、使用している状況で判断します。
特記事項の例文(記入例)
1.つかまらないでできる
- 習慣的に手すりにつかまり歩行するが、5m程度はつかまらなくても歩行できる能力がある。
- 5m程度はゆっくりとつかまらずに歩行可能。
- 自宅内は家具などにつかまりながら歩行しているが、屋外は杖などを使用せず5m以上の歩行ができている。
- 視力障害のため、場所の確認で家具などにつかまっているが、体を支える目的ではないため「つかまらないでできる」を選択。
- 左半身の麻痺により左足の運びが悪く、歩行動作はぎこちないが、5m程度はつかまらずに歩行可能。日頃は安全のため伝い歩きをしている。
2.何かにつかまればできる
- 片方の腕は杖使用。もう一方の腕は介護者が支えることで5m程の歩行可能。
- 右半身の麻痺により歩行不安定。左手で壁等につかまりながら5m程度の歩行が可能。
- 下肢筋力低下があるが、伝い歩きにて5m程度の歩行ができた。
- 腰が曲がっているため、日頃から自分の膝に手をついて室内(5m程度)の歩行をしている。
- 調査時、体調が優れず動作確認できなかった。日頃の状況について家族より「壁や家具につかまりながら5m程度は歩いている」とのこと。より頻回な状況から「何かにつかまればできる」を選択。
3.できない
- 右半身の麻痺により、一歩ずつ立ち止まりながら歩行している。連続して5mを歩行することは困難なため「できない」を選択。
- リハビリの歩行訓練時には、平行棒の間を5m程度歩行しているが、転倒リスクが高いことから、日頃は車いす介助で病院内を移動している。
- 心肺機能の低下により、主治医から軽い運動を禁止されているため車いす使用している。
- 肺気腫のため在宅酸素使用しており、5m歩く途中で2回ほど休む。連続した5m歩行はできない。
- 常時寝たきりの状態で立位をとることもできない。
1-8 立ち上がり(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 椅子から立ち上がってもらえますか。
- 日頃から手すりにつかまって立ち上がっていますか。
- 立ち上がる時に毎回介助をされていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.つかまらないでできる
- 習慣的に膝に手をついて立ち上がったが、体を支える目的ではないため「つかまらないでできる」を選択。
- 調査時、椅子がなく立ち上がりの動作が確認できなかった。日頃、便座からの立ち上がりはつかまらずにできている。日頃の状況から「つかまらないでできる」を選択。
2.何かにつかまればできる
- ベッド柵と膝につかまり、支えにしながら立ち上がる。
- テーブルに両手をついて支えにしながら立ち上がる。
- 円背のため、膝に手をついて加重しながら立ち上がる。
- 肘掛けに両手をついて支えにしながらゆっくりと立ち上がる。
3.できない
- 右半身の麻痺により介護者に両脇を支えられながら立ち上がる。
- 関節リウマチの影響により膝関節の痛みが強く、介護者に支えられないと立ち上がりができない。
- 常時寝たきりの状態であり、立ち上がりの動作をすることもない。
1-9 片足での立位(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- その場でゆっくりと足踏みをすることはできますか。
- 1秒程度、片足を上げることはできますか。
- テーブルにつかまると片足を上げることはできますか。
「両足での立位保持」から続けて行うとスムーズに確認できます。
特記事項の例文(記入例)
1.支えなしでできる
- つかまらずにゆっくりと左右の足踏み(1秒程度)ができた。
- 視力障害により杖を持って片足立ちをしたが、体を支える目的ではないため「支えなしでできる」を選択。
- 下肢筋力の低下により安定性を欠くが、左右ともに1秒程度の片足立ちができた。
- 転倒への不安から壁に手をついて片足立ちをしたが、つかまらずに歩行ができていることから「支えなしでできる」と判断。
- 右半身の麻痺により右足での片足立ちはできなかったが、左足での片足立ちはつかまらずにできた。
2.何か支えがあればできる
- テーブルに両手をついて支えにした状態で左右の片足立ちができた。
- 下肢筋力低下により、片手は壁につかまらないと片足立ちができない。
- 杖を支えにした状態で左右の片足立ちができた。
3.できない
- 介護者が腰を支えていないと片足立ちはできない。
- 調査時は手すりにつかまり片足立ちができたが、家族より、日頃は腕を支えていないと片足での立位はできないとのこと。日頃の状況から「できない」を選択。
- 介護者が体を支えた状態でも片足を上げることはできない。
- 両下肢の麻痺により、車いすでの生活。立位がとれないため、片足立ちも「できない」を選択。
1-10 洗身(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 入浴時は体は自分で洗えていますか。
- 背中や足先も自分で洗えていますか。
- 過去1週間で入浴はしていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 自宅にて一人で入浴。一連の行為が自立している。
- デイサービスにて入浴。浴室内の移動は介護者が見守りを行っているが、洗身は自立している。
- 右半身の麻痺があるが、なんとか自分で洗身できている。
2.一部介助
- 上半身の前面と陰部は自分で洗身できるが、他は手が届かずに介助されている。
- 腰痛により、足先は手が届かずに介助されている。
- 認知症により洗い方がわからないため、介助者が洗身の仕方を声掛けしている。
- 独居のため一人で入浴しているが、肩関節の拘縮により背中は洗えず汗疹ができている。介護者不在による不適切な状況と判断し、適切な介助方法として「一部介助」(背中の洗身介助)を選択。
3.全介助
- 両手の握力低下により洗身ができず、介護者が全身の洗身を行っている。
- デイサービスにて週2回入浴。認知症によりタオルを渡して声かけをしても洗身ができないため、介護者が全介助している。
- 本人の手の届く範囲で洗身しているが、握力低下により十分に洗えていないため、介護者がもう一度全身を洗い直している。
- 週1回、訪問入浴を利用しており、介護者が全身の洗身を行っている。
4.行っていない
- 入院後より医師の指示により入浴を禁止されている。看護師が全身の清拭を行っている。
- 自宅に浴室がないため、自分で清拭をしている。
- 本人の意思により入浴はせずに自分で濡れタオルで身体を拭いている。特に不衛生な状況ではない。
1-11 つめ切り(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- つめ切りは自分で行っていますか。
- 手足のつめ切りともに自分でできていますか。
- 足の爪は誰が切っていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 足のつめは手が届きにくいがなんとか自分でできている。
- 手はつめ切りを使用。足はやすりを使用して介助なしでできている。
- 両下肢を切断しており、足のつめ切りは行わない。手のつめ切りは自立している。
- 自助具の切りやすいつめ切りと、つめやすりを使用して自立している。
2.一部介助
- 左半身の麻痺により、右手のつめ切りは家族に介助されている。
- 腰痛により足先まで手が届かないため、足のつめ切りは介助されている。
- 手のつめ切りは自立。足の爪は硬くて自分で切れない、デイサービス利用時に介助されている。
3.全介助
- パーキンソン病による振戦があり、つめ切りができないため、手足ともに介助されている。
- 握力の低下によりつめ切りができず、全介助されている。
- 四肢の全指を切断しており、つめがないが四肢の切断面の清拭が全介助されているため、類似の行為で代替して評価し「全介助」を選択。
- 認知症によりつめ切りの使い方がわからず、家族が全介助している。
1-12 視力(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- (調査対象者から1m以上離れた距離で視力確認表を持ち)この絵が見えますか。
- (視力確認表を近づけ)この距離だと見ることができますか。
- 目が見えにくくて生活に困ることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.普通(日常生活に支障がない)
- 日頃からメガネを使用しており、日常生活に支障はない。
- 新聞も支障なく読めている。
- 両目の白内障の手術をしており、日常生活に支障はない。
2.約 1m離れた視力確認表の図が見える
- 1m先の視力確認表の図が見えたが、強度の視力矯正の眼鏡を使用しており、その眼鏡を使用しなければほとんど見えないため、外出には介護者の付き添いが必要。
- 1m先の視力確認表の図が見えたが、視野狭窄があり、食事の片側を残すなどの支障がある。
- 認知症により意思の疎通が難しく、視力確認表での確認はできなかった。日頃は1mほど離れた距離で家族を追視しているため、1m先は見えると判断。
- 1mほどの距離で視力確認表が見えた。日頃、テレビが見えにくくなっている。
3.目の前に置いた視力確認表の図が見える
- 認知症により視力確認表での確認はできなかったが、食事介助で食べ物を口まで近づけると口を開くため、目の前は見えていると判断。
- 糖尿病性網膜症により、視力確認表を目の前まで近づけないと見えない。
- 目の前の物しか見えないため、一人での外出ができない。
4.ほとんど見えない
- 緑内障により失明したため、目の前の視力確認表も見えない。
- 先天性の視力障害により、視力確認表も全く見えない。外出には家族の付き添いが必要。
5.見えているのか判断不能
- 認知症により意思疎通ができず、見えているのか判断できない。
- 視力確認表を目の前に置くが返答が得られず、見えているか判断できない。
1-13 聴力(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- これから質問をさせてもらいますが、私の声はこれくらいで聞こえますか。
- 日頃からこれくらいの普通の声で聞こえていますか。
- 普段から補聴器を使用していますか。
調査を始める前に自分の話す声の大きさを確認することで「聴力」の聞き取りもできます。
特記事項の例文(記入例)
1.普通
- 日常生活における会話において支障がなく、普通の声で聞き取り可能。
- 調査中、普通の声で質問することで聞き取りできた。
- 日頃から耳鳴りがするとのことだが、聴力は保たれており普通の声で聞き取れる。
- 日常的に補聴器等を使用しており、普通の声で聞き取り可能。
- 普通の会話では問題がないが、電話での会話は聞き取りにくい。
2.普通の声がやっと聞き取れる
- 日頃から補聴器を使用しているが、その状態でも少し大きめの声で話さないと聞こえない。
- 調査中、普通の声で話すと聞き返されるため、少し大きめの声で話した。
- 認知症により意思疎通は困難だが、少し大きめの声で話しかけると反応を示すことがある。
3.かなり大きな声なら何とか聞き取れる
- 目の前でかなり大きな声で話しかけることで聞き取りできた。電話の声はほとんど聞こえない。
- 補聴器を使用しても大声で話さないと聞こえない。自宅のインターホンにも気づかないことが多い。
- 耳元でかなり大声で話すことで聞き取りできた。
4.ほとんど聞こえない
- 大声で話しかけても聞こえないため、筆談で意思疎通している。
5.聞こえているのか判断不能
- 認知症により意思疎通ができず、問いかけに対しても反応がない。
第2群 生活機能
「第 2 群 生活機能」は、移乗、食事摂取、洗顔等の日常生活動作の機能や、外出頻度の生活活動
に関して調査を行う項目の群です。
評価軸は3軸ありますが、「能力」を評価するのは、えん下のみです。
「有無」を評価するのは、外出頻度だけであり、これ以外は、すべて「介助」を評価軸とします。
そのため、2群の評価は、介助の実態を評価した項目群と考えられます。
評価軸 | ①能力 | ②介助 | ③有無 |
---|---|---|---|
2-1 移乗 | ◯ | ||
2-2 移動 | ◯ | ||
2-3 えん下 | ◯ | ||
2-4 食事摂取 | ◯ | ||
2-5 排尿 | ◯ | ||
2-6 排便 | ◯ | ||
2-7 口腔清潔 | ◯ | ||
2-8 洗顔 | ◯ | ||
2-9 整髪 | ◯ | ||
2-10 上衣の着脱 | ◯ | ||
2-11 ズボンの着脱 | ◯ | ||
2-12 外出頻度 | ◯ |
2-1 移乗(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- ベッドから車いすに乗り移るときは、どのようにしていますか。
- つかまりながら一人で車いすに乗り移れていますか。
- 乗り移りのときは、毎回介助(又は見守り)されていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- ベッド柵につかまりながら一人で車いすに移乗している。
- 一人でベッドからポータブルトイレへの移乗ができている。
- 日中は、ベッドから車いすへの移乗は介助なしで行っている。夜間のみ、ポータブルトイレを使用(2 回/日)しており、転倒防止等の理由から介護者が腰を支えて移乗している。より頻回に見られる状況(日中の移乗)から「介助されていない」を選択。
2.見守り等
- 独居のため一人でベッドからポータブルトイレに移乗しているが、頻回に転倒することがあり不適切な状況と判断。常に移乗できないわけではないとのヘルパーの話しもあり「見守り等」を選択。
- ベッド柵につかまりながら自分で移乗しているが、動作不安定。転倒がないように家族が毎回見守っている。
- 移乗時にバランスを崩して転倒しそうになるため、家族が必ず見守りをしている。
3.一部介助
- 通常はベッドから車いすへ介護者が身体を支える介助を行っているが、体調の良いときは介助なしで移乗することもある。より頻回に見られる状況から「一部介助」を選択。
- 下肢筋力低下により動作不安定なため、介護者が腰を支える介助をしている。
- 介護者が腰を支えた状態で、自分で臀部を動かし移乗している。
- 独居のため一人で移乗しているが、週に1回は転倒することがあり不適切な状況と判断。適切な介助方法として介護者が腰などを支える「一部介助」を選択。
4.全介助
- 両下肢に力が入らないため、介護者が上半身を抱えて車いすに移乗している。
- 寝たきりにより車いすなどへの移乗が行われていない。体位交換等のでん部を動かす移乗行為について介助が行われている。
- 医学的な理由から、一週間以上に渡り「移乗」の機会が全くない。四肢ともに筋力の低下が顕著であり、ストレッチャーからの移乗には「全介助」が必要と判断。
2-2 移動(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 家の中は一人で歩けていますか。
- 一人でトイレまで歩いていますか。
- 車いすで移動するときは、毎回介助されていますか。
- 自分で車いすを操作して移動していますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 自宅内、屋外の移動ともに自立している。電車がバス等の公共交通機関の利用も一人でできる。
- 自宅内は伝い歩きにて一人で移動。屋外の移動時は杖を使用している。
- 自宅内の移動は自立しているが、屋外移動時は介護者の付き添いが必要。
2.見守り等
- 歩行時のふらつきがあるため、転倒しないよう介護者が毎回見守りをしている。
- 認知症によりトイレや食堂などの目的地がわからないため、介護者が声かけし誘導している。
- 場所の理解ができず、排泄、食堂、入浴等、生活のすべての場面で手を引いて案内する必要がある。
- 一人で移動をしているが、週に1~2回転倒している。介護者の妻も足腰が弱く十分な介助を行うことができないことから、不適切な状況にあると判断。介護者がすぐに身体を支えられるよう「見守り等」を選択。
3.一部介助
- 転倒防止のため、介護者の両手引きの介助にて移動している。
- 居室内のトイレまでの移動(1日6回程度)は自立。食堂(1日3回)や浴室(週2回)までの移動は介護者が車いすを押して移動している。
- 片方の腕は杖使用。もう一方の腕は介護者が支えながら移動している。屋外は車いす介助を行っている。
4.全介助
- 車いす使用にて移動。自走することもあるが、介護者が車いすを押して移動する頻度の方が多い。
- 車いす介助にて移動。自走はできない。
- 医学的な理由から、一週間以上に渡り「移動」の機会が全くない。四肢ともに筋力の低下が顕著であり、車椅子自走も不可能と判断し「全介助」を選択。
2-3 えん下(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 食事をしている時にむせることはありますか。
- 食べ物にトロミをつける等の工夫をしていますか。
- 食事の形状で工夫をしていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 汁物の時にむせることが時々あるが、日頃は問題なく飲み込んでいる。
- 普通食ではむせるが、毎食時トロミをつけているため、むせずに自然に飲み込めている。
2.見守り等
- トロミ食であっても毎日のようにむせがあり、一度むせだすと咳き込んで止まらない。
- 半年前に誤嚥性肺炎で入院している。トロミ食を提供しているが、1日1回は食事中にむせている。
- 毎日のようにむせるため、食事中は介護者がゆっくり飲み込むよう声かけをしている。
- 口の中に食べ物をため込んでしまうため、飲み込みの声かけが必要。
- 食事の度に何度もひどくむせ込み誤嚥の心配がある。
3.できない
- 中心静脈栄養を行っているため、経口摂取はしていない。
- えん下困難なため、胃ろうを増設しており、家族が流動食の注入を行う。
- 中心静脈栄養(IVH)が行われており、経口摂取はしていない。
2-4 食事摂取(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 自分で食事はできていますか。
- 食事の時に介助されることはありますか。
- 箸を使って食事はできていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 自助具を使用して自力摂取できている。
- 関節リウマチにより手指が動かしにくいため、箸は使えず。スプーンを使用しての自力摂取はできている。
- 左半身麻痺により左手で食器は持てないが、右手で箸やスプーン等を使用して自力摂取できている。
- 通常は介助なしで行っている。毎日朝食の際は、最初の数口は介護者が口まで運んでいる。頻度から「介助されていない」を選択。
- 自力摂取可能だが、手指の痛みにより箸が使いにくくなっている。
2.見守り等
- 目の前の物しか食べないので介護者が皿の置き換え、声かけを行っている。
- 自分で箸を持って摂取できるが、介護者の声かけがないと手が動かない。
3.一部介助
- 毎食、半分程度は自力摂取できるが、その後は手が止まるため、介護者が口まで運ぶ介助をしている。
- 視力障害により食器がほとんど見えないため、介護者が付き添って食べやすくするため、お皿の中の食べ物を集めたりしている。
- 自力摂取できるが、妻が食卓でおかずを細かくする介助を行っている。
4.全介助
- 声かけをしても自分から摂取することがないため、毎食、介護者が口まで運ぶ介助をしている。
- 中心静脈栄養のみで、経口での食事は全く摂っていない。
2-5 排尿(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- トイレ内の動作は自分で行えていますか。
- リハビリパンツや尿とりパッドを使っていますか。
- ズボンや下着の上げ下ろしは自分でできていますか。
- リハビリパンツや尿とりパッドが汚れた場合、自分で交換していますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- トイレ内で一連の行為自立している。トイレが間に合わずに尿失禁することがあるが、自分で尿とりパッドの交換ができている。
- 片手は手すりにつかまり、もう一方の片手でズボンの上げ下ろしを行う。陰部の拭き取り、トイレの水洗も自立している。
- 人工透析により排尿が全くない。介助自体が発生していないため、「介助されていない」を選択。
- 自己導尿しており、一連の行為を自分で行っている。
- リハビリパンツを使用しているが、トイレで一連の行為ができている。月に数度失禁があり、リハビリパンツの後片付けは娘が行っている。頻度より「介助されていない」を選択。
- 日中は自室にあるトイレを使用しており、一連の行為は自立している。夜間は転倒の危険があるため、テープ式オムツを使用、職員が定時でオムツ交換を行っている。日中は5~6回、夜間は1~2回排尿あり。より頻回な状況から「介助されていない」を選択。
2.見守り等
- 独居。下着への尿失禁がある。本人は「自分でトイレに行っている」と話したが、尿臭が強く、不適切な状況にあると判断。身体機能に制限はないことから「見守り等」を選択。
- 独居のため1日6回トイレで一人で行うが、ズボン・パンツの引き上げが不十分な ことが多い。声をかければ自分で行うことはできる。
- 認知症によりトイレ内での一連の行為がわからないため、介護者の声かけが必要。
- トイレ内での行為は自立しているが、認知症によりトイレに行くタイミングを自分で把握できないため、定時の声かけを行っている。
認知症の方をトイレに誘導するために声かけする場合は「見守り等」
になります。
3.一部介助
- トイレ使用。関節リウマチがあるため、パッドの交換や清拭が自分でできず毎回家族が介助している。ズボンの上げ下げは何とか自分で行っている。
- 介助なく行っているが、床に尿が飛び散る量が多く、家族は気づいたときに 1 日 1 回程度トイ レの床を拭いていることから「一部介助」を選択。
- ベッドサイドに置いてある尿器を自分で使用している。排尿直後の尿器の掃除は家族が行っている。
4.全介助
- ベッド上でおむつ交換。寝返りなどの協力動作はあるが、一連の行為を介助されている。
- 尿カテーテルを使用しており、一連の行為を全介助されている。
- トイレ使用しているが、ズボンの上げ下げ、陰部の拭き取り、トイレの水洗等、全ての行為が介助されている。
2-6 排便(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- トイレ内の動作は自分で行えていますか。
- リハビリパンツや尿とりパッドを使っていますか。
- ズボンや下着の上げ下ろしは自分でできていますか。
- リハビリパンツや尿とりパッドが汚れた場合、自分で交換していますか。
失禁した場合の衣服の更衣に関する介助は、他の着脱行為ともに「2-10 上衣の着脱」「2-11 ズボンの着脱」で評価します。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- トイレまでの移動は介助が行われているが、トイレ内の一連の行為は介助が行われていない。
- 通常は、トイレへの移動以外は介助なしに行っている。下剤を数日毎に服用。下剤服用後はポータブルトイレを使用。「ズボンの上げ下げ」の介助が行われている。より頻回な状況から「介助されていない」を選択。
- 人工肛門を造設。自分でストーマ袋の準備、交換、後始末まで行っている。
2.見守り等
- トイレ内の一連の行為に介助は行われていないが、認知症のため、トイレに行くタイミングがわからない。定期的に声かけを行っていることから「見守り等」を選択。
- 一連の行為は自分で行うが、動作中の転倒予防のため家族が見守っている。
- 認知症によりトイレ内での一連の行為がわからないため、介護者の声かけが必要。
3.一部介助
- 自分でトイレにて排便をしているとのことだが、調査時にズボンに便が付いていた事を確認。独居のため介護者がおらず、不適切な状況にあると判断。排便後の始末やズボンの上げ下げの介助を行うことが適切と考え「一部介助」を選択。
- 人工肛門で、ストーマ袋の準備、片付けは介護者がしているが、ストーマ袋の交換は自分でできる。
- 本人は手すりにつかまり立位保持し、介護者がズボンの上げ下ろしを行う。肛門の拭き取りは自立。トイレの水洗は介助されている。
- ポータブルトイレを使用。ズボンの上げ下ろしや肛門の拭き取りは自立。排便直後のポータブルトイレの掃除は介助されている。
4.全介助
- 週 1 回、看護師が摘便を行う。ズボンの上げ下げ、肛門の清拭に介助が行われている。
- 車いすでトイレまで移動し、介助にて便座へ移乗。ズボンの上げ下げ、肛門の拭き取り、水洗等の行為が全て介助されている。
- ベッド上でオムツ交換。一連の行為を全介助されている。寝返りなどの協力動作はある。
- 人工肛門を造設している。パウチの交換は介護者が毎日行っている。
2-7 口腔清潔(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 歯磨きは自分でしていますか。
- 入れ歯の管理は自分で行っていますか。
- 自分でコップを持ってすすぎができますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 自助具の歯ブラシと、持ち易いコップを使用し介助なしで行っているため「介助されていない」を選択。
- 部分義歯使用。義歯の洗浄、保管や残存歯の歯磨き、すすぎ等、自立している。
- 自歯も義歯もなく食後にうがいやお茶を飲むことですませているが、不衛生な状態ではない。
2.一部介助
- 介護者が歯ブラシやうがい用の水を用意すれば、自分で歯磨き、すすぎができる。
- 総義歯。義歯の付け外しやすすぎはできる。義歯の洗浄や保管は介護者が行う。
- 妻が亡くなってから歯磨きの習慣がなくなった。現在、独居のため介助が行われていないが、口臭も強く、不適切な状況にあると判断。初期の認知症の周辺症状も見られることから「一部介助」が適切と判断。
- 本人が歯磨きをしているが、磨き残しがあるため、介護者が毎回磨き直している。すすぎは自分で行う。
- 自宅では歯磨きをしないが、週3回のデイサービス通所時に職員が声かけ、準備をすると自分で行う。
3.全介助
- 一週間以上に渡り歯磨きなどの口腔のケアが行われていないため、歯ぐきが腫れており、不適切な状況にあると判断。上肢拘縮の状況から「一部介助」では困難と判断し「全介助」を選択。
- 介護者が歯磨きを介助し、口元までコップを運ぶ。本人は口をすすぎ吐き出す行為のみできる。
- 寝たきりのため、家族が口腔清潔に関する介助を全て行っている。
2-8 洗顔(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 洗面所で洗顔をしていますか。
- 蒸しタオルを受け取れば、自分で顔を拭けますか。
- 洗顔後に衣類が濡れることはないですか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 手指の麻痺等があり、自助具のタオル(洗い用と拭き用)を使用して、介助なしで行っている。
- 自宅では洗顔をしないが、週2回のデイサービスでの入浴時に自分で洗顔している。不衛生な状態ではない。
- 洗面所での洗顔はしていないが、毎朝、自分でウェットティッシュを使用して顔を拭いている。
- 洗面所にある椅子に座った状態で洗顔している。
- 洗面所で両手で洗顔をしているが、左手は痺れにより水が上手く掬えない。
2.一部介助
- 介護者が蒸しタオルを用意して、自分で顔を拭いている。
- 過去 1 週間にわたり、洗顔していない。目脂がたまっており、不適切な状況にあると判断。洗濯物の片付けは週に数回訪問する娘の介助を受けていることから、タオルの準備など適切にされていなかったため「一部介助」が必要と判断。
- 認知症により洗顔の行為がわからないため、介護者がそばで声かけする必要がある。
- 介護者が蒸しタオルを手渡すと、自分で顔を拭いている。目やになどは取れていないため、目の周りなど不十分な所を拭いている。
- 洗面所にて自分で洗顔しているが、衣類の袖を濡らしてしまうことがあるため、毎回家族が確認をしている。
3.全介助
- 介護者が蒸しタオルを手渡すが、自分ではなでる程度しか拭けないため、介護者が顔全体を拭き直している。
- 認知症により、蒸しタオルを渡して声かけをしても理解ができないため、介護者が顔全体を拭いている。
- 寝たきりのため、介護者が蒸しタオルで顔を拭いている。
2-9 整髪(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- ブラシを使って自分で髪をとかしていますか。
- 自分でブラシの用意はできますか。
- (頭髪がない場合または短髪で整髪の必要がない場合)入浴後に自分で頭を拭いていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 整髪ブラシは使わず、手ぐしのみで整髪できている。
- サイドテーブルに置かれている整髪ブラシを自分で手にして、ベッド上で整髪できている。
- 右半身の麻痺があるが、左手でブラシを使い整髪できている。
- 頭髪が短いため、整髪の必要はない。入浴後、タオルで頭を拭く行為は自立している。
2.一部介助
- 介護者が整髪ブラシを本人に手渡しすれば、自分で整髪できる。
- 認知症により整髪ブラシを渡しても使い方がわからないため、介護者の声かけを必要とする。
3.全介助
- 頭髪がなく「整髪」を全く行っていないが、寝たきり状態で、毎日頭部の汗を拭き取るなどの介助が行われている。類似の行為で代替して評価し「全介助」を選択。
- 本人が手元にあるブラシを使用しているが、きれいに整髪できないため、介助者が全体をとかし直している。
2-10 上衣の着脱(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 上衣を一人で脱ぎ着できますか。
- 上衣の脱ぎ着で手伝ってもらうことはありますか。
- 上衣の脱ぎ着で苦労していることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 普通の上衣の着脱を自力で行うことはできないが、着脱しやすい上衣を使用することで介助なしで行えている。
- 家族が上衣の用意をすれば、自分で着脱できている。
- 右半身の軽度麻痺により、着脱に時間はかかるが介助なしで行えている。
2.見守り等
- 自分で脱ぎ着しているが、ヘルパー訪問時には裏返しのまま着るなど、おかしな様子がみられたことから、不適切な状況にあると判断。着脱行為に介助は必要ないが、見守りを行うのが適切と考え「見守り等」を選択する。
- 上衣の着脱は介助なしで行っているが、着る順番が分からないため、一枚ずつ声かけしながら衣服を用意して手渡している。
3.一部介助
- 介護者が上着を構えると自ら袖に腕を通す協力動作がある。
- 右半身の麻痺があるため、スムーズに着られるよう介護者が袖を持つ介助をしている。
4.全介助
- 袖を通す際に首や体を揺するようにして動かすことがあるが、介護者が着脱全体の介助を行っていることから「全介助」を選択。
- 寝たきりの状態により、協力動作もなくベッド上で全介助されている。
- 認知症により声かけをしても理解が得られないため、介護者が全介助にて着脱している。
2-11 ズボンの着脱(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- ズボンを一人で脱ぎ着できますか。
- ズボンの脱ぎ着で手伝ってもらうことはありますか。
- ズボンの脱ぎ着で苦労していることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 着脱しやすいズボンを使用しており、自力で介助なしで行っている。
- 浴衣タイプの寝巻きを着ているため、ズボンを着脱する機会がないことからパンツの着脱の行為で代替して評価。トイレ時も入浴時も介助されていないことから「介助されていない」を選択。
- 左半身の麻痺あり、着脱に時間がかかるが介助は行われていない。
- ズボンを履く習慣はないが、スカートの着脱は自立している。
2.見守り等
- ズボンの着脱は介助なしで行っているが、着る順番が分からないため、一枚ずつ声かけしながら衣服を用意して手渡している。
3.一部介助
- 介護者がズボンを構えると自ら脚を通すが、引き上げとボタンを留める動作は介助を行っている。
- 自分でズボンの着脱をしているが、ヘルパー訪問時にはボタンが留められておらず、ずり落ちていることがあることから、不適切な状況と判断。ズボンに足を通す行為に介助は必要ないが、指先の動きが悪くボタンを留める行為ができないため「一部介助」を選択。
4.全介助
- ズボンを引き上げようとする際に足をもぞもぞと動かすことがあるが、足を通す、引き上げるなどの一連の行為全てに介助が行われている。
2-12 外出頻度(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 買い物や散歩などで定期的に外出することはありますか。
- 通院の頻度を教えてください。
- デイサービス以外で外出することはありますか。
- 散歩ではどの位の時間、外出していますか。
特記事項の例文(記入例)
1.週1回以上
- 週3回、デイサービスに通所している。月1回、家族の付き添いにて通院している。
- 毎日30分程度、自宅周辺を散歩している。
- 週3回程度、電動車いすを使用して1人で外出できている。
- 週1回、家族の車いす介助にて買い物に行く。
2.月1回以上
- 家族の車で月1回通院している。それ以外で外出の機会はない。
- 月2~3回、家族が車いすを押して近所へ買い物に行く。
3.月1回未満
- 週 1 回、自宅の庭で30分以上、花の手入れをすることがあるが、外出することはないため「月 1 回未満」を選択。
- 2ヶ月に1回、家族の車にて通院している。それ以外では外出することはない。
- 寝たきりのため半年以上外出していない。
- 調査の3週間前から入院中のため、外出はしていない。
第3群 認知機能
「第 3 群 認知機能」は、意思の伝達等の意思疎通や、短期記憶、また場所の理解、徘徊等の認知
機能に関して調査を行う項目の群です。
この群の評価軸は、「徘徊」、「外出して戻れない」を除き、すべて「能力」による評価となります。
評価軸 | ①能力 | ②介助 | ③有無 |
---|---|---|---|
3-1 意思の伝達 | ◯ | ||
3-2 毎日の日課を理解 | ◯ | ||
3-3 生年月日や年齢を言う | ◯ | ||
3-4 短期記憶 | ◯ | ||
3-5 自分の名前を言う | ◯ | ||
3-6 今の季節を理解する | ◯ | ||
3-7 場所の理解 | ◯ | ||
3-8 徘徊 | ◯ | ||
3-9 外出すると戻れない | ◯ |
3-1 意思の伝達(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 日頃から自分の意思を家族の方に伝えることはできますか。
- 身振り等で自分の意思を常に伝えることができますか。
- 普段、「腹が減った」「何か食べたい」といった簡単な意思伝達はできますか。
- 問いかけに対しては、意思を伝えることはできますか。
特記事項の例文(記入例)
1.調査対象者が意思を他者に伝達できる
- 常時、誰にでも意思の伝達ができる。
- 失語症があるが、身振りにより意思の伝達ができている。
- 受け答えには時間がかかるが、意思伝達の能力は保たれている。
- 認知症で伝達する内容は間違っているが、意思伝達の能力は保たれている。
- 自発的な意思伝達は少ないが、問いかけに対しては常に意思伝達できている。
2.ときどき伝達できる
- 日常的な痛みや空腹は伝えられるが、細かな感情は伝えられない。
- 調査時は何を質問しても「大丈夫」と答えるだけだったが、日頃は家族等の問いかけに答えられる時や、言葉が上手く出ない時もあるため「ときどき伝達できる」と判断。
- 家族等の介護者に対して意思の伝達ができるが、内容や状況等によってはできる時とできない時がある。
- 手話で特定の人に伝達できるが、その人が不在の場合は伝えられない。
3.ほとんど伝達できない
- 重度の認知症があり、「痛い」「腹が減った」「何か食べたい」等、限定された内容のみ意思の伝達ができる。
- 呼びかけに対して手を握り返すことはあるが、言葉では伝えられない。
4.できない
- 重度の認知症により、問いかけに対しても全く反応がない。
3-2 毎日の日課を理解(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 朝は何時に起きていますか。
- 朝食(昼食、夕食)は何時に食べていますか。
- 就寝の時間を教えてください。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 週2回のデイサービスの利用日は覚えていないが、起床、食事、就寝等の日課は答えられた。
- 週2回のヘルパーの訪問時間も理解できている。
- 調査当日の予定を答えることができたため、「できる」を選択。
2.できない
- 起床、食事、就寝の時間を質問するが、全て「分からない」と返答した。
- 重度の認知症により質問をしても反応がない。
3-3 生年月日や年齢を言う(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 誕生日を教えてください。
- お年は何歳ですか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 生年月日、年齢ともに正答できた。
- 実際の生年月日と2日間のずれがあった。年齢は答えられなかった。
- 生年月日は答えられず。年齢は80歳(実際は82歳)と答えた。2歳以内の誤差のため「できる」を選択。
2.できない
- 干支と月だけは答えることができたが、年齢や生年月日は答えられなかった。
- 調査時は正答したが、家族より「日頃は聞いても答えられない」とのこと。日頃の状況から「できない」を選択。
- 生年月日は答えられず。年齢は70歳(実際は76歳)と答えた。
- 生年月日、年齢を質問するが、考え込んだまま答えられない。
3-4 短期記憶(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 私(調査員)が伺う直前は何をしていましたか。
- 私(調査員)が調査に伺う前はテレビは何を見ていましたか。
- (面接調査の直前の)昼食では何を食べましたか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 調査直前に「テレビで野球を見ていた」と具体的に答えることができた。
- 調査直前に昼食をとっており、メニューも正答できた。
- 調査前にデイサービスから帰宅したことを答えられた。
- 直前の行動を聞くと答えることができなかったが、家族より、日頃は短期記憶は保たれていることが多いとのこと。より頻回な状況から「できる」を選択。
2.できない
- 調査当日の昼食で何を食べたかまで答えることができたが、家族の話では、日頃は物忘れがひどく、直前のことも覚えていないことが多いとのこと。
- 直前の行動を聞くと答えることができなかった。3点確認を行うと正答したが、家族より「日頃は直前のことも忘れることが多い」とのこと。より頻回な状況から「できない」を選択。
- 調査直前にしていたことを尋ねるが、沈黙して答えられない。家族より「日頃から直前のことも忘れている」とのこと。
3-5 自分の名前を言う(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 確認のため、お名前を教えてください。
調査開始前の挨拶時に本人から名前を言ってくれれば、再度確認する必要はありません。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 調査開始前に挨拶をすると名前を答えた。
- 5秒程度考えてから、名前を言えた。
- 旧姓を答えたため「できる」を選択。
- 失語症かつ手指機能低下で文字も書けないが、身振りで名前を理解していると確認できた。
- 名字だけしか答えられず、その名字は旧姓だった。
- 認知症で名前を答えることはできなかったが、日頃、家族が本人の名前を呼ぶとしっかり反応しており「確実に理解できている」(家族)とのこと。日頃の状況から「できる」と判断。
2.できない
- 名前を尋ねるが沈黙したまま答えれず、日頃、家族が本人の名前を読んでも反応がない。
- 意識障害があり、名前が言えない。
- 調査時は正答したが、家族より「日頃は名前を聞いても答えられないことが多い」とのこと。より頻回な状況から「できない」を選択。
3-6 今の季節を理解する(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 今の季節は、春・夏・秋・冬のいつですか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 調査当日の月日、季節ともに正答。
- 調査当日の月日は答えられなかったが、季節は正答できた。
2.できない
- 調査当日の月日は答えることができるが、今の季節を答えることはできなかった。
- 調査時は正答したが、家族より「日頃は聞いても答えられないことが多い」とのこと。日頃の状況から「できない」を選択。
3-7 場所の理解(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- ここの場所はわかりますか。
- ここは病院(施設)ですか。
- ここはどなたの家ですか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる
- 病院にいることは理解しているが、病院名は答えられなかった。
2.できない
- 施設に入所していること自体を理解していない。
- 調査時は「自宅」と正答したが、家族の話では、日頃は自宅にいることが理解できず「家に帰る」との訴えを繰り返しているとのこと。日頃の状況から「できない」を選択。
- 病院に入院中だが、場所を尋ねると「自分の家です」と答えた。
3-8 徘徊(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 目的もなく歩き続けることはありますか。※立会い者に質問。
- 歩き続けることでどのような対応をしていますか。※立会い者に質問。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 2ヶ月前までは、夕方になると廊下を歩き回っていたが、服薬を変更してからは同行動はなくなった。
2.ときどきある
- 月に1~2回、目的もなく自宅内を歩き回っている。歩行状態安定しているため、見守りは必要としない。
- 月に2,3回昼夜を問わずフロアーを歩き回るため、職員が見守りをしている。
3.ある
- ベッド上の生活であるが、毎日、ベッド上を這い回っているため、「ある」を選択。ベッドからの転倒の危険性が高く、家族は常にベッドの近くにいるようにしている。
- 毎日のように目的なく室内を歩き回る。歩行不安定のため、介護者が付き添っている。
3-9 外出すると戻れない(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 一人で出かけて、家に戻れなくなることはありますか。
- 食堂から自分の部屋に戻れなくなることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 2ヶ月前に道に迷い、近所の人に助けられた。以後、家族が外出時に付き添う。
2.ときどきある
- ほぼ毎日、近所に散歩に出かけるが、月に1回度程度は、家に帰ってくることができないため、 近所の人が家まで送り届けてくれることがある。
3.ある
- ほぼ毎日、食堂や他フロアで迷い、介護職員が居室へ連れて行くことがある。
第4群 精神・行動障害
「第 4 群 精神・行動障害」は、被害的、昼夜逆転等の精神症状等や、介護に抵抗、物を壊したり、衣類を破いたりする等の行動に関して調査を行う項目の群です。
この群の評価軸は全て「有無」となり、当該行動があったか、なかったかという事実が評価の基準となります。
評価軸 | ①能力 | ②介助 | ③有無 |
---|---|---|---|
4-1 被害的 | ◯ | ||
4-2 作話 | ◯ | ||
4-3 感情が不安定 | ◯ | ||
4-4 昼夜逆転 | ◯ | ||
4-5 同じ話をする | ◯ | ||
4-6 大声をだす | ◯ | ||
4-7 介護に抵抗 | ◯ | ||
4-8 落ち着きなし | ◯ | ||
4-9 一人で出たがる | ◯ | ||
4-10 収集癖 | ◯ | ||
4-11 物や衣類を壊す | ◯ | ||
4-12 ひどい物忘れ | ◯ | ||
4-13 独り言・独り笑い | ◯ | ||
4-14 自分勝手に行動する | ◯ | ||
4-15 話がまとまらない | ◯ |
4-1 被害的(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 「物を盗られた」などの被害的な話をすることがありますか。
- 被害的な話は月に何回くらいありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 「財布がない」と日常的に言うが、被害的な話はしない。
- 半年前は「娘が財布を盗んだ」と頻繁に訴えたが、現在はない。
2.ときどきある
- 月に1回程度、家族に対して「通帳を盗られ、勝手にお金を引き出されている」との訴えがある。その都度、家族は通帳を見せて説明している。
- 月2~3回の頻度で「娘が私のご飯を作ってくれない」との訴えがあり、娘のストレスになっている。
- 月に2~3回、「食べ物に毒がある」と言い食事を拒否する。
3.ある
- 食べ物に毒が入って いると言い、食事を拒否することが週 1、2 回ある。
- 週に1~2回、訪問介護のヘルパーに「お金を盗んだ」と言う。
- 週に1回程度、「食べ物に毒がある」と言い食事を拒否する。その都度、納得させるための説明が必要。
4-2 作話(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 事実と違う話をすることがありますか。
- 事実と違う話をする頻度はどのくらいありますか。
- 事実と違う話をした時、どのように対応していますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 入所中で過去 1 か月間ではないため「ない」を選択。しかし、居室が変更になる前までは、他の入所者に「職員さんが呼んでいる」「あなたの悪口を○○さんが言ってい る」等と事実と異なることを、ほぼ毎日話していた。トラブルにいたることはなく、特別な対応は行っていない。
- 日中独居であるが、家族が帰宅後「○○さんが訪ねてきた」「集金に来た」など、事実と異なることを毎日のように話している。家族はそのたびに確認をしており、手間となっている。
2.ときどきある
- 汚れたオムツをしまいこんでいるのがわかると「赤ちゃんのオムツを捨てていく人がいる」と言うことが月に2~3回ある。
- 月に2回程度、亡くなった人が来たと話す。家族は混乱を避けるため話を合わせる。
3.ある
- 週2~3回、家族に対して「買い物は自分で行っている」と話すが、実際は家族が全ての買い物をしている。
- 毎日、長女に「窓から人が入ってくる」と事実と異なる話をする。
4-3 感情が不安定(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 急に泣いたり、笑ったりして感情が不安定になることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 昔から涙もろいが、場面に合った感情表現なので「ない」と判断。特別な対応は不要。
- 自分の思い通りにならないと怒りやすいが、家族によれば「昔からの性格」とのこと。
2.ときどきある
- 月2~3回、家族との会話の最中に突然泣き出し、しばらくおさまらないことがある。
- 月1~2回、デイサービスでのレクリエーションの最中に突然怒り出すことがあり、職員が間に入って対応している。
3.ある
- 週に1回程度、談話室などで職員と穏やかに会話していると突然怒り出して収まらなくなることがある。職員はそのたびにそばに付き添い、なだめるため手間がかかっている。
- 週に1回程度、理由もなく泣いたり笑ったりしている。特に対応はしていない。
4-4 昼夜逆転(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 夜中に起きていることで、日中に居眠りして活動ができないことはありますか。
- 昼と夜の生活が逆転して、日中の行為を夜間に行っていることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 夜間頻尿のため、夜中に 2~3 回ほどは起きることがあるが、昼夜の生活が逆転しているわけではない。
- 毎晩3、4 回ほど目が覚めるが、日中の活動には影響がない。
2.ときどきある
- 月に2,3回、夜中に起きて雨戸を開け「早く起きろ」と家族も起こす。家族は夜中であることを説明して寝かせる介助をする。
- 月に2回程度、夜中に「ご飯が食べたい」と家族を起こす。家族は夜中であることを伝えている。
3.ある
- 週に2回程度、夜中にタンス等をあけて預金通帳を探し始めることがあるため、家族は本人が寝付くまで付き添っている。
- 2週間に1回、受診に行った日は、夜間眠らず大声を出す。家族が手を握っていると安心する。
4-5 同じ話をする(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 同じ話をしつこく繰り返すことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 家族の話では、昔から同じ話をすることが多かったということであるが、場面や目的からみて不適当な行動ではない。
2.ときどきある
- 月2~3回、納得ができるまで、しつこく何回も聞くことがある。
- 月1~2回、学生時代の話を1日に繰り返し話し続けることがある。
3.ある
- 話をするときは常に「私は自律神経失調症で」から会話を始める。明らかに話している内容と無関係に同じ話をするので「ある」を選択。
- 2,3分前に話したことを忘れ、何度も繰り返し話すことが毎日あり、家族は疲弊している。
- 毎朝、デイサービスの迎え時間を家族にしつこく尋ねている。
4-6 大声をだす(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 周囲に迷惑となるような大声をだすことがありますか。
- 突然、大声をだして対応に困ることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 介護者である妻を呼ぶ際に「大声をだす」ことが多いが、元々の性格から声が大きいため場面や目的からみて不適当な行動ではない。
- 難聴のため、会話時に大きな声をだすのが習慣化している。
2.ときどきある
- 月2~3回、大声で怒鳴るのため、家族はストレスを感じている。
- 月2回程度、ベッド上で理由もなく大声をだすことがある。
3.ある
- 毎日夕方になると外に向かって大声で怒鳴り始めるので、家族は毎回なだめている。興奮して おり、落ち着くまで30分は目が離せない。
- オムツ交換の介助時に大声をだすことが毎日のようにあり、家族は疲弊している。
4-7 介護に抵抗(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 介護しようとする時に、手を振り払って抵抗されることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 毎日、夜寝る前にトイレに行くように声かけするが拒否がある。 そのまま寝てしまうため、尿失禁が週1回ほどある。
2.ときどきある
- 月2~3回、入浴の誘導時に介護者の手を振り払って抵抗することがあるため、入浴を中止している。
3.ある
- 介助のあらゆる場面で、介護者の手を払ったり介助を拒否することが、ほぼ毎日ある。他の介護者が話しかけ、気持ちを落ち着かせながら介助を行っている。
- ベッドから車いすへの移乗時にベッドにしがみついて手を離さないことが週2,3回ある。
- 毎回のオムツの交換時に反射的に陰部に手を持っていき介護の手間となっている。
4-8 落ち着きなし(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 「家に帰る」と言って落ち着きがなくなることはありますか。
- 自宅にいても「家に帰りたい」と言って落ち着かなくなることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 現在、入所中であり、毎日のように「家に帰りたい」と職員に話すが、落ち着きがない程の行動は起きていない。
2.ときどきある
- 夕方になると「家に帰る」と落ち着きなく言い続けるため、そのたびに介護者が本人に付き添って対応している。
- 月に2~3回、施設職員に「家に帰るので娘に電話をかけてほしい」と落ち着きなく訴え続けるため、職員が話を聞いて対応している。
3.ある
- 自宅で家族と同居しているが、毎日「家に帰る」と言い出し、家の中をうろうろして落ち着きがなくなる。週に2~3 回は興奮して暴れる時があり、家族がなだめている。
- 週3回のデイサービス利用時、来所直後から「家に帰りたい」と職員を見かける度に訴えている。職員はその都度、本人の話を聞いて帰り時間を伝えている。
4-9 一人で出たがる(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 一人で出たがり、目が離せないことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 以前は、目を離すとすぐに家の外に出てしまっていたが、下肢の筋力低下が進んでからは、歩行することができなくなったため、実際に外に出て行くことはない。
- 以前は、毎日のように外に出ようとしていた。フロアーの外や階段、エレベーターの前に観葉植物を置いたところ、現時点ではその行動がなくなった。
2.ときどきある
- 月2~3回の頻度で「会社に行く」と言って外に出たがるため、家族が引き止めている。
3.ある
- 毎日のように施設の入り口まで出て行き、タクシーを呼ぶように事務員に話しかけることから、「ある」を選択。居室に戻るまで5分程度は説明をしなければならず、手間となっている。
- 本人が外に出るのを止められないため、毎日、妻が本人と一緒に外を歩いている。
- 昼夜を問わず、一人で外に出ようとするので、玄関にセンサーマット(認知症老人徘徊感知機器)を設置している。
4-10 収集癖(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- いろいろなものを集めたり、無断で持って来ることはありますか。
- トイレットペーパーなどの特定の物を、引き出しの中などに溜めておくようなことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 昔からの習慣で、不要と思える箱や新聞紙を捨てないでいるが、明らかに周囲の状況に合致しない行動ではないため「ない」を選択。
2.ときどきある
- 同居家族の部屋に入り、衣類等を持ち出し、自分のタンスの中にしまうことが月に1,2回ある。
- 過去1ヶ月に1度、自宅近くの粗大ゴミ置き場から椅子を持ち帰っていた。
3.ある
- 毎日庭で石を拾い、部屋に保管している。これが部屋を占拠し、周囲に合わない行動であるため「ある」を選択。石を無断で廃棄すると本人が怒るので、家族は手を出せない。
- 食事の時、スプーンや湯のみ等を毎回ポケットやズボンの中に入れてしまうので職員がその都度確認する。
4-11 物や衣類を壊す(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 物や衣類を壊したり、破いてしまうことはありますか。
- 物や衣類を壊されないように工夫していることはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 上着をボタン式からファスナー式に変えたため、現在はボタンをちぎり捨てることはなくなった。以前は、ボタン式の上着のボタンをちぎり捨てていた。
2.ときどきある
- 食事中におわんを地面に叩きつける行動が月に3回程度ある。樹脂製なので壊れないが、食べ物が散乱し掃除が必要になる。
- 気に入らないと、周囲のものを投げる行動が月に1回程度ある。このため、家族は掃除に手間がかかる。
3.ある
- 着用しているリハビリパンツを破ってしまうことが週2~3回ある。
- 食事の時に食器を投げようとする行為が毎日のようにあるため、食事中は介護者がそばで見守りをしている。
4-12 ひどい物忘れ(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 家族の方が何らかの対応をとらなければならい物忘れはありますか。
- 食事をした直後に「まだ食事をしていない」と訴えることはありますか。
- 火の不始末などの物忘れはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 食事をしたことは覚えていないが、しつこく食事を要求するといった行動はない。
- 寝たきりで認知症もあるが「ひどい物忘れ」に起因する行動は生じていない。
- 電話の伝言をし忘れることが、月に1回程度あるが、単なる物忘れであるため「ない」を選択。
2.ときどきある
- 火を使わないように伝えているが、自分で調理できると思っており、ガスを付けっぱなしにし、 鍋を焦がすことが月に 2~3 回程度みられる。家族が気をつけているが、目を離したすきに火を使うことがある。
- 食事をした直後に「ご飯を食べていない」と繰り返し訴えることが月2~3回あり、家族が説明している。
3.ある
- 週3回、買い物する際に食べきれないほど多くの卵を購入して冷蔵庫に保管している。家族は余分な卵を捨てている。
- 毎日のように財布などを置いた場所がわからなくなり、家族も一緒に探している。
- 洗面所やトイレの電気を消し忘れることが毎日あり、家族が消している。
4-13 独り言・独り笑い(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 意味もなく独り言や独り笑いをすることはありますか。
- 理由もなく急に笑い出すことはありますか。
- なにも無いところに向かって一人で話していることがありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 家族によると、昔から独り言の癖はあるが、場面や目的を考慮すると不適当な行動ではないと判断。
2.ときどきある
- 誰もいない方向に向かって「あっちへ行け」と言うことが月2~3回位ある。
- ベッド上で急に笑い出すことが月2回程度ある。家族は特に対応はしていない。
3.ある
- 誰もいないところに向かって一人で話していることが週 1 回ほどある。今のところ特別な対応はしていない。
- 毎日、家の中を歩きながら何かを話し続けている。
4-14 自分勝手に行動する(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 深夜に「買物に行くのでついてこい」と言うなど、自分勝手な行動はありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 家族によると、昔から自己中心的な行動があるものの、周囲の状況に大きく矛盾しないため「ない」と判断。
2.ときどきある
- デイサービスでのレクリエーション参加中に急に立ち上がり、外に出ようとする行為が月2~3回ある。
- 食事や入浴を嫌がり違う行動をとることが月に2,3回ある。
3.ある
- 深夜に「買い物に行くからついてこい」と言って、聞かないことが週に2~3回ある。近くに開店している店はないが、靴を履くまで納得しないことが多い。
- 入院中であるが、週に2回はチューブや点滴等の自己抜去がある。
- 離床時にはナースコールを押すよう伝えているが、一人でベッドから離床する行為が毎日のようにある。介護ベッドの足元に離床センサーを置いて対応している。
4-15 話がまとまらない(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 話の内容に一貫性がなく、会話にならないことはありますか。
- 話題が次々と変わり、会話にならないことはありますか。
- 質問に対して無関係な話が続くことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 話の内容に一貫性がなく話題も次々と変わることがあるが、家族の話では「昔からの性格」とのこと。
2.ときどきある
- 月に2~3回、幻覚が見えて興奮すると質問に対して無関係な話が続くことがある。
3.ある
- 献立の話から突然昔の仕事に話題を移すなど、毎日のように会話にならない。機嫌が悪くなると困るので、家族は話の流れに合わせている。
- 質問に対して無関係な答えが返ってくるため、会話にならないことが毎日のようにある。
- 自分の思っていることを話しているが、次々と話が変わるため何を言いたいのか分からないことが日常的にある。
第5群 社会生活への適応
「第 5 群 社会生活への適応」は、薬の内服、金銭の管理、買い物等の社会生活を行う能力や、日
常の意思決定、集団への参加ができない等の社会生活への適応に関して調査を行う項目の群です。
この群では、日常の意思決定が能力の評価軸、集団への不適応が有無の評価軸となっている以外、
他の 4 項目はすべて介助の方法を評価軸とした項目となっています。
評価軸 | ①能力 | ②介助 | ③有無 |
---|---|---|---|
5-1 薬の内服 | ◯ | ||
5-2 金銭の管理 | ◯ | ||
5-3 日常の意思決定 | ◯ | ||
5-4 集団への不適応 | ◯ | ||
5-5 買い物 | ◯ | ||
5-6 簡単な調理 | ◯ |
5-1 薬の内服(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 薬や水の準備は自分でしていますか。
- 自分で薬を取り出して飲めていますか。
- 薬の準備や飲む時に手伝ってもらうことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 自分で薬と水を用意して内服している。服薬管理も自立している。
- 自分で薬、水を用意して内服している。週に1~2 回ほど飲み忘れがあり、家族が声かけをしているが、頻度から「介助されていない」を選択。
- 「麻痺等」があり、それぞれの薬の包み(パッケージ)から薬を取り出したりはできないが、予め薬局で分包されており、「薬の内服」の介助は行われていない。
薬があらかじめ薬局で分包されている場合は含みません。家族が行う場合は、介助の方法で選択します。
2.一部介助
- 介護者が薬と水を手元に用意すれば、自分で内服できる。
- 現在、薬の内服がない(処方されていない)。1ヶ月前まで服薬していた際は、必要量がわからないため、家族が薬を手元に用意していたため「一部介助」が適切と判断。
- 家族は介助を行っていないが、飲み忘れが多く、血圧の管理が不十分な状態。医師から注意を受けており、不適切な状況と判断。適切な介助の方法として、食事摂取の状況から飲む行為はできると思われるが、飲む量の指示を必要とすることから「一部介助」を選択。
3.全介助
- 介護者が薬と水を口まで運ぶ介助をしている。
- 経管栄養であり経口での服薬はない。胃ろうの際、内服薬をチューブから注入する介助がある。
- 家族が薬と水を準備し薬を口に入れる。水を飲む行為は自分で行っている。
5-2 金銭の管理(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 金銭管理は誰が行っていますか。
- 通帳の支出入の把握や管理も自分でしていますか。
- 財布の管理は自分でできていますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 通帳管理や銀行での金銭の出し入れも自立している。
- 通帳や財布の管理はできているが、銀行での出入金は家族に依頼している。
2.一部介助
- 自分で金銭管理はしているが、家族が週に1回財布をチェックして精算している。
- 高次脳機能障害があるが、行き慣れた店であればおやつ程度の買い物ができる。使った金額は忘れてしまうため、生活費は家族が管理している。
- 自分で管理をしたがり、通帳等を親族に渡そうとしない。手元の現金も自分で所持しているものの、訪問販売などで不必要なものを大量に購入するため、不適切な状況と判断。一応の計算能力はあるが、適切な管理のために「一部介助」を選択。
3.全介助
- 家族が全て管理している。本人は小銭程度を持っているが、収支を把握しておらず使う機会もない。
- 入院中であり、家族が全ての金銭管理をしている。収支の把握もしていない。
5-3 日常の意思決定(能力)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 病院での治療方針について自分で決めることができますか。
- 外出時に着る服は自分で選んでいますか。
- 自分で好きなテレビ番組を選んでいますか。
特記事項の例文(記入例)
1.できる(特別な場合でもできる)
- 治療方針やケアプランの内容についても意思決定できる。
- 地域の行事に自分の意思で参加している。
2.特別な場合を除いてできる
- 地域の行事には参加しているが、本人の意思ではなく、家族に連れられて参加している。好きなテレビ番組はかかさず見ていることから「特別な場合を除いてできる」を選択。
- 治療方針やケアプランの内容についての意思決定は家族が支援しているが、外出時の服を選んだり、見たいテレビ番組を選択するなど、日常生活の範囲での意思決定はできる。
3.日常的に困難
- ごくまれに、手渡した服が嫌だというそぶりを見せることがある。日常的には着る服の選択について意思決定をすることはほとんどない。
- 日常での意思決定はほぼないが、介助時に手を払いのける行動があるため「日常的に困難」を選択。
4.できない
- 重度の認知症のため自分で判断できず、全て家族が決定している。
5-4 集団への不適応(有無)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 家族以外の集まりに参加することを強く拒否したり適応できないことはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.ない
- 家族以外の人と一緒にいるのが好きではなく、集団活動に参加しない。この行動は性格や生活習慣に起因するため「ない」を選択。
2.ときどきある
- 月1~2回程度、デイサービスで集団でのゲームに誘われると嫌がって奇声を発することがある。嫌がる場合は少し離れた場所へ連れて行き、テレビを見ている。
3.ある
- 週2回程度、施設でのレクリエーション中に大声で騒いだり、勝手にその場を離れてしまうため個別対応している。
5-5 買い物(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 食料品や消耗品の買い物は自分でしていますか。
- 家族の方と買い物に行く時に自分で商品の選択や支払いをしていますか。
- 家族の方に買い物を依頼することはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- ほぼ毎日、一人で買い物をしている。月に数回、体調が良くない時などは、近所に住む娘に買い物を頼むこともある。より頻回な状況から「介助されていない」を選択。
- 外出での買い物はしていないが、食品等の宅配サービスを利用しており、品物の選択や支払い等ができている。
- 本人が買い物をしているが、品物を持ち帰ることができないため、自宅までの配達サービスを利用している。
2.見守り等
- 一人で買い物に行くが、月に1~2回、会計の際におつりの額でトラブルが発生する。買い物行為そのものは自分で行っていることから、介護者の付き添いがあれば問題はないと判断し「見守り等」を選択。
3.一部介助
- 近くのスーパーへ一人で買い物に行くが、不必要な商品も買ってきてしまうため、家族が週一回返品に行く。そのため「一部介助」を選択する。
- 週2回、訪問介護が買い物を代行している。品物は本人がヘルパーに依頼している。
- 週2回、ヘルパーと買い物に行く。商品選択と支払いは本人が行い、ヘルパーが商品を取り出す。
4.全介助
- 寝たきりの状態で意識障害もあるため、家族が全ての買い物をしている。
- 施設の売店で菓子パンなどを自分で買うことが週に数回あるが、日々の食材等は、施設で一括購入されている。
5-6 簡単な調理(介助)
認定調査員テキスト
聞き取りの方の例
- 毎日の食事の準備を自分でしていますか。
- 自分で炊飯や食品の温めはできますか。
- 即席麺を調理することはありますか。
特記事項の例文(記入例)
1.介助されていない
- 独居のため、調理全般を本人が行っている。
- 経管栄養のため調理の介助は行われていない。流動食は常温で提供。
- 独居で三食とも外食しており、調理は行われていない。
- 炊飯は毎日1回家族が行う。本人は1日3回レンジで温めをしている。即席麺は食べない。より頻回な状況(レンジの温め)から「介助されていない」を選択。
2.見守り等
- 家族が声かけをすることで、毎日の炊飯や食品の温めができている。
3.一部介助
- ご飯はレトルト品を購入。物を運べないので家族が食品をレンジに入れ、本人がレンジ操作をして温めをするが、家族が取り出しを行う。
4.全介助
- 同居家族が全ての調理を行っている。
- 普段、家族が三食を全て用意するが、体調が良いときは自分で炊飯する(月2回程度)より頻回な状態から「全介助」を選択。
- 施設で一括して調理が行われている。
その他 過去14日間にうけた特別な医療について
「過去 14 日間にうけた特別な医療の有無」を評価する項目です。
「特別な医療」とは、医師、または、医師の指示に基づき看護師等によって実施される医療行為に限定されます。サービスを提供する機関の種類は問わず、医師の指示が過去 14 日以内に行われているかどうかも問いません。
家族、介護職種の行う類似の行為は含みませんが、
・「気管切開の処置」における開口部からの喀痰吸引(気管カニューレ内部の喀痰吸引に限る)
・「経管栄養」
については、必要な研修を修了した介護職種が医師の指示の下に行う行為も含まれます。
1 点滴の管理
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 栄養補給を目的とした点滴の針が留置されているが、現在点滴は行われていない。しかし、必要に応じて点滴が開始できる体制にあるため、「ある」を選択する。管理は看護師が行っている。
点滴の針が留置されているが、現在点滴は行われていない場合であっても、必要に応じて点滴が開始できる体制にあれば該当します。
2.ない
- 入院中(14日以内)は継続的に点滴を実施していたが治療は終了した。
2 中心静脈栄養
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 一部、経口摂取が可能であるが、むせが強く、誤嚥性肺炎を起こして以来、中心静脈栄養が行われているため「ある」を選択。
- 現在、栄養分が供給されておらず、経口摂取が一部可能である。しかし、必要に応じて中心静脈栄養が供給できる体制にあるため「ある」を選択。
2.ない
- 過去にCVポート、カテーテル留置されていたが、状態が改善し当面再開の予定がない。
3 透析
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 腎不全のため、2 年前より週3回の血液透析をうけている。介護者なしで通院している。
4 ストーマ(人工肛門)の処置
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 人工肛門が造設されており、消毒、バッグの取り替え等の処置が医師に指示に基づき、訪問看護によって行われているため、「ある」を選択。
2.ない
- 人工肛門が造設されているが、自分で管理しており、14日以内に看護師などによって管理はされていない。
5 酸素療法
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 呼吸器不全があり、自宅(居宅)では行われていないが、半年前より通院において医師による酸素療法が行われているため「ある」を選択。
- 外出時のみ酸素療法が行われており、訪問看護師により週に2回定期的に酸素量のチェック及び流量の指示が行われている。
酸素療法の実施場所は問いません。
2.ない
- 在宅酸素療法を行っており、家族が酸素量の管理を行っている。
6 レスピレーター
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 看護職員の管理の下、鼻マスク陽圧人工呼吸療法(NIPPV)に鼻マスク式補助換気用人工呼吸器を使用しており「ある」を選択。
7 気管切開の処置
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 半年前に気管切開が行われており、カニューレの交換、開口部の消毒、ガーゼ交換、開口部からの喀痰吸引等の処置が医師の指示に基づき、訪問看護によって行われているため、「ある」を選択。
8 疼痛の看護
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- がん末期のペインコントロールに相当する程度で、鎮痛薬の点滴や注射が行われている。
9 経管栄養
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 一部経口摂取が可能であるが、摂取量を見て経鼻的に経管栄養が行われているため「ある」を選択する。栄養剤等の注入は、医師の指示に基づき、訪問看護によって行われている。
- 胃ろうを造設し、栄養剤の注入は全て家族が行っている。チューブの状態や挿入部の管理を医師の指示により訪問看護が週に2回定期的に行っている。
2.ない
- 栄養は中心静脈栄養で摂取し、投薬目的で胃管が留置されている。
栄養の摂取方法として、経管栄養が行われているかどうかを評価する項目のため、投薬目的で胃管が留置されている場合は該当しません。
10 モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度)
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 慢性心不全のため心電図について、24 時間にわたってモニターを体につけた状態で、看護師が継続的に測定している
2.ない
- 訪問看護が行われているが、自宅の血圧計で家族が、24 時間にわたって1時間に1回程度の測定を行っている。
医師の指示に基づき、過去 14 日以内に看護師等によって実施された行為のみで選択します。
11 じょくそうの処置
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- じょくそうは現時点では治ったが、予防の処置が医師の診断・指示に基づいて訪問看護において継続されている
2.ない
- 1ヶ月前まであったが完治したとの診断を受け、現在は医師からのじょくそうの処置に関する指示は出ていない。しかし再発防止のために訪問看護において外用薬を塗布し続けている。
12 カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
1.ある
- 自己導尿が可能であるが、調査の 5 日前に医師の指示に基づき、看護師等によって行われ、また、定期受診の度に処置を受ける見込みであるため「ある」を選択。
2.ない
- 術後のドレナージをうけている。
術後のドレナージや、尿の排泄以外の目的のカテーテルは該当しません。
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
調査対象者について、調査時の様子から下記の判定基準を参考に該当するものを選択します。
全く障害等を有しない場合は、自立を選択します。
生活自立 | ランクJ | 何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する 1. 交通機関等を利用して外出する 2. 隣近所へなら外出する |
準寝たきり | ランクA | 屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない 1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する 2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている |
寝たきり | ランクB | 屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ 1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う 2. 介助により車いすに移乗する |
寝たきり | ランクC | 日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する 1. 自力で寝返りをうつ 2. 自力では寝返りもうてない |
認定調査員テキスト
特記事項の例文(記入例)
自立
- 日常生活自立しており、電車やバス等の公共交通機関の利用も一人でできる。
J1
- 屋外移動時に杖を使用しているが、日常生活はほぼ自立しており、バスを利用しての通院も可能。
J2
- 自宅内の生活はほぼ自立しており、一人で近所の買い物も可能。公共交通機関の利用には家族の付き添いが必要。
A1
- 下肢筋力低下により歩行不安定だが、自宅内の移動は自立している。外出時は歩行器を使用し、介護者の付き添いが必要。日中は離床して過ごしている。
A2
- 自宅内の移動は自立しているが、腰痛により日中も寝たり起きたりの生活。屋外移動時は介護者による車いす介助が必要。
B1
- 脳梗塞の後遺症による左半身の麻痺あり。自宅内、屋外ともに歩行困難なため、車いす介助が必要。移乗は自立している。
B2
- パーキンソン病の進行により、日中をベッド上で過ごしている。自宅内の移動も車いす介助が必要。移乗にも介助を要する。
C1
- 寝たきりの状態のため、車いすに移乗することもない。ベッド柵につかまればなんとか寝返りはできる。食事、排泄、着替えの全てにおいて全介助が必要。
C2
- ベッド上で常時臥床しており、車いすに座ることもできない。自力での寝返りも困難。日常生活の全ての行為で全介助が必要。
認知症高齢者の日常生活自立度
調査対象者について、調査時の様子から下記の判定基準を参考に該当するものを選択します。
全く障害等を有しない場合は、自立を選択します。
ランク | 判 断 基 準 | 見られる症状・行動の例 |
---|---|---|
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。 | |
Ⅱ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。 | |
Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。 | たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等 |
Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 | 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない等 |
Ⅲ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。 | – |
Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等 |
Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | ランクⅢaに同じ |
Ⅳ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 | ランクⅢに同じ |
M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 |
認定調査員テキスト
自立
- 認知機能保たれており、日常生活および社会的に自立している。
Ⅰ
- 判断力の低下により治療方針やケアプランの内容についての意思決定は支援が必要だが、日常生活ほぼ自立している。
Ⅱa
- ヘルパーの訪問が毎日あり一人暮らしをしている。服薬管理は自己にて行えているが、郵便物の管理や金銭管理はまわりの援助を受けないと生活が成り立たない。
Ⅱb
- 一人で留守番ができないため、家族が不在時の日中はデイサービスに通所している。
- 服薬管理ができないため、家族が管理をしている。
Ⅲa
- 意思の疎通の困難さがみられ着替え、食事、排泄が上手にできず介助を要する。
- 衣類を準備しても、順番がわからず妻が傍にいて着る順番を声かけしなければ着替えができない。
Ⅲb
- 意思の疎通の困難さがみられ、夜は特に眠らずに起き出し食事を作ろうとすることもある。
Ⅳ
- コミュニケーションが取れず、家族が予測しながら対応している。
- 意思疎通がほとんどできない。自分自身が歩行不可であることが認識できず歩こうとするので常に見守りをする。
M
- せん妄、妄想、興奮、自傷、他害等の精神症状や行動障害が継続する状態。
参考文献
今回の記事作成にあたり、以下の書籍やテキスト等を参考にしました。
②茨木市 介護保険認定調査 基本調査項目選択及び特記事項文例集
③要介護認定調査必携ハンドブック
当サイトで販売しているテンプレートの購入方法は、以下の記事で解説しています。
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