【実践事例で解説】一人ケアマネの虐待防止委員会の開催方法

ケアマネ仕事術

こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。

ケアマネさん
ケアマネさん

一人ケアマネは、どのように虐待防止委員会を開催すればよいのでしょうか?

令和6年度の介護報酬改定により、「高齢者虐待防止の推進」が求められ、すべての介護サービス事業者に以下の措置が義務づけられました。

  1. 虐待防止のための委員会を開催すること
  2. 虐待防止の指針を整備すること
  3. 定期的に虐待防止研修を実施すること
  4. 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと

これらの取り組みは、事業所の規模に関係なく実施する必要があります。

そのため、一人ケアマネや小規模事業所の皆さんは、虐待防止委員会や研修の実施方法について悩まれているのではないでしょうか。

そこで、今回の記事では、私が一人ケアマネとして実際に行っている虐待防止委員会や研修の取り組みについてお伝えします。

少人数の事業所でも実践可能な方法を紹介し、同じ課題を抱えている皆さんのお役に立てれば幸いです。


高齢者虐待防止のための指針・マニュアルの作成例は、以下の記事で解説しています。

解釈通知(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について)の「虐待の防止」には、高齢者虐待防止法の実効性を高め、利用者の尊厳の保持・人格の尊重が達成されるよう、次の観点から虐待防止に関する措置を講じることとされています。

観点1.虐待の未然防止:高齢者の尊厳保持や高齢者虐待防止等について、従業者に研修等を通じて理解を促す。
2.虐待等の早期発見:虐待やセルフ・ネグレクトの事案を早期に発見し、対応する体制を整える。
3.虐待等への迅速かつ適切な対応:虐待事案発生時には速やかに市町村に通報し、調査等に協力する。
措置1.虐待防止委員会
2.高齢者虐待防止のための指針
3.高齢者虐待防止のための研修
4.専任担当者の設置

解釈通知に記載されている虐待防止委員会の概要は、以下のとおりです。

  1. 目的
    • 虐待の発生防止
    • 虐待の早期発見
    • 虐待発生時の再発防止策の検討
  2. 構成
    • 管理者を含む幅広い職種で構成
    • メンバーの責務と役割分担を明確化
  3. 開催頻度
    • 定期的に開催することが必要
  4. 情報の取り扱い
    • 虐待事案の情報は複雑で機微な場合があるため、個別の状況に応じて慎重に対応する
  5. 運営方法
  6. 検討事項
    1. 虐待防止検討委員会その他の事業所内の組織に関すること
    2. 虐待防止のための指針の整備に関すること
    3. 虐待防止のための職員研修内容に関すること
    4. 従業者が相談・報告できる体制整備に関すること
    5. 従業者が虐待等を把握した場合の市町村への通報方法に関すること
    6. 虐待等発生時の原因分析と再発防止策に関すること
    7. 再発防止策の効果評価に関すること

「虐待の防止のための指針」には、次のような項目を盛り込むこととされています。

  1. 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
  2. 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
  3. 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
  4. 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
  5. 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
  6. 成年後見制度の利用支援に関する事項
  7. 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
  8. 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
  9. その他虐待の防止の推進のために必要な事項

高齢者虐待防止のための研修の概要は、以下のとおりです。

  1. 目的
    • 虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発する
    • 高齢者虐待防止のため指針に基づき、虐待の防止の徹底を行う
  2. 実施頻度
    • 定期的な研修(年1回以上)を実施
    • 新規採用時には必ず実施
  3. 記録
    • 研修の実施内容を記録することが必要

「虐待防止委員会」「高齢者虐待防止のための指針」「高齢者虐待防止のための研修」を適切に実施するため、専任担当者を設置することが義務づけられています。

当該担当者としては、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。

同一事業所内での複数担当の兼務や他の事業所・施設等との担当の兼務については、担当者としての職務に支障がなければ差し支えありません。

令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)に記載されている、虐待防止の措置に関するQ&Aは以下のとおりです。

Q
問 167 高齢者虐待が発生していない場合においても、虐待の発生又はその再発を防止するための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の定期的な実施、担当者を置くこと)がなされていなければ減算の適用となるのか。
A
  • 減算の適用となる。
  • なお、全ての措置の一つでも講じられていなければ減算となることに留意すること。

Q
問 168 運営指導等で行政機関が把握した高齢者虐待防止措置が講じられていない事実が、発見した日の属する月より過去の場合、遡及して当該減算を適用するのか。
A

過去に遡及して当該減算を適用することはできず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」となる。


Q
問 169 高齢者虐待防止措置未実施減算については、虐待の発生又はその再発を防止するための全ての措置(委員会の開催、指針の整備、研修の定期的な実施、担当者を置くこと)がなされていない事実が生じた場合、「速やかに改善計画を都道府県知事に提出した後、事実が生じた月から三月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告することとし、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間について、入居者全員について所定単位数から減算することとする。」こととされているが、施設・事業所から改善計画が提出されない限り、減算の措置を行うことはできないのか。
A

改善計画の提出の有無に関わらず、事実が生じた月の翌月から減算の措置を行って差し支えない。当該減算は、施設・事業所から改善計画が提出され、事実が生じた月から3か月以降に当該計画に基づく改善が認められた月まで継続する。


Q
問 170 居宅療養管理指導や居宅介護支援などの小規模な事業者では、実質的に従業者が1名だけということがあり得る。このような事業所でも虐待防止委員会の開催や研修を定期的にしなければならないのか。
A
  • 虐待はあってはならないことであり、高齢者の尊厳を守るため、関係機関との連携を密にして、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会及び研修を定期的に実施していただきたい。小規模事業所においては他者・他機関によるチェック機能が得られにくい環境にあることが考えられることから、積極的に外部機関等を活用されたい。
  • 例えば、小規模事業所における虐待防止委員会の開催にあたっては、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等他委員会との合同開催、関係機関等の協力を得て開催することが考えられる。
  • 研修の定期的実施にあたっては、虐待防止委員会同様法人内の複数事業所や他委員会との合同開催、都道府県や市町村等が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催等が考えられる。
  • なお、委員会や研修を合同で開催する場合は、参加した各事業所の従事者と実施したことの内容等が記録で確認できるようにしておくことに留意すること。
  • また、小規模事業所等における委員会組織の設置と運営や、指針の策定、研修の企画と運営に関しては、以下の資料の参考例(※)を参考にされたい。
    (※)社会福祉法人東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター「施設・事業所における高齢者虐待防止のための体制整備-令和 3 年度基準省令改正等に伴う体制整備の基本と参考例」令和 3 年度老人保健健康増進等事業、令和 4 年 3 月。

参照:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)

ケアマネさん
ケアマネさん

ヒトケアさんは一人ケアマネ事業所として、どのように虐待防止委員会を開催しますか?

一人ケアマネ事業所の場合、単独で虐待防止委員会や研修を実施するのは困難です。

そこで、私は地域の複数事業所と連携し、共同での虐待防止委員会や研修の開催を計画しました。

また、複数の事業所が参加しやすいように、オンラインツール(Zoom)を活用して実施することにしています。

ヒトケア
ヒトケア

複数事業所との共同開催やオンライン実施が可能であることは、解釈通知やQ&Aに示されています。


続いて、一人ケアマネ事業所である私の虐待防止委員会及び研修実施の向けての取組状況をお伝えします。

令和6年8月28日に「第0回虐待防止委員会」を開催しました。

ケアマネさん
ケアマネさん

なぜ第1回ではなく、“第0回”となっているのですか?

“第0回”としたのは、参加者の皆さんと共に、複数事業所による虐待防止検討委員会のあり方をゼロから考えたいという意図があったからです。
初回の段階で、委員会の基本的な構成や運営方法を整え、今後の活動に向けた基盤を築くことを目的としていました。


参加者の募集はメールとチャット(※MCSのコミュニティ)にて、案内を一斉送信しました。

MCS(メディカルケアステーション)のコミュニティからのメッセージ

申込みはGoogleフォームで行いました。
申込みを送信すると、「第0回虐待防止委員会」のZoomリンクが自動返信される設定になっています。

ケアマネさん
ケアマネさん

自動返信のメールはどのように設定するのですか?

Googleフォームの拡張機能「Email Notifications for Google Forms」を使うと、自動返信のメールを作成することができます。
使い方は、以下のサイトを参考にしてください。


第0回虐待防止委員会には、居宅介護支援事業所(6事業所)と訪問看護事業所(2事業所)から、計9名が参加しました。

当日は、Canvaで作成した資料(※)を画面共有し、虐待防止に関する解釈通知のポイントや虐待防止委員会の概要について説明しました。
※当日使用した資料はこちら。

その後、参加者とともに、共同開催による虐待防止委員会で検討すべき事項について議論しました。

参加者からは、以下のような意見が寄せられました。

  • 「参加事業所で共通の指針を作成したら良いのではないか」
  • 「虐待発見時のフローチャートを作成できないか」

どれも取り組みたい内容でしたが、まずは確実に実行できることから始め、取り組む内容を少しずつ広げていく方針にしました。

そのため、次回(第1回虐待防止委員会)では、以下の事項について検討することにしました。

  1. 各事業所の「虐待防止のための指針」の共有・見直し
  2. 「虐待防止のための研修」の内容

今年度は、以下の日程で虐待防止委員会及び研修を行う予定です。

  • 第1回虐待防止委員会:11/27
  • 虐待防止のための研修:2月
ヒトケア
ヒトケア

上記の委員会、研修の開催後に、この記事も更新します。

今回は、一人ケアマネなどの小規模事業所のための虐待防止委員会・研修の開催方法について紹介しました。

複数の事業所や職種が集まることで、異なる視点や専門知識を持ち寄り、地域全体で包括的な虐待防止の取り組みを進めることが可能になります。

さらに、虐待防止の取り組みを通じて職種間の理解が深まり、日常の多職種連携がより強固なものとなるでしょう。

今回の記事が、皆さんの地域での虐待防止や多職種連携の強化に役立てば幸いです。


当サイトからダウンロードできる各種テンプレートは、以下の記事にて紹介しています。

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