
こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケアです。
はじめての方は、「ヒトケアの仕事術」活用ガイドをご覧ください。

書類はすべて事務所に保管していますが、災害などが起きた時に大丈夫でしょうか?
皆さんは、居宅介護支援事業所のBCP(業務継続計画)の策定と運用はどのように進められていますか?
計画書を作成することは第一歩ですが、BCPの本来の目的は、「非常時においても業務を止めず、利用者の生活を支えること」にあります。
そのためには、どんな状況下であっても、
「利用者の情報にすぐにアクセスできる環境」
を整えておく必要があります。
しかし、災害や感染症で「事務所に行けない状況」になったらどうでしょう?
そこにしか情報がない場合、私たちの業務は完全にストップしてしまいます。
それらのリスクへの対策として、今回は「クラウドストレージ」の活用についてお伝えします。
クラウドを活用することで、以下の3つの大きなメリットが得られます。

この記事では、BCP対策としてなぜクラウドが有効なのか、具体的なサービスと合わせて解説します。

「クラウド」という言葉を初めて知りました…。
という方でも分かるように、イチから解説していきます。
実効性のあるBCPを策定・運用したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
居宅介護支援事業所のBCP作成例は、以下の記事で解説しています。
1. 「紙・USB・パソコン」に共通する、BCP最大の弱点とは?

介護事業所のBCP(業務継続計画)は、「自然災害」と「感染症」の両方に対応しなければなりません。
しかし、私たちが普段当たり前のように行っている「紙」や「パソコン本体」への保存は、「自然災害」や「感染症」の発生時において「致命的な弱点」を抱えています。
1-1. 「紙のファイル」は、緊急時に持ち出せず、自宅からも確認できない

デジタルは怖いから、やっぱり紙が一番安心です。
そう感じている方も多いかもしれません。
しかし、「紙」は災害にも感染症にも弱い媒体です。

紙だけの保存はリスクが高いですね…。
1-2. デスクトップやUSB保存が抱える「物理的依存」の危うさ
では、パソコン本体やUSBメモリへの保存なら安全かというと、そうではありません。
これらは、あくまで「その場所」に行かないと開けないデータです。
「物理的にそこに行かないと仕事ができない環境」に依存している限り、災害からも感染症からも事業を守ることはできないのです。

じゃあ、「紙・USB・パソコン」以外にどんな保存方法があるのですか…。
2. クラウドストレージとは? 物理的な「場所」に依存しない保管の仕組み

そこで、BCP対策の切り札となるのが「クラウドストレージ」です。
「クラウド」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、仕組みはとてもシンプルです。
クラウドストレージとは、簡単に言えば「インターネット上にある、頑丈な保管庫」のことです。
データを手元のパソコンの中(ローカル)に保存するのではなく、GoogleやMicrosoftなどの大企業が管理するセキュリティの強固なサーバーに預ける仕組みです。

イメージとしては「銀行」と同じだと考えてください。

クラウドを活用することで、データは「場所」の制約から解放されます。
事務所のパソコンが水没しても、感染症で事務所に入れなくても、インターネット上の保管庫にあるデータは無事です。
新しいパソコンや手持ちのスマートフォンを使って、自宅や避難所からすぐにデータを取り出し、業務を再開することができるのです。
3. BCPにおけるクラウドストレージ導入の3つのメリット

では、このクラウドストレージを導入することで、具体的にどのようなBCP対策が可能になるのでしょうか。

実務に直結する3つの大きなメリットを解説します。
3-1. 【アクセス】事務所に入れなくても、利用者情報やケアプランが手元にある
クラウドストレージの最大のメリットは「場所の制約を受けずに、必要な情報を取り出せること」ことです。
災害や感染症の発生時、事務所が立ち入り禁止になったり、自宅待機を余儀なくされたりすることは十分に考えられます。
もし、紙や事務所のパソコンにしか情報がない場合、「利用者の既往歴がわからない」「ケアプランの内容が確認できない」という状態になり、業務継続が困難になります。
しかしクラウドにデータがあれば、避難所や自宅から、手持ちのスマートフォンやタブレットで、「アセスメントシート」や「居宅サービス計画書」をすぐに閲覧できます。
3-2. 【バックアップ】「保存」ボタンを押すだけで、機器破損に備える
USBメモリへのバックアップで一番怖いのは「やり忘れ」などのヒューマンエラーです。

2ヶ月前にUSBの保存を更新してからそのままでした…。
という状態でパソコンが壊れたら、直近2ヶ月分の記録が消えてしまいます。
クラウドストレージを導入すると、普段通りパソコンでファイルを上書き保存した瞬間に、自動的にクラウド上にも最新版が同期されます。

人間が意識しなくても、機械が勝手に最新の状態を守ってくれます。
この「自動化」こそが、災害時の機器破損リスクへの最も確実な備えとなります。
3-3. 【共有】災害・感染症の緊急時に、チームで業務を引き継げる
クラウドストレージの持つ「データの共有機能」は、「災害」と「感染症」のどちらにも有効です。
- 災害時のチーム連携
スタッフがバラバラの場所に避難していても、クラウド上の「対応状況リスト」を全員で同時に開き、リアルタイムで情報を更新できます。
「誰の対応が終わっているか」が一目でわかり、混乱を防げます。 - 感染症時の業務引き継ぎ
もし担当ケアマネが感染症により出勤が困難になった場合でも、共有フォルダにデータがあれば、管理者や他のスタッフがすぐに情報を引き継げます。
「担当者しかわからない」という属人化を防ぎ、利用者支援を継続できます。
4. おすすめクラウドストレージ3選


クラウドストレージのメリットはわかりましたが、どんなサービスがあるのかわかりません。

代表的な3つのクラウドストレージを紹介します。

4-1. 【Googleドライブ】GmailやAndroid利用者におすすめ

「スマホはAndroidを使っています」
「仕事用のメールアドレスはGmailです」
という方には、Googleドライブが一番のおすすめです。
- 新たな登録作業が不要
すでに持っている「Googleアカウント(Gmailのアドレス)」がそのまま使えます。新しいIDやパスワードを管理する手間が増えません。 - 無料で使える容量が大きい
無料で「15GB(ギガバイト)」まで使えます。WordやExcelの書類であれば、数万ファイル保存しても埋まらないほどの大容量です。 - 「ファイルが見つからない」を防ぐ検索機能
Googleの強みは「検索」です。
「あの利用者の計画書、どこに入れたっけ…?」と迷っても、検索窓に名前の一部を入れるだけで、瞬時に目的のファイルを見つけ出してくれます。
4-2. 【OneDrive】Windowsパソコンとの相性が抜群

「事務所のパソコンはWindowsを使っている」
「業務でWordやExcelを毎日使う」
という方には、マイクロソフトが提供するOneDrive(ワンドライブ)が最適です。
- Windowsに「標準装備」されている
Windows 10や11のパソコンなら、最初から入っています。新たにアプリをインストールしたり、難しい設定をしたりする必要がほとんどありません。 - いつもの操作で自動保存
使い方は、普段使っているフォルダと同じです。WordやExcelで作成した資料をOneDriveフォルダに保存するだけで、自動的にクラウドへバックアップされます。 - 「新しいことを覚える」負担がゼロ
見た目も操作感もWindowsそのものなので、「新しいツールを覚えるのは億劫だ」という方でも、抵抗感なく導入できるのが強みです。
4-3. 【Dropbox】シンプルで直感的な操作が魅力

「余計な機能はいらない」
「とにかく直感的に使いたい」
という方には、クラウドストレージの老舗であるDropbox(ドロップボックス)がおすすめです。
- 「箱に入れるだけ」のシンプルさ
インストールすると、パソコンの中に「Dropbox」という名前のフォルダができます。あとは、保存したいファイルをその箱にドラッグ&ドロップで入れるだけ。
「ここに入れたものはクラウドにもある」というルールが明確で、難しいことを考えずに使えます。 - 「間違って消した!」を救う復元機能
Dropboxは、誤ってファイルを削除したり、上書き保存してしまったりしても、過去の状態に戻せる機能が充実しています(無料版でも30日以内の復元が可能)。
「大事な計画書をうっかり消してしまった!」というミスが多い場合の保険として、非常に頼りになります。
5. 【重要】クラウドを無駄にしないための「2つの備え」

ここまでクラウドストレージの重要性をお伝えしてきましたが、導入して終わりではありません。
いざという時に、
「電池がなくて見られない…」
「ファイルがどこにあるか分からない…」
と慌てないために、あわせて準備しておくべき「ハード(電源)」と「ソフト(整理)」の備えについてお伝えします。
5-1. 電源がないとただの箱。モバイルバッテリーと車載インバーター
クラウド上のデータがいかに安全でも、それを見るためのスマートフォンやパソコンの充電が切れてしまえば意味がありません。
特に大規模災害による停電時には、電源の確保が業務継続に直結します。
避難所での利用を想定し、スマホを2〜3回フル充電できる大容量のものを用意しましょう。連絡手段の確保は命綱です。
容量は「10,000mAh以上」が安心ライン。ポートが2つ以上あると、スマホとタブレットを同時に充電できて便利です。
⚠️ 重要:車内放置は厳禁
リチウムイオン電池は熱に弱いため、夏場の車内に置きっぱなしにするのは大変危険です。必ず持ち歩きましょう。
車での移動が多いケアマネにとって、「車」は心強い味方です。車載インバーターをシガーソケットに差し込むだけで、家庭用コンセントが使えるようになり、車がまるで「走る発電所」のように活躍します。外出先でもパソコンの充電ができるため、業務の効率アップにもつながります。
車の電気(DC12V)を家庭用コンセント(AC100V)に変換するアダプターです。これをシガーソケットに挿すと、車内で普通のコンセントが使えるようになります。
💡 シガーソケットとは?
運転席やダッシュボード付近にある丸い電源口のことです。
5-2. 整理されていないと探せない。フォルダ管理のルール化
もう一つの大きな落とし穴が「フォルダの整理整頓」です。
いざ災害時にクラウドを開いたものの、
「ファイル名がぐちゃぐちゃで、どれが最新の計画書か分からない…」
「緊急連絡先を探すのに10分もかかってしまった…」
という状態では、迅速な対応など不可能です。
そのため、日頃から「誰が見ても分かるルール」でフォルダを整理しておく必要があります。
フォルダ名の先頭に「01」「02」と番号を振るだけで、PCの仕様に関わらず常に決まった順序で表示されます。探す時間が劇的に短縮されます。
- 01_利用者情報
- 02_実績管理
- 03_マニュアル
- 99_その他
各利用者のフォルダの中に、さらに「書類の種類ごとのフォルダ」を作成します。きちんと分類することで、必要な書類がすぐに見つかります。
- a_アセスメント
- c_ケアプラン
- h_保険証
- m_モニタリング
- など
6. まとめ:クラウド活用が、利用者と事業所を守る「最強のBCP対策」となる

今回は、居宅介護支援事業所におけるBCP(業務継続計画)の要となる「クラウドストレージ活用術」について解説しました。
BCP対策というと、分厚い計画書を作ったり、高価なシステムを導入したりと、何かと大掛かりなことをしなければならないと考えがちです。
しかし、本質はもっとシンプルです。
「いつもの保存場所を、パソコン(ローカル)からクラウドに変えること」
これにより、災害で事務所が倒壊したり、感染症で誰も出勤できなくなっても、利用者の大切な情報を守り抜くことができます。

パソコンなどの『モノ』は買い直せますが、積み重ねた『記録(データ)』は二度と戻ってきません。
まずは無料のGoogleドライブやOneDriveに「BCP用フォルダ」を一つ作るところから始めてみてください。
その一歩が、いざという時に利用者と事業所を守る大きな盾となります。

私も事業所のBCP対策にクラウドストレージを活用していきます!









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