居宅介護支援事業所BCP策定における利用者支援の位置づけを考える

BCP利用者支援 アイキャッチ BCP

こんにちは。居宅介護支援事業所で一人ケアマネをしているヒトケア(@hito_care)です。

ケアマネさん
ケアマネさん

居宅介護支援事業所のBCPに利用者支援をどう組み込むか悩んでいます。

BCP(業務継続計画)は、感染症や自然災害の際にも重要な事業を中断させない、または中断した場合にも短期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示す計画です。
居宅介護支援事業所を含む全ての介護施設・事業所は、令和6年3月31日までのBCP策定が求められています。

しかし、厚生労働省をはじめとする多くのガイドラインやひな形は、直接的な介護を行う施設やサービス事業所を前提としています。
そのため、ケアマネジメントが業務の中心となる居宅介護支援事業所のBCPを、どのように策定すればよいか悩まれているケアマネさんは多いのではないでしょうか?

そこで今回の記事では、居宅介護支援事業所の業務内容を踏まえたうえで、BCPにおける利用者支援の位置づけについて解説します。
居宅介護支援事業所のBCPを策定中のケアマネさんは、参考にしていただけると幸いです。

以下の記事から居宅介護支援事業所BCPひな形のダウンロードが可能です。

BCP(業務継続計画)とは

BCP(業務継続計画)は、”Business Continuity Plan” の略称であり、企業や組織が直面する様々なリスクや危機に備えて事前に策定する計画のことを指します。
その主な目的は自然災害や感染症の拡大などの予期しない事態が発生した際でも、組織の主要な業務を継続し、また中断した場合にも迅速に復旧させることです。

介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないものであるため、感染症や自然災害の発生時においても継続的なサービスの提供が求められています。
そのために介護施設、事業所においてもBCP策定が必要となるのです。

介護施設と居宅介護支援事業所のBCPの違い

ケアマネさん
ケアマネさん

介護施設と居宅介護支援事業所では、BCP策定において何が違うのでしょうか?

介護施設と居宅介護支援事業所では、それぞれの事業が担う業務内容や利用者との関わり方によってBCPの内容も変わります。

介護施設のBCP

介護施設は居住者に対して直接的な介護サービスを提供しています。
そのため、感染症の拡大や自然災害の発生時には、施設内の利用者の生命や安全を守るための迅速な対応が求められます。
このような状況下でのサービス提供の継続や、必要な場合の適切な避難手順などがBCPの中心的な役割となります。

居宅介護支援事業所のBCP

居宅介護支援事業所は、利用者が自宅での生活を継続するため、利用者や家族への相談援助や多職種との連携体制の構築、ケアプランの作成、サービス調整等を業務内容としています。
BCPの目的は、不測の事態が発生しても重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させる業務の継続を確保することです。

そのため、居宅介護支援事業所のBCP策定においては、

  • 職員の安全確保
  • 非常時における利用、家族、多職種との連携体制の構築
  • 事業所の建物・設備の安全対策
  • 事業所のライフライン(電気、水道、ガスなど)の確保

が中心となります。

これらの業務継続の取り組みが適切に行われることで、緊急時においても居宅介護支援事業所は利用者に対する支援を継続することができます。

居宅介護支援事業所のBCPにおける利用者支援の位置づけ

ケアマネさん
ケアマネさん

居宅介護支援事業所のBCPには利用者の感染症や災害への支援は必要ないですか?

BCP(業務継続計画)は、非常時においてどのようにして業務を継続・復旧するかという観点からの計画立案にあります。
居宅介護支援事業所の場合は、利用者への支援が事業の主な内容となるため、BCPの内容は利用者支援をどのように継続するかに焦点を当てるべきです。
そのため、利用者自身が感染症に罹患した場合や被災時の具体的な支援内容や安全確保に関する手段については、BCPの範疇を超える部分があると考えられます。

一方で、居宅介護支援事業所としての役割を考慮すると、利用者の生命や生活を守るための取り組みは非常に重要です。
そこで、利用者への具体的な支援内容や方法については、BCPの本文とは別に「(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」として定めました。

BCP本文と利用者支援を別紙で分けることの理由は以下の通りです。

  • 明確な区分けによる効率的な管理
    BCPが事業の継続と復旧を中心に置いた計画であるのに対し、利用者支援は具体的な対応策を中心とするため、それぞれの目的や内容が異なります。この2つを明確に区分けすることで、それぞれの内容を効率的に管理・運用できます。
  • 利用者支援の具体性の確保
    利用者支援に関する具体的な内容や方法は、非常時の対応策として詳細に記述する必要があります。
    別紙として独立させることで、より具体的で詳細な内容を整理・明記できます。
  • 緊急時の迅速なアクセス
    非常時には迅速な判断と行動が求められます。BCPと利用者支援を別紙で分けることで、それぞれの計画に素早くアクセスし、適切な対応を取ることができます。
  • BCP改訂の効率化
    利用者の状況やニーズ、外部環境の変化に応じて、利用者支援の内容や方法を頻繁に更新することが予想されます。
    別紙として独立させることで、BCPの改訂が容易となります。
  • 明確な役割分担と責任の所在
    BCPと利用者支援はそれぞれ異なる部署や担当者が関与する場合が考えられます。
    別紙として区分けすることで、各計画の責任者や関与する部署・担当者の役割分担と責任の所在を明確にすることができます。

(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」の記載例は以下のとおりです。

(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について

(1)安否確認
・利用者の安否を迅速に確認する。
・チャットツールや電話を活用して多職種と連携を図りながら、利用者の安否確認を行う。
・「災害時利用者安否確認シート」にて利用者の安否確認を記録する。
(2)医療機関への搬送
・利用者の状況に応じて医療機関への搬送をサポートする。
(3)サービスの継続
・利用者の生命、身体の安全、健康を守るために必要不可欠と判断されたサービスに関しては、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。
・通所系、宿泊系サービスに関しては利用を中止する場合があるが、訪問系サービスに関しては、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。
(3)日常生活のサポート
・多職種で連携しながら生活必需品の確保や食料・水の供給サポートを行う。
(4)情報提供
・利用者やその家族に対して、現状の情報や安全対策、必要な行動についての情報を提供する。
(5)その他
・利用者の状況に応じて、その他の必要なサポートを提供する。

(別紙)感染症及び自然災害発生時における利用者支援について

まとめ:効果的なBCPを策定して非常時にも対応できる事業所を目指そう

今回は居宅介護支援事業所のBCP策定における利用者支援の位置づけについて解説しました。
BCPとは、不測の事態が発生しても重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための計画です。

居宅介護支援事業所におけるBCP策定では、

  • 職員の安全確保
  • 非常時における利用、家族、多職種との連携体制の構築
  • 事業所の建物・設備の安全対策
  • 事業所のライフライン(電気、水道、ガスなど)の確保

など、事業の継続を実現するための方針や手順を明確に定めることが求められます。

しかし、居宅介護支援事業所の役割として利用者の生活を支える視点も重要であり、そのための具体的な支援内容を考える必要もあります。
この観点から、本文のBCPとは別に「感染症及び自然災害発生時における利用者支援について」の別紙を定めることで、利用者への具体的な支援内容を明確にしました。

今回の記事を参考に、居宅介護支援事業所の効果的なBCPを策定して非常時にも対応できる事業所を目指していただけると幸いです。

ケアマネさん
ケアマネさん

私もBCP本文と利用者支援を整理したBCPを策定します!

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